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【ピッチサイド小話】宮阪政樹、京都戦の試合展開を予言していた!?

 

難しい試合を耐えしのぐチームに88分に先制点が生まれ、アディショナルタイムに突入した頃、試合前々日に宮阪政樹が言ったことを思い出しながら、鳥肌が立った。

試合後にミックスゾーンで清本拓己のコメントを取っていたとき、通りかかった宮阪も「言ったとおりになったでしょ?」と得意気な表情。「本当にすごい!」と言うと「書いてください」と笑った。

丸谷拓也がコンディション不良でメンバーを外れることが決定的となった日。ボランチの組み合わせがどうなるのか、また、ここまでボランチを固定して戦ってきたツケが回ってくるのではないかということが気がかりでもあった。

練習後に宮阪に話を聞いたとき、そのコメントの中で宮阪はこう言った。

「無失点で耐えながら試合を進めていけば得点チャンスが得られるという感覚を、多分みんなも持っていると思う。90分のうち89分に得点できて1-0で勝利するのでもいい」

非常に良いコメントだと思ったが、これは記事には入れなかった。

なぜなら、宮阪のこのコメントから「今節、大分は引いて守ってカウンターを狙うのだ」と読み取れてしまう危険性を考慮したからだ。試合レポートにも書いたとおり、WBのポジショニングをカギにして良い守備から良い攻撃に転じるというのが、この京都戦での狙いだった。いつもより低めに取るであろうWBのポジショニングは、見方によっては「引いて守る」というふうにも受け取れる。

そこで、相手チームの関係者が目にする可能性もあるプレビュー記事では、後藤優介の「ワンプレーごとの精度が低いと自分の長所も出せなくなるので、こだわっていきたい」というコメントと“好機必殺”というタイトルにカウンターチャンスへの狙いを匂わせはしたが、守備方法を予想するヒントになる部分は、記事にしなかった。

本当のところはもっと攻撃的にサイドが出ていくプランだったようなのだが、実際に試合がはじまってみると、前半は特に雨の影響で前線にボールが収まらず、WBが出ていくまでの形を作れなかったので、結果的に「引いて守っている」ような形になってしまった。京都の関係者からも「大分はもっと前から奪いに来ると思っていた。ここまで構えてくるとは驚いた」と言われ、やはり書かなくて良かったと思った。

それが試合にどれほどの影響を及ぼしたかはわからないが、試合前の不用意な情報漏洩によってチームの勝利の可能性を低めることだけはしてはならない。

本当なら、試合前に宮阪のコメントを掲載していれば、あの展開を見ていた読者の方々はリアルタイムで鳥肌を立てることが出来たに違いない。そう思うと少し残念でもあるが、こちらなりにそういう理由があったので、あらためて試合を終えた今、このことを公開したいと思う。

果たしてこれは予言だったのか、戦術遂行をリードするゲームメーカーとしての宮阪がプランどおりの展開に持ち込んだだけなのか。予期せぬ雨の影響もありながら、神がかったものを感じたエピソードだった。