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試合レポート

ミスから自滅して4失点。ペレイラの一矢も虚しく杮落としに花を添える

 

3000人のトリサポが後押しした新スタジアムでの九州ダービー。だが、ミスからの失点でプランが崩れ、その後の立て直し中にもミスが重なって、無念の敗戦となった。

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予期しなかったマテウス・ジェズスの1トップ

長崎のメンバー発表を見たとき、攻撃陣の配置がわからなかった。長崎の番記者たちも「おそらく1トップには名倉が入るのでは…?」と首をひねる。だが、蓋を開けてみると布陣の頂点に入ったのはこれまで左インテリオールに配置され続けてきたマテウス・ジェズス。初めての1トップ起用だった。
 
試合後のミックスゾーンで敵将となった下平隆宏監督を呼び止めてその意図を問うと、フアンマは守備に課題があることと、後半から出したほうが相手にとって嫌だろうと考えたからだと教えてくれた。
 
そのマテウスは、試合運びの駆け引きでも大分を出し抜いたようだ。ムン・キョンゴンの話によると、試合開始からしばらくは自陣でボールを動かすことは避けてアンパイに大きく蹴り出し、雰囲気やピッチに慣れてきてから徐々にボールを握って攻めていこうと考えていた。前々節からはじめたように5-4-1のブロックを構えて粘り強く対応する大分に対し、長崎はその外でボールを回しながら好機を窺う。サイドから押し込まれる時間帯もあり、17分には増山朝陽のシュートがクロスバーを叩くシーンも作られたが、なんとかしのいでいれば少しずつこちらの時間も増えてくるに違いないという期待感もあった。もとよりそのつもりで片野坂知宏監督も交代策を含め90分間のゲームプランを準備していた。

 

イージーなミスとセットプレーから2失点

だが24分、あまりにもあっけなくそのプランは崩れた。24分、ムンの安藤智哉へのパスがゴール正面でマテウスに引っ掛けられ、悠々と無人のゴールに流し込まれる。記念すべきピーススタジアム初ゴールに、長崎のサポーターは大歓喜した。
 
このとき、マテウスは試合運びの駆け引きもしていたのか。しばらくはあまり前からプレスをかけてこず、ロングボールを跳ね返しながら、大分が少し落ち着いてパスを繋ぎはじめるのを待っていたようだった。
 
ショッキングな失点ではあったが、時間はまだたっぷりある。これ以上の失点を抑えつつ落ち着いて試合を運べば、盛り返すチャンスもきっと作れるはず。攻め込まれるのを粘り強くしのぎながら、そう考えていた矢先の33分、今度はマルコス・ギリェルメの左CKからヴァウドに頭で、あっさりと2点目を奪われた。
 
力量の高いタレントたちが並ぶ長崎に対し、かなり慎重に試合に入った印象だったが、どちらかというと新しい専用スタジアムのアウェイの雰囲気にのまれたり、根付いていない芝に足を取られたりで闘志を削がれがちだったようだ。ともあれ、無失点で時計を進めるプランは無効となり、リスクを負ってもボールを奪いに行かなくてはならなくなる。前半アディショナルタイムには安部大晴のシュートがポストを直撃するピンチもあった。

 

反撃を期した後半立ち上がりに3失点目

2点のリードを奪い構える時間を増やして前半をセーフティーに折り返した長崎に反撃するため、片野坂監督は髙橋大悟をベンチに下げて保田堅心を投入し、鮎川峻と池田廉の2トップに2列目は右から保田、弓場将輝、野村直輝という5-3-2へとフォーメーションを変更して後半に入った。4-3-3を基本形とする長崎は守備時にはマルコスが一列下がって名倉巧とマテウスが前線に並ぶ4-4-2に変形してスペースをケアする。池田や保田の機動力を加えてなんとかゴールに迫りたかった。
 
