風上で先制して風下で守り切った。強風の中、苦しみながら勝ち取った今季2度目の+3

強い風に影響されて前後半で様相の反転した一戦となった。風上に立った前半に先制点を挙げたが、追加点が取れずに折り返し、虎の子の1点を必死で守り切るかたちに。スマートではなかったが、開幕戦以来の勝点3だ。
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2トップを軸にオウンゴールを誘い先制
今季未勝利のまま最下位で足掻いている愛媛と、勝点1ずつ積んで中位にしがみつきながらもまだ1勝にとどまっている大分。順位に開きこそあれ、勝利に飢える思いとそれによる硬さが見える立ち上がりとなった。
メインスタンドから見て左から右へ、強風の吹き続けたニンジニアスタジアム。前半は大分が風上に立った。出方の読みづらかった愛媛は、守備時に5バック、攻撃時に4バックになる可変システム。大分は前節の藤枝戦と同じメンバーの3-5-2でスタートした。
風上の大分は伊佐耕平と有馬幸太郎の2トップがボールを収めて攻める。6分の𠮷田真那斗のロングスローから右CKを獲得すると、天笠泰輝がショートで変化をつけてゴール前に送り最後は𠮷田がシュートして枠の上へ。11分に宇津元伸弥が倒されて相手陣左でFKを得ると、そこから12分の先制点が生まれた。どのあたりを狙うかを伊佐と擦り合わせた宇津元のキックは狙いどおりの弧を描く。有馬がきっちりと頭で合わせ、本当はシュートを狙ったのだが折り返すような方向へ飛んだところに対応しようとした相手が飛び込んでオウンゴールを誘発した。

風上からいい形で複数の好機を演出
21分にも相手陣中央でFKのチャンス。宇津元の放った弾道は相手に触られ、そのこぼれ球を野村直輝が狙ったが得点には至らなかった。
風下の愛媛は長いボールを前線に送る。その中で24分、その処理にあたった藤原優大が田口裕也に猛然とプレスをかけられて分厚い攻撃を受けた。だが、谷本駿介の浮き球をエリア内で受けた深澤祐太がハンド判定となる。それ以外は愛媛のロングボールに対して危なげなく対応できていた。ただ、可変する相手にサイドを使われる場面が続いたため、30分過ぎに片野坂知宏監督は守備陣形を5-3-2から5-4-1へと変更し、サイドの人数を増やす。守備時はシャドーに下りる有馬が、攻撃時には2トップへとこちらも可変した。
有馬のタックルから攻撃へと切り替わった34分、左から相手陣へと運んで野村が大きなサイドチェンジ。受けた野嶽惇也が早めにゴール前へと送ると相手のクリアボールがファーにいた伊佐の足元に収まる。まさに1点ものの絶好機だったが、伊佐のシュートは追加点許すまじと飛び出した辻周吾のファインセーブに阻まれた。
38分には愛媛も甲田英將のインターセプトからカウンターチャンスを迎えるが、甲田のパスを受けた田口のトラップの隙を逃さず野嶽がボールを奪い返す。

追加点取れず折り返した後半は向かい風
39分には相手のプレスをいなしながらのポゼッションから藤原が野村にクサビを当てたのをスイッチに、榊原のパスを受けた宇津元が縦に仕掛けてマイナスの折り返し。だが、ここも飛び出した辻に取り押さえられる。41分にも右サイドの連係で突破を図ったが、𠮷田の反転シュートは枠を捉え切れなかった。
攻めながらオウンゴールによる1点のみで折り返し、風下に立つことになった後半。愛媛は森山公弥を村上悠緋に代えて2トップに変更し、追撃の強度を増してきた。それでも序盤は野嶽のFKから藤原がシュートしてブロックされ、デルランのパスを受けた伊佐がカットインして優しく落とし、榊原が狙ってディフレクションするなどフィニッシュまで至っていたのだが、風を受け、疲労も積もり、相手に背後を狙われる中で徐々にラインが下がり、自陣に押し込まれる時間が増える。
52分には谷本の右CKから田口にガッツリ頭で合わせられヒヤリとするが、枠の右。57分には大分のブロックの外から甲田がミドルシュートして濵田太郎が掻き出した。62分には甲田のクロスを藤原がクリアしたところへ黒石貴哉が走り込んで足を出すがシュートは枠の左へ。

最後まで集中して完封し6戦ぶり白星
片野坂監督は62分、疲労の見える伊佐に変えて鮎川峻を投入。66分には早速、有馬のパスに抜け出した野村のグラウンダークロスから鮎川が決定機を迎えたが、シュートは枠の上に逸れた。
70分には石丸清隆監督が田口を藤原悠汰、窪田稜を鶴野怜樹に2枚替え。74分には持ち上がった野村を追い越してそのパスを受けた宇津元が左足でゴールを狙ったが、ミートできなかった。76分、大分は野村を小酒井新大、宇津元を茂平に2枚替え。84分には愛媛が谷本を佐藤亮に代え、86分には大分が有馬を屋敷優成、野嶽をペレイラに代えて、追いつきたい愛媛と押し返したい大分のせめぎ合いが続く。
87分には佐藤のクロスを𠮷田が掻き出し、88分には佐藤の左CKに合わせた細谷航平のシュートを濵田がキャッチして時間を使った。アディショナルタイムは4分。風下に立つ大分のリードはわずか1点。最後まで激しく追撃を続ける愛媛は左CKのチャンスに辻も上がってパワープレー。その辻が試合後に「パワープレーで初めて触った」とちょっとうれしそうに言ったヘディングシュートは枠上に外れ、大分は虎の子の1点を守り切って試合終了を迎えた。

少しずつ見えてきた攻撃の手応え
追加点のチャンスは逃したし、強風の影響でパスミスも多発した。終盤はもうとにかく跳ね返すだけという状態にもなっていた。一方で、相手のプレスを剥がして前進しフィニッシュに至る回数も増え、ミドルブロックからのカウンターの質が向上しつつある感触も得た。攻撃面も徐々に改善されつつあり、リードしているときは特に、もっとボールを収めながら落ち着いて攻めることが出来れば精度も高まるはずだ。
苦しい時間帯も乗り切っての、今季4試合目のクリーンシート。何より開幕戦以来の白星が、小さな風穴を空けてくれた。得点がオウンゴールのみという物足りなさも残ってはいるが、とにかく守備意識を高く維持してきたことが、いまだ2勝ながら敗戦も1だけで、大分を今節終了後の10位という位置にとどまらせている。
次節からは大宮、徳島、千葉と好調なチームとの対戦が続く。粘り強く戦い、じりじりと精度を高めて、上位を狙えるところに食らいついていきたい。