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試合レポート

手応え感じる2-0白星発信。全員がチームのために走ってタスク遂行

 

J1クラスのプレーヤーが居並ぶ札幌の前に大ピンチに陥るシーンもあったが、粘り強い対応と的確なスカウティングに基づいた組織的タスクの遂行で、試合の流れを引き寄せた。

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粘り強い対応からチャンスを狙う

事前には3-5-2かと予想されていた札幌のフォーメーションだが、蓋を開けてみると3-4-2-1だった。割と直前のトレーニングでシステムを変更したようだが、ミラーゲームを仕掛けて個の局面で圧倒しにきたのか、あるいはチーム事情だったのか。
 
立ち上がりには右サイドのコンビネーションからペレイラがクロスを送り、それで右CKを獲得すると天笠泰輝がショートで変化をつけて最後はデルランがシュートするところまで行ったのだが、その後は徐々に札幌にボールを持たれるようになる。攻め込まれて立て続けにCKを与え、粘り強く対応しながらカウンター気味にチャンスを狙うかたちになった。
 
19分にはデルランのクロスから有馬幸太郎がヘディングシュートを放つが菅野孝憲に押さえられる。札幌に圧され気味ながら遊びのパスも交えつつ機を見て前線にボールを送り、CKやロングスローを獲得した。

 

札幌の長所を封じた組織的戦術

耐える時間が長くなったが、まずは札幌の攻撃のストロングポイントである右サイドを封じることが出来ていたのが大きかった。ドリブラー近藤友喜にはマッチアップする宇津元伸弥がメリハリをつけて対応し、そこに絡んでくる荒野拓馬や青木亮太はデルランや天笠がケア。今季の札幌は流動性を高めているが、藤原優大や天笠が中心となって指示を出しながら、組織的守備を遂行していた。
 
だが、やはり札幌の一発は脅威だ。30分には荒野のクロスからジョルディ・サンチェスにシュートを許し、濵田太郎が指先で掻き出すビッグセーブでしのいだ。37分には自陣でボールを奪われたが木戸柊摩のシュートは枠の右へ。こちらも負けじと33分に天笠のFKにペレイラが頭で合わせ、34分には有馬のポストから有働夢叶が運んでゴールを狙うが、攻め合いながら仕留め切れずに一進一退の攻防が続く。
 
前半終了間際には両軍がビッグチャンスを築いた。41分、近藤の背後を取った宇津元のクロスにピンポイントで飛び込んだ𠮷田真那斗のヘディングシュートは惜しくもポスト。44分には大分が札幌を押し込んだ状態から札幌のロングカウンターが発動し、ゴール前でサンチェスから荒野、荒野から近藤へと繋がれたが近藤のクロスに合わせたサンチェスのシュートは紙一重で枠の左に外れた。

 

修正が奏功して有馬弾で先制

後半に入ると大分は攻守両面で修正を施す。これにより前半は孤立しがちだった有馬とシャドーとの距離が改善され、相手の空けたスペースを上手く突けるようにもなった。それを受け、62分、岩政大樹監督が動く。木戸、荒野、サンチェスを馬場晴也、田中克幸、キム・ゴンヒに3枚替えしてテコ入れを図った。直後に中村桐耶が速く鋭いクロスで絶好機を演出するが、ゴール前で味方に合わず、大分としては命拾い。
 
それでも大分の優勢は続き、68分にはペレイラがゴール前に送ったFKを有馬が反転シュート。腰のキレも鋭かったが菅野に対応され、詰めた池田廉も押し込めない。
 
70分には片野坂知宏監督が2枚替え。宇津元を薩川淳貴、池田を鮎川峻に代えて鮎川が左シャドーに入り有働が右シャドーに移った。その有働の頑張りから獲得したロングスロー。73分、𠮷田の両腕から放たれたしなやかなボールをデルランがゴール前で落とし、そのこぼれ球を有馬が押し込んで、大分がついにスコアを動かした。
 
直後に札幌は中村を田中宏武に代え追撃態勢を取るが、今季新加入のエースの公式戦初ゴールで大分は勢いづく。デルランのダイナミックなインターセプトに観客席がどよめき、ホームスタジアムの雰囲気は盛り上がりを見せた。

 

大活躍のドリが決定的な追加点

札幌は81分、青木に代えて長谷川竜也を投入し1点を追い続けるが、大分のハイプレスに上手くボールを前進させることが出来ず、イーブンなボールを送っては攻め返されて後追いになり、ファウルでセットプレーを与える繰り返しに。
 
そうやって得たチャンスから、84分、大分が追加点を挙げた。榊原彗悟のFKのこぼれ球を有馬が狙い、さらにこぼれたところで有働が押し込んで札幌を突き放す。89分には有働と有馬に代えて清武弘嗣とキム・ヒョンウを送り込むと、鮎川が右に移り清武は左シャドーに。清武が時間を作り、薩川がラインを押し上げ、キムがゴールを狙って最後までゴール前を固める戦略は取らずに、アディショナルタイム5分を使い切って2-0での勝利を掴んだ。
 
とにかく全員の一体感の感じられる戦いぶりが爽快だった。前半の苦しい時間帯にも個々のタスクをたゆまず遂行し、後半の指揮官からの修正にもスムーズに対応できるあたりに、戦術浸透度が感じられた。新体制初陣の札幌は組織の成熟が進んでいないこともあったとはいえ、粘り強さや積極性、献身性と、昨季は不足していたものを今季最初のホームゲームで見ることが出来た期待感は大きい。約束通り、3人目のお子さんが生まれた伊佐のためのゆりかごダンスも披露できた。またホーム連戦となる次節・いわき戦で連勝できるよう、準備を施していきたい。