だが、49分、痛恨の3失点目を喫する。安藤の保田へのクサビが秋野央樹にカットされ、ワンタッチで逆にクサビを送られるとゴール前でそれを受けたのはマテウス。個人技で弓場を剥がし、安藤を背中でブロックしつつ、コースを切りに行った香川勇気の背後でフリーになったマルコスへと託す。失い方が悪すぎてマルコスを阻むために戻れる者はおらず、またも余裕をもってゴールネットを揺らされることになった。
 
53分には吉田真那斗のクロスに池田が飛び込み、56分には鮎川と池田のワンツーから保田がフィニッシュのチャンスを迎えるなど、狙ったかたちで好機は築くのだが、3点のリードを得た相手の守備には精神的な余裕も感じさせ落ち着きを失わない。

 

理に適った反撃でゴールには迫るのだが…

59分には長崎が名倉と澤田崇をフアンマ・デルガドと笠柳翼に2枚替え。60分には大分が野嶽惇也を茂平に交代した。茂がゴリゴリの推進力を発揮してクロスを送りCKを獲得、吉田もロングスローで追撃を続ける中、68分には自陣ゴール前からマルコスに一気にカウンターで運ばれるが、マルコスのクロスが誰にも合わずに助けられる。69分には野村の浮き球に抜け出した弓場がカウンターで攻め上がったが、並走する鮎川と保田へのパスのタイミングを見極めるうちに、素早く戻ったヴァウドに対応されてしまった。
 
72分、大分は鮎川と野村を長沢駿と町田也真人に交代。74分にはマルコスのFKをムンがファインセーブしてしのいだ。75分、片野坂監督は吉田を宇津元伸弥に代えてシステムを4-4-2に変更。最終ラインは右から茂、ペレイラ、安藤、香川で中盤の底に弓場と保田。右に町田、左に宇津元。前線は長沢と池田の形とする。
 
80分にはフアンマのシュートをムンがブロック。長崎の一発狙いに対応しながら追撃は続く。83分には左サイドでボールを受けた保田が個人技でエリア内に進入。それを後ろから追ったマテウスが倒し、足もかかっているように見えたのだが、完全にPKを獲得したかに思われたシーンでもファウルは取ってもらえず。福島孝一郎主審は異議を唱えた保田にイエローカードを提示した。

 

ペレイラの意地の1点もさらなる失点

長崎は84分、安部を山田陸にチェンジ。85分、逆サイドから流れたボールを拾った香川のシュートは増山にブロックされる。86分には香川のクロスに合わせた宇津元のヘディングシュートがクロスバー。89分、長崎は増山とマルコスを青木義孝と松澤海斗に代えた。
 
89分、セカンドボールを拾った宇津元が左サイドを駆け上がり、緩急つけながら深くえぐってマイナスのクロス。マテウスと山田が足を出してさわれなかった先にいたのは流れの中で判断して攻め残っていたペレイラで、その一閃が意地の1点へと結実する。
 
アディショナルタイムは6分。なんとかもう1点と望みたかったが、90+3分、相手のスローインからゴール前に運ばれ、人数は揃っていたにもかかわらず誰も止めきれずに笠柳に4点目を許す。結局、4-1で試合は終わり、不本意にもピーススタジアムの杮落としに花を添えるかたちとなった。
 
終盤に来てムンのミス絡みでの失点が続いたことが気がかりではある。もともとは足元の技術に長けビルドアップを得意とするGKなのだが、このミスの連発の原因がムン個人にあるのかビルドアップの仕組みにあるのか戦術的なものなのかを早急に分析して修正しなくてはならない。残留争いの中でイージーなミスは許されないが、勝点3を取るためには得点も狙わなくてはならず、勇敢なチャレンジの意思を失いたくはない。栃木は愛媛に追いつかれて1-1で、勝点差を5に縮められた。2週間の中断期間に、しっかりと立て直して次のホーム水戸戦へと備える。

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