粘り強く対応するも攻撃に転じきれず、一発のゴラッソに沈む

首位を独走する好調・千葉に対し、準備を施して臨んだが表現できなかった。粘り強く集中した守備は一発のゴラッソに破られたのみだったが、攻撃に転じることは出来ず、まだまだ力不足だと突きつけられたようだった。
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大分戦に向け強度の高いボランチを配置した千葉
今節の千葉は左SBに前貴之、ボランチに田口泰士とエドゥアルドを先発させた。小林慶行監督によると、有馬幸太郎と伊佐耕平への長いボールを警戒し、田口とエドゥアルドにセカンドボールを拾わせる意図だったようだ。一方の大分は𠮷田真那斗が先発に返り咲いたほか、伊佐はベンチスタートで屋敷優成を先発させる。
これまでの試合でも、サイドアタッカーの推進力や中央での流動的なパスワークにラインが押し下げられることが多く、最終的に決壊して失点する試合も続いた。サイド攻撃をストロングとする千葉との対戦を前にその克服は急務だったが、試合の入りに見せた守備は集中力を保ってスライドを怠らず、布陣をコンパクトに保てており、突破されても中央でペレイラと濵田太郎を中心に跳ね返すことが出来ていた。
ただ、榊原彗悟がプレスに出たスペースを使われる場面もあり、前貴之に複数のシュートを許したりしていたことが、前半から気になった。16分のミドルシュートは右に逸れ、28分は濵田が掻き出してしのいだ。濵田は20分、髙橋壱晟のクロスに合わせたカルリーニョス・ジュニオのヘディングシュートも防ぎ、それ以外でも押し込まれたりセットプレーで混戦になったりと、ピンチに陥る場面が続いていた。

守備は改善されるも攻撃でやらせてもらえない
ボールを奪っても相手に球際や切り替えで上回られ攻撃に転じることが出来ないのが、試合の流れを悪くした。もともとは𠮷田を押し出すかたちで反時計回りにスライドして攻めるプランを持っていたのだが、椿直起がサイドに張って𠮷田をピン留めした状態で、そこに前貴之が被さってくるように高い位置を取ってきたため、押し上げることが出来なかった。
そこで本来は左SB的になるはずだった宇津元伸弥が、逆サイドで守備のカバーリングをしながら攻撃にも出ようとしたが、田中和樹の裏抜けのケアもあり、野村直輝が奮闘を強いられることになった。
3ボランチの脇のスペースを使われる状況を改善するために、片野坂知宏監督は屋敷をシャドーに下げ、守備陣形を5-3-2から5-4-1に変更。ベンチからは榊原に球際に出ず我慢して網を張るようにと指示が出た。だが、そうなると1トップに残った有馬が孤立したまま、1人でチェイシングを繰り返す中で、ラインも下がり気味になる。
それでもなんとか跳ね返し続ける前半。43分の田口のFKも、濵田が入念に作った壁の外を狙わせ枠外へと逸らさせた。

工夫を重ね状況改善を急ぐも千葉のゴラッソ炸裂
守ってばかりでは埒が明かないと、後半からは再びシステムを3-5-2へと戻す。中盤より後ろはしっかり構え、2トップで追うプランへと変更された。立ち上がりには宇津元が有馬にクロスを送ったが、鈴木大輔にクリアされる。
千葉はカルリーニョス・ジュニオが天笠泰輝の脇のスペースへと顔を出すことで支配率を高めてきた。それによりまたも崩されたり押し込まれたりする状況が続く。51分の前貴之のシュートも53分の石川大地のヘディングも枠の左に逸れて助かったが、テクニカルエリアでコーチングスタッフがその修正を急ぐために話し合っていた、そんな54分、エドゥアルドのミドルシュートが炸裂する。豪快なブレ球は大分の選手たちに為す術を与えず、目の覚めるようなゴラッソとなった。
片野坂監督はただちに動く。56分、屋敷に代えて伊佐を投入し、ボールを収めさせることで相手に傾いていた流れを引き戻そうとした。これによりやや落ち着く時間が生まれ、千葉の攻撃機会を若干削ぐことは出来たが、大分の攻撃機会を増やすには至らない。
62分には千葉がカルリーニョス・ジュニオに代えて林誠道。大分は69分、野嶽惇也と宇津元をベンチに下げて木許太賀と薩川淳貴を投入し、薩川と𠮷田をSB、野村と木許をSHに配置して4-4-2の陣形で追撃態勢を取る。72分、木許のシュートは鈴木にブロックされた。

新たな追撃態勢も虚しく残念な今季2敗目
73分には千葉が田口を品田愛斗、椿を杉山直宏に代えて、田中が左に移り杉山が右SHに入った。木許も19歳とは思えないふてぶてしさで打開を図るが、千葉の強度は落ちない。
82分、大分は疲弊した有馬と野村を下げ、戸根一誓と小酒井新大を送り込む。ペレイラを前線に上げて伊佐と2トップを組ませ、戸根とデルランの2バックでさらなる追撃に出た。ただ、それはこの時点ではパワープレーではなく、あくまでも戸根のテクニックで相手のプレスを剥がし、少しでも優位な状況を作って前線にボールを送るのが狙いだった。相手のプレスをかわして木許や薩川にボールを入れるが、なかなかそこから先の段階へは進ませてもらえない。むしろ剥がす工程に時間を削られ、もどかしい時間が続く。戸根が自ら持ち上がって中央突破を試みもしたが、周囲のサポートの余地もなくゴール前で奪われてカウンターを受けることになった。どの時点でパワープレーに切り替えればいいのか、ピッチ内でも意識が揃っていなかったようだった。
結局、追撃の勢いを高めることが出来ないまま、0-1で今季2敗目を喫した。勝点を27に伸ばして2位・大宮との差を広げた千葉は、個々の力量や経験値でも組織としての完成度でも、現状の大分を大きく上回った印象だ。それは重々承知していた中で、それでもそこに挑む対千葉戦術を準備していたにも関わらずそれを表現できなかったことに、試合後の指揮官は悔しさを隠しきれなかった。
中4日での次節も昨季はJ1で戦っていた磐田とのマッチアップ。今季初のナイトゲームだ。戦力個々のストロングを生かしウィークをカバーする組織戦術は、次々に対戦相手によって対策されていく。選手層の厚みがものを言う変則的な連戦を乗り切る、正念場が続く。

