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本日の名場面

阿部真央さんインタビュー「わたしは自分の人生の中で生まれてきたものしか歌えない」

 

8月17日、明治安田J1第23節H鹿島アントラーズ戦への来場が決定している、大分県出身シンガーソングライターの阿部真央さん。

昨季は当初、J2第39節の松本山雅戦で予定していたスペシャルライブが声帯結節による急な手術で中止になり、それでもトークゲストとして出演した後で、あらためて第41節のツエーゲン金沢戦でライブを行い、力強い歌声でJ1昇格を後押ししてくれた勝利の女神だ。

今年デビュー10周年を迎えた彼女に、7月29日、ご自身の仕事や生き方、そして大分トリニータへの思いを聞いた。

 

ストレートな歌詞がアスリートの心に響く

 
——今季はまた鹿島戦にご来場くださるということで、ありがとうございます。阿部さんにとってトリニータとは。
 
昔からずっと知っていたんだけど、ごめんなさい、わたしはスポーツに本当に疎くて。逆にデビューしてから、トリニータさんや野球のチームさんからオファーをいただいたりして、近年とてもよくしていただいてます。そんな感じなので、トリニータは単純に「大分のすごいサッカーチーム」という感じでいました。
 
——大分出身の清武弘嗣選手も、阿部さんのファンであることを公言していますね。
 
はい、キヨさんは本当によくしてくれています。最初は、トリニータからセレッソに移籍してすぐの頃、わたしの大阪でのライブに来てくださって。そこからお友達になって、日本代表戦などに招待してもらったりしてるんですよ。海外から帰国してからもライブを見にきてくださって、年齢も同じでうれしいなーと。
 
——阿部さんの歌は、多くのアスリートにも愛されています。ご自身で、何故だと思われますか。
 
思うに、わたし自身がすごくストレートな人間なので、日常生活よりも歌詞の中での表現とか、描きたい世界観が、ストレートなメッセージが多いんです。で、アスリートもストレートな方が多いと思うんですよ。純粋で情熱的だからこそスポーツに打ち込んで、極めてこられた方が多いという印象です。だから多分、わたしの書くストレートな歌詞が、いいなと思ってもらえるポイントなのかなと。過去に会ったアスリートのみなさんに関しては、特にそう感じます。
 
——質量のある言葉ですよね。元気の出る歌を聴くと、自然に泣けてきます。
 
ありがとうございます。
 

大事なものを守るためのメソッドを見つけた10年間

 
——阿部さんご自身が、年齢や経験を重ねながら、変わっていったものはありますか。
 
そうですねえ…。ふと思うのはふたつあって、ひとつは、感謝する気持ちが圧倒的に芽生えたことが大きい変化ですね。大分を離れて上京したのが18歳のときで、多感な時期というのもありましたけど、誰かに心から感謝をするとかいった部分は、いまに比べるとまだまだ未熟だったなと思うんです。
 
そこから社会に出て、5年、10年と仕事をする中で、誰一人として一人では生きていないということを痛感した。仕事をしていても支えてくれる人たちがいますし、日常生活を健やかに過ごすためにも家族や恋人や友人といった大事な人たちに支えられていたり。
 
わたしは4年前に結婚して子供も産んだんですけど、そのあと離婚もして。大きな使命というか、自分が子供を持つ立場になったときに、たとえば親への感謝だとか、子供を育ててきているすべての人へのリスペクトだとかをもっと感じるようになったんです。子供から学ばせてもらうこともあるし、やっぱり自分はいろんな人に支えられ続けているんだなということを、ずっと痛感してきました。自分一人で生きていないんだという認識が芽生えたのは、ひとつ大きな変化だったと思います。
 
もうひとつは、もともと自分が持っていた、歌を書きはじめたときの情熱とか衝動みたいなものに対して、大人になるにつれて「何のために」ともう一度考えたときですかね。
 
自分は最初はこれが好きでシンプルにはじめたけど、たとえば数字だとか地位だとか名声だとか認知度だとかいうものも、わたしの仕事では問われてくる。そういうものの中で揉まれるうちに、見えなくなっちゃったりすることもあるじゃないですか。最初に自分がシンプルな喜びからやりはじめたことが、仕事になったがゆえに、何のためにやっていたのかと、その目的を見失うというか。
 
