TORITENトリテン

試合レポート

「3」には届かずも一体となって掴んだ大事な+1。次に繋がる内容に

 

メンバーを入れ替え、中断期間に落とし込んだ3-5-2でのシンプルな戦法で、リスクを抑えて相手陣でプレーする時間を増やし、全員で掴んだ勝点1。J2残留確定へと、また一歩前進した。

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中断期間に落とし込んだ戦法で臨む

前節・長崎戦に敗れたあと、2週間の中断期間を挟んで再開したシーズン最終盤。チームは中断期間後半のトレーニングを非公開へと切り替え、今節への準備に集中した。
 
その間に取り組んだのが3-5-2システム。非公開で行ったトレーニングマッチでもそれを試し、相応の手応えを得て、今節はその戦法を採用した。最終ラインは右からペレイラ、安藤智哉、デルラン。前線は鮎川峻と屋敷優成の機動力ある2トップとし、自陣でボールを奪うとシンプルに前線へと配球して攻める。
 
水戸が大分のフォーメーションを見極めるあいだに、チャンスを築いた。5分、安藤のフィードに抜け出した野嶽惇也の折り返しから鮎川がシュートしたが相手にブロックされる。15分には自陣でペレイラがボールを奪ったところからカウンターを発動し、鮎川の巧みなスルーパスから保田堅心がクロスを送ったが、飛び込んだ屋敷のシュートは枠上へと外れた。

 

守備の安定を期して立ち位置を修正

水戸も徐々に大分の戦い方に順応し、プレスをかわすようになる。徐々にポゼッション率を高めると16分には推進力を生かしてゴールに迫った齋藤俊輔のシュートがポストに弾かれた。27分にはこぼれ球から碇明日麻が狙って枠の上。
 
水戸のボールの動かしに守備ブロックが揺さぶられることを嫌って、大分は前半途中からシステムを3-4-2-1へと変更した。これにより前線からのプレスがさらにかかりづらくなり相手にポゼッションされることも増えたが、守備の安定感は増したと選手たちは試合後に証言する。
 
39分には野村直輝のクロスに屋敷が頭で合わせたが松原修平にキャッチされる。40分には屋敷のインターセプトから鋭いカウンターを繰り出し、最後は野嶽が折り返すがここも松原に阻まれた。

 

采配合戦で流れを手繰り寄せる

後半立ち上がりに野村が積極的にゴールを狙ったのを皮切りに、両軍は攻め合いを続けるが、ともに決定的な場面をなかなか作れない。試合終盤へと傾れ込むあたりから、駆け引きは采配合戦の様相を呈してくる。
 
先に動いたのは大分。60分に鮎川を渡邉新太に、屋敷を池田廉に2枚替えした。渡邉は7月14日の第24節・清水戦以来の出場。心強いキャプテンの復帰となった。その渡邉が出場早々の62分にドリブルでゴールに迫るシーンを作ると、その直後にもデルランのロングシュートの軌道を変えるなど立て続けにチャンスを演出する。
 
水戸も63分に草野侑己に代わって入った山本隼大が68分、個人技でコースを作って左足を振り抜き、わずかに枠の左。70分には安藤のワンタッチのクサビをスペースで受けた野村がやわらかい浮き球を渡邉へ。渡邉の鋭いシュートは枠を捉えたが、松原のファインセーブに掻き出された。

 

決定機を仕留めきれず0-0で終了

73分には水戸が齋藤と久保征一郎を甲田英將と中島大嘉に2枚替え。山本が左に回り、甲田が右に入った。78分には大分が保田を下げて宇津元伸弥を投入。宇津元がシャドーに入り池田がボランチへと一列落ちる。
 
スペースで個の力量を発揮する渡邉を、池田や野村が巧みに生かしながら好機を生み出し、セットプレーのチャンスも得るのだが、それがなかなか得点へと結実しない。0-0のまま大分が優勢な状況で試合が終盤に突入すると、勝点3を狙う大分は86分、野村と野嶽をベンチに下げ、代わりに長沢駿と小酒井新大を投入した。宇津元が左WBに移り長沢と小酒井の2シャドーとなる。
 
水戸は89分に新井晴樹を飯泉涼矢に交代。アディショナルタイム4分に入ってからは長沢と渡邉の2トップにして前線にパワーをかけるが、90+2分、宇津元の左CKをニアでそらしたペレイラのヘディングシュートにも松原が素晴らしい反応。セットプレーのチャンスもものに出来ず、試合はスコアレスドローで終了した。

 

次節、勝利すれば残留確定の可能性も

ともに勝点1を積んで他会場の結果を見ると、18位・栃木はすでにJ3降格が決まっている22位・群馬とスコアレスドロー。熊本、甲府、水戸のJ2残留が決定した。
 
1試合消化して降格圏とは勝点5差のまま。次節にも大分が勝ち栃木が引き分け以下ならば残留が決まる。栃木とは得失点差で大きな開きがあるため、引き分けでも栃木が負ければ残留はほぼ確定という状況だ。
 
そんなヒリヒリしたシチュエーションに置かれているチーム。今節は前節の反省も踏まえ、これまでのポゼッションを封印したかのようにリスクを負わず素早くゴールに迫る戦法を採用した。負傷者も含むが、おそらくはこの戦法に合わせて戦力をチョイスした中で、調子を上げていながらメンバー外となった選手もいる。誰もがJ2残留のために自分が力になりたいと思っていることを、全員が承知の上だ。弓場将輝は「今日メンバー外になった選手の中にもレギュラーの力を持っている選手がたくさんいる。そういう選手たちのためにも、出ている選手が責任持ってプレーしなくてはならないと、試合前にみんなで話した」と明かした。
 
怪我人が続出した苦しいシーズンだったが、この最終盤になってから、選手交代で戦い方を変えたりギアを上げたりすることが出来るようになった。今季のチームのポテンシャルを、振り絞って出し尽くしたい。

伊佐くんリハビリ頑張れ