互いのスタイルで駆け引きした試合は終盤に劇的に展開。先制も追いつかれ勝点1に終わる

優位な時間帯に得点できず、相手の修正に遭いながら苦しい時間帯も乗り越えて88分に先制。だが、あと一歩という90+4分に同点に追いつかれ、勝点2が手からこぼれ落ちてしまった。
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序盤は網にかけてチャンスを量産
第2節・いわき戦以来となる3バックシステムの相手。前節から3-5-2へとシステム変更した大分は、藤枝の3-4-2-1と対峙し、ポゼッションを得意とする相手に対しミドルブロックを構えながらメリハリをつけて激しいプレッシングで守備を仕掛けた。
藤枝としては大分がGKにまでハイプレスを仕掛けてくると予想しておらず、伊佐の深く激しいプレッシングに面食らったようだった。加えて乾いたピッチコンディションにも、ビルドアップの精度やスピードを削られた。立ち上がりこそ勢いよく攻め、3分に世瀬啓人がシュート。5分にも金子翔太が狙ったが、世瀬は濵田太郎に防がれ、金子は枠をとらえきれなかった。
大分は5-3-2の守備網で相手のパスを引っ掛けてカウンターからチャンスを量産。9分に𠮷田真那斗がボールを奪って右サイドで粘り、野嶽惇也のクロスを有馬幸太郎が落として榊原彗悟がシュートしたが枠の右に逸れた。17分には榊原の浮き球に抜け出した伊佐がシュートしたが北村海チディの正面。18分には天笠泰輝がセカンドボールを拾ったところから伊佐が繋ぎ有馬で中央突破を試みたが、シマブクカズヨシの素早い帰陣により阻まれた。

プレス回避する藤枝にやや流れが傾く
ポゼッションしながら前進したい藤枝と、それを引っ掛けてカウンターで仕留めたい大分。そういうシンプルな図式がハマって大分が試合を優位に進めていた時間帯に、1点でも取れていればよかったのだが、藤枝のほうも修正は早かった。前半の中盤には大分のプレスを回避するよう立ち位置をずらしながら、ディアマンカ・センゴールの高さや強度も生かして流れを引き寄せていった。
28分にはシマブクのクロスに千葉寛汰が頭で合わせ、濵田が掻き出す。31分には世瀬のミドルシュートをブロックしてしのいだ。粘り強くしのぎながら、35分には𠮷田のスルーパスから野嶽がクロスを送ったが、精度を欠いて味方に合わせることが出来ず、試合はスコアレスで折り返す。

立ち位置やベンチワークの駆け引きが白熱
後半の藤枝は、カウンターを避けてサイド攻撃を強化。同時に大分のストロングポイントを消しながらウィークポイントを突く戦い方へと修正したように見えた。一方の大分はスタートから激しくチェイシングしていた前線をはじめ、スライドを繰り返してきた選手たちに疲労が見えはじめ、運動量が落ちたところで流れは藤枝へと傾く。
クロスやCKでチャンスを築く藤枝に対し、ラインを下げながら粘り強く対応する大分。時折、ボールを奪って有馬へと長いボールを送るが、相手もすぐに対応して回収される。落ち着いてボールを持てないことで相手に攻められる時間が長くなり、守備にかかる負担が大きくなった。
先に動いたのは藤枝ベンチ。60分に金子を下げ、前節も好調だった浅倉廉を投入して前線を掻き回しにきた。大分は66分に伊佐を鮎川峻、宇津元伸弥を茂平に2枚替えして鮮度を担保しつつ、ダブ�ボランチにして距離感の修正を図った。69分には藤枝が杉田真彦を梶川諒太に、千葉を前田翔茉に2枚替え。ベンチワークの駆け引きが続く。

今季初出場の太賀、登場1分後にアユゴールをお膳立て
ボールを握って押し込んでくる藤枝に対し、押し返したい大分は78分、野村直輝を清武弘嗣にチェンジ。清武が間で受けて攻撃を組み立てようとするが、周囲がその意図を上手く汲めず単発に終止しがちとなる。それ以前に、長いボールが清武の頭上を越えるシーンも多かった。
81分には藤枝が久富良輔と川上エドオジョン智慧を中村涼と松木駿之介に交代。松木を前線に配置し、前田を右WBへと移すと、松木はセンゴールと並ぶ2トップの形になったようにも見えた。ボランチの梶川を中心にポゼッションの精度を高め流動的にポジションを取りながら攻めてくる藤枝に対し、大分は87分、疲労した𠮷田を松尾勇佑、有馬を木許太賀に交代して、最後のひと押しに懸けた。
1点をめぐるこのせめぎ合いから、最初にゴールネットを揺らしたのは大分だった。88分、左サイドのスペースへと抜け出した木許が持ち上がってクロスを送ると、走り込んできた鮎川が合わせて押し込み先制。藤枝戦で過去2得点していた鮎川が、相性の良さを炸裂させた。

ボールを持てない大分の必然とも言える結末
木許の投入1分後の先制点。采配ズバリという感じで、アディショナルタイムも含めて残り時間をしのぎ切れば、開幕戦以来の勝点3を積めるところまで来た。
だが、ここでチームとしての未熟さが露呈する。意図してボールを持てない大分は、追撃する藤枝の威力に晒されっぱなしになる。そうやって押し込まれながら懸命にしのいでいた90+4分、浅倉のクロスにファーで中村が頭で合わせ、藤枝が同点弾。試合は1-1で終了した。
5人の交代枠を使い切っての88分の先制で、守備固めが出来なかったことも要因ではあるが、それ以前に、相手が修正してきたときにこちらが対応するための引き出しの少なさが、この結末を招いたとも言えた。カウンターを得意とするチームではあっても、ボールを持つ力も養っていかなくては、試合中の多彩な展開に対応していくことは難しい。積み上げるべきものはまだまだたくさんあると思い知らされる一戦となった。