TORITENトリテン

試合レポート

GMとレジェンドをいいかたちで送り出したい。感謝と惜別の好ゲーム

 

前節の結果をもってJ2残留を決めたチームの今節の最大のモチベーションは、長きにわたりトリニータを支えてくれた2人の花道を勝利で飾ることだった。激しいバトル、そして駆け引きで群馬を上回り、今季ホーム4勝目を挙げた。

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薩川と梅崎がベンチ入り

前節までは残留争いの中、勝点を積むためにリスクを回避し割り切った戦法を採用していたチーム。前節の結果をもってJ2残留が決まり、また今節は前節の対戦相手・秋田とは全く異なるスタイルの群馬との対戦ということもあって、対群馬仕様の戦術で勝利を目指すことになると、片野坂知宏監督は明言していた。
 
先発メンバーは2人を入れ替えたのみ。ベンチには負傷からの約半年ぶりの復帰となる薩川淳貴の名とともに、2日に今季かぎりでの退団が発表されたレジェンド・梅崎司の名が並んだ。それはこの試合が梅崎のラストゲームとなることを意味する。現在も負傷して満足にプレーできず、それでも痛み止めを施してメンバー入りした梅崎のために、早々にリードを広げて梅崎をピッチに送り出したい。そしてまた、今季かぎりでの退任が決まっている西山哲平GMのこれまでの功績の大きさを、勝利で裏付けたい思いもある。試合前に、チームの気持ちはひとつになっていた。
 
一方の群馬は、すでに前節、ホーム最終戦でやはり今季かぎりでスパイクを脱ぐ細貝萌のラストゲームを完了。今節は中塩大貴の出場停止もあって先発2人を入れ替え、J3降格決定後に武藤覚監督が新たに落とし込んでいる4バックベースの可変システムでの戦術で臨んできた。

 

立ち位置の取り合いで上回り優位に

試合は立ち上がりから激しいぶつかり合いとなる。中盤のバトルから抜け出してゴールへと迫るかたちで、互いにチャンスを作り出した。2分、スピードに乗って樺山諒乃介が攻め込むところを野村直輝がプレスバックで阻止。6 分には吉田真那斗のクロスを処理しようとした櫛引政敏がファンブルしたところから渡邉新太が反転シュートしてわずかに枠の左へ。
 
デュエルの多い、緊張感あふれるゲーム。その活発なトランジションの中で、群馬の左SHの川本梨誉が最終ラインに吸収されて5バックとなる可変システムのスライドが時折、中途半端になっていた。そこを突いて吉田がサイドを突破する回数が増える。だが、そうやって相手を押し込んでも中を固める群馬守備陣は、ゴールを割らせてくれない。
 
大分が優位に進めつつ、群馬もカウンターで攻め返して激しい攻め合いは続く。21分には野村のクロスから茂平のシュートがサイドネットを揺らすにとどまり、24分には大畑隆也のクロスから和田昌士がヘディングシュートしてGKムン・キョンゴンに対応される。26分には弓場将輝の左足が枠を捉えきれず、29分にはカウンターで天笠泰輝が遠目から狙って枠の左へ。激しい攻防の中、34分にはムンの立ち位置を確かめた櫛引が自陣FKから直接相手ゴールを狙うシーンも。前半終了間際にもカウンターの応酬となったが、ボールの切れ間の少ない試合はスコアレスで折り返すこととなった。

 

デルラン2戦連続弾&将輝今季初ゴール

群馬も立ち位置を取りながら相手と駆け引きするスタイルで、試合中に細かく変化する。片野坂監督は前半の右サイドの好感触を掴むかたちで、屋敷優成を渡邉と並べて2トップにし、保田堅心を一列上げて弓場がアンカーの陣形へと変更した。
 
そうやって優位に試合を進めつつ、先制は51分、左CKから。保田のキックは一度は櫛引に弾き出されたが、それを野村が拾って繋ぎ、もう一度保田が山なりのクロス。ペレイラとの競り合いで櫛引がこぼしたところをデルランがすかさず押し込んだ。デルランは前節に続き今季2ゴール目。
 
さらに62分にも、大分が追加点。スペースに抜け出した屋敷の折り返しを野村が落とし、弓場がシュートしてネットを揺らした。

 

前線にパワーをかけ追撃する群馬

2点を追うかたちになった群馬は63分、樺山を北川柊斗、平松宗を佐川洸介に2枚替えして攻撃陣のパワフルさを高めた。シンプルに前線のパワーを生かす戦法へとシフトする群馬に対し、試合の流れを渡すまいと68分には大分も2枚替え。渡邉と屋敷をターゲットとなる長沢駿とハードワーカー宇津元伸弥にチェンジした。73分には群馬が仙波大志を風間宏希に、和田を山中惇希に交代。風間が中盤でボールを動かすリズムを作り出すと群馬がボックス内へとクロスを送る回数も増えていく。
 
早く梅崎を送り出したいという思いがつのりつつ、前線にパワーをかけてきた相手に押し込まれていた79分。山中のクロスを北川が落とし、川本が繋いで佐川が豪快にゴール。1点差へと詰め寄られた。84分には川本が河田篤秀と交代。さらに前線の威力を増す群馬に対し、86分、大分は吉田と保田を薩川と池田廉に代えると茂を右に回し薩川を左WBに配置した。89分には相手のロングスローの流れからカウンターを繰り出し、薩川が一心にゴールへと迫るが、シュートは枠の上へ。

 

司、現役最後の瞬間をピッチで迎える

4分のアディショナルタイムに突入したところで、梅崎の名が呼ばれた。90+1分、野村とガッチリと抱き合い、キャプテンマークを託されて37歳がピッチに入る。すでに梅崎のチャントを歌い続けていたゴール裏サポーターの声が高らかさを増した。
 
だが、そんな事情にはおかまいなしに群馬も猛追を仕掛けてくる。天笠のクロスをペレイラが、そして長沢が立て続けにクリア。山中のクロスを梅崎がクリア。押し込まれる展開の中、梅崎も自陣での守備に追われる。90+3分には右サイドで池田がボールを持ち、梅崎の位置を確認したように見えたが怪我をしている梅崎は走れない。池田のクロスから薩川のシュートは枠上に外れ、90+4分の宇津元のシュートも枠の左へと逸れて、試合は2-1のまま終了。梅崎の現役生活が、ここで終わった。
 
試合後にはホーム最終戦セレモニーが行われ、小澤正風社長、片野坂監督、渡邉キャプテンの挨拶とともに、片野坂監督に呼びつけられた西山GMのスピーチと、梅崎の引退宣言が、レゾナックドーム大分に集まった1万1439人に届けられた。大分トリニータはひとつの大きな転換点を迎えつつ、次節、今季ラストゲームをアウェイ仙台で戦う。

ついに後光が射すまでに…!