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【クラブ創立30周年】好評発売中・チームバストミカ誕生秘話をグッズ担当・西山慶一に聞く!

 

発売以来、界隈で大いに好評を博している大分トリニータ・チームバストミカ。クラブ創立30周年記念グッズのひとつとして企画され、シーズンパス購入者の先行予約販売を経て10月20日のJ2第35節・水戸戦から、ホームスタジアム&オンラインショップで一般販売がスタートすると、あっという間にオンラインショップは在庫切れに。クラブは現在、再販に向けて準備を進めている。

 

現物そのもの。ディテールまで精巧に再現

現物を手に取るとわかるように、ディテールまで非常に精緻でハイクオリティーな出来栄えだ。トミカが日野自動車に確認しながら正確性を期して車両監修した日野セレガをベースに、車体デザインはシール方式ではなく本体に刻印。エンブレムやロゴの位置、車両ナンバーなども本物のチームバスに忠実で、これだけのミニチュアながら「日豊観光」の社名も、文字が潰れることなく美しく描かれている。
 
昨夏、クラブ創立30周年記念グッズの企画にあたり「みんなが喜ぶものを」と発案。当時グッズ担当の部署にいた松本理穂(現・広報担当)が、先にチームバストミカを発売していた松本山雅FCのスタッフに繋げてもらうかたちでスタートした。その後は現在のグッズ担当・西山慶一がそれを引き継ぐ。
 
今年2月にトミカ社と打ち合わせ、企画審査は春。いろいろな企業や団体から人気のオリジナルトミカは、審査待ちの期間も長かった。精巧な試作品が届いた日には「あのまんま小さくなっていて感動した!」と、他部署の社員たちもハイテンションに。さすが1970年の第1号車以来、数々のラインナップを世に送り出してきたトミカ社クオリティーだった。

 

進撃コラボシャツに続く大挑戦

だが、ようやく完成した矢先に、大型台風が襲来。当初は9月だった発売予定が大幅にずれ込んだ。
 
トミカは最低ロット数も大きく、グッズ開発に予算を潤沢に注ぎ込めない大分FCとしてはリスクを負うかたちにもなる。「売れなかったら在庫を抱えて海に飛び込まなければ…!」と膝をガクガクさせつつ、それでも他クラブのチームバストミカが即完売になっているというデータを心の支えに、社内プレゼンでOKを勝ち取った肝入りのグッズだ。ファンやサポーターからの要望の声も、西山の原動力になった。
 
「夏の『進撃の巨人』販売用コラボシャツは大成功だったんですけど、あれを遥かに上回る製作数になるので、責任重大です。僕がグッズ担当になってから手がけたリミテッドユニフォームにしても、着用した試合でなかなか勝てなかったので気が気じゃなかった。今季、藤枝戦でようやく勝利できてほっとしています」と胸を撫で下ろす。
 
チームバストミカはチーム内でも好評で、片野坂知宏監督や選手たちも購入しているという。売行き好調の様子に西山も「負けて悔しかったときは是非、こちらのバスのほうを囲んでもらって…」と冗談がこぼれるほどになった。
 

トリニータ愛のルーツはタートルズだった

実は西山は、トリニータのスクール生・タートルズだった過去を持つ。小学1年生のとき、トリニティ時代からファンだった母の勧めでボールを蹴りはじめた。週に2回、スクールに通い、土曜日にはその帰りにトリニータのホームゲームを見に“ハシゴ”する、生粋のトリニータっ子。5年生のときに川崎F戦のエスコートキッズを務め、川島永嗣(現・ジュビロ磐田)と手を繋いで入場したこともある。スマホの写真フォルダにはいまも、当時は現役MFだった西山哲平GMや西川周作(現・浦和レッズ)との2ショット写真が宝物として収められている。指導してくれたスクールコーチの中には、現在は営業部長を務める河野貴則や広報担当の川端正倫がいた。
 
中学時代は部活でサッカーを続けたが、高校ではアーチェリー部に所属し、インターハイ出場など健闘。大学でもアーチェリー界で活躍し、卒業後に一度は福岡市内の企業に就職。その間もずっとサポーターとしてトリニータの試合観戦に通っていた。大分に戻りたいと考えていた2022年、大分FCが人材を募集していることを知り、これからはクラブの一員としてトリニータを支えたいと面接にチャレンジ。9月に入社を果たした。
 
いざ入社すると、運営業務のためホームゲームはじっくり観戦することが出来ない。仕事の隙を見てコンコースからピッチを見に行くのが精一杯だ。アウェイゲームの日は、スケジュールの許すかぎり、チケットを買って応援に出向く。
 
「社員としてのスタンスとサポーターとしての感情にギャップを感じることも正直、ありますけど、クラブの一員として、共に熱く闘えることを誇りに思っています」
 
そう言いつつ、2万8000人を集めた8月の「亀祭」では、大分トリニータとそれを取り巻く環境のポテンシャルを実感した。過去には度重なる経営難で緊縮財政を強いられた時代もあったが、現在は、西山たちクラブの最前線に立つスタッフたちが、新たなチャレンジへと踏み出しつつある。
 
「つねに手元に置いてもらって、このバスを通じてもトリニータのことを知ってもらえれば。ジオラマを作る人なんかもいたら、うれしいですね」
 
手がけたチームバストミカを手に笑顔を見せる。グッズもそれを作ったスタッフも、クラブ創立30周年の賜物だ。

西山のスマホに残る“W西山”の貴重なショット
西川周作との2ショットも
タートルズ時代の西山(前列右から2番目)。バタ広報の若かりしコーチ時代!
懐かしいコーチ陣に混じって後列中央が現・河野営業部長