そういうふうに見失いかけたときに、これはちょっと逆説的な言い方なんですけど、自分の中の大事な思いを変えないようにするために、自分が変わっていかなくてはならないと思ったんです。簡単に言うと「殻をつくる」。それは閉鎖するという意味じゃなくて、生きていく中で「あ、こういうライフスタイルって自分には合っていないんだな」ということが、長年経験を積まないとわからないことってあったりしますよね。
 
それはフィジカル的なケアであったり、精神的なケアであったり。何年か前まで自分はすごくさみしがり屋だと思っていたけど、実は人との距離をある程度置いていないと逆に人間関係に振り回されてしまうんだなと、自分のことを客観視できるようになったり。そうやって自分がもともと持っていて大事にしたいものを守るために、そのためのメソッドを見つけていけたんです。
 
自分が変えたくないなと思うものを変えずに守るために、生き方とか立ち振る舞いとか人との距離感とかを変えていかなくてはならない。それに気づいた10年でした。
 
——ひとりの女性として体当たりで生きている中で生まれてくる曲だから、聴く人の心を打つんでしょうね。
 
そうですね、たとえば職業作家さんだったら、曲のクオリティーが良ければそれでよしという部分もあると思うんですけど、わたしはやっぱりシンガーソングライターなので。自分の人生の中で生まれてきたものしか歌えない。歌うことで、わたしのこういうこと、生きざまそのものを好いてもらえていなくては、やっぱり10年はやってこれなかったかなと思いますね。いや、支持されることとわたしが正しく生きていることは全然違う話なので、おこがましいんですけど(笑)。
 

美しい気持ちが応援になって試合を作る

 
——ではここで、トリニータにエールをお願いします。
 
去年2回、試合を観戦して、「ああ、こんなたくさんの人がトリニータを応援しているんだな」と、まずはそこに感動しました。サポーターの人って、すごいじゃないですか熱量が。応援にかかるお金も全部自費だし。それは対戦相手のサポーターに対しても思うことなんですけど。
 
どうしてそこまでみんなが熱をもってあんなに声を張り上げるかというと、やっぱり選手のみなさんの姿に勇気をもらったり感動したりするから、応援することをやめられないんだなって感じるんですよ。あの場にいるトリニータのサポーターみんながトリニータに感謝していて、お返しをしたいという、そういうすごく美しい気持ちが応援になって、ああいう試合を作るんですね。
 
感動を生み出す人というのは本当にすごいなと、わたしはいつも思っているんです。スポーツは勝った負けたの世界で、結果を出さなくてはいけないのはわたしも重々わかっているんですけど、それ以前に、人をそこまで熱くさせたり感動させたりできる仕事をしているということを、本当に素敵だと思います。わたしもその熱に当てられて感動した一人なので、これからも感動させてもらえるように応援しますし、たくさんの人に感動を与え続けてほしいなと思います。
 
 

 
 
8月21日にはNHKドラマ10『これは経費で落ちません』主題歌でもあるニューシングル「どうしますか、あなたなら」が発売。7月27日からは先行配信もスタートしている。日常の中の「あるある」が次々に登場するミュージック・ビデオのワンシーンに登場するトリニータカラーは偶然? 是非ともチェックして、鹿島戦で披露されたら一緒に歌って盛り上がりましょう!
 

阿部真央さんプロフィール

 
1990年1月24日、大分県に生まれる。2009年1月21日、アルバム『ふりぃ』でデビュー。等身大でリアルのみを綴った歌詞と、バラエティに富んだ楽曲毎に変化する、表現力豊かなヴォーカライゼーションは高く評価され、同世代の女性を中心に幅広い層からの支持を得るシンガーソングライター。
今年はデビュー10周年を迎え、日本武道館および神戸ワールド記念ホールにて「らいぶ No.8~10th Anniversary Special」を開催。また1月23日にはベストアルバム『阿部真央ベスト』を発売し、オリコンウィークリーチャート初登場9位を記録した。
 
8月21日(水)発売ニューシングル「どうしますか、あなたなら」
NHKドラマ10「これは経費で落ちません」主題歌
<収録曲>
M1. どうしますか、あなたなら
M2. この愛は救われない
PCCA.70545/¥1,000+税
7月27日より先行配信スタート!
MV:https://youtu.be/BG1S-FKDA7k
 
Official HP:http://abemao.com/
 

 
(インタビュー・構成・執筆:ひぐらしひなつ)
 

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