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試合レポート

組織的守備から放ち続けた攻撃の矢。首位相手に主導権握り+1

 

首位・横浜FCをシュート3本に抑え連勝記録を「5」でストップ。多くの時間帯で主導権を握り、アウェイで勝点1を積む。そのルーツは、修正された守備にあった。

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ノムの気迫。立ち上がりから主導権を握る

こちらは保田堅心、相手はユーリ・ララと、互いにボランチの主力を欠いての3-4-2-1同士のミラーゲーム。この日のニッパツ三ツ沢球技場には強風が吹き、風の影響にダイレクトに左右された前節の徳島戦を思い出す中、コイントスに勝った野村直輝は、今回は風上を選んだ。
 
立ち上がりから、あらためて取り組んだ守備のオーガナイズが奏功した大分が主導権を握る。ラインコントロールの精度が高まって布陣のコンパクトさが保たれ、攻守の切り替えもスムーズにハイプレスから相手を押し込み続けた。個々のクオリティーの高い相手とのミラーゲームだったが、気迫あふれるデュエルで勝利する場面も多かった。特に古巣戦ということもあって気合の高まった野村の激しいプレーが、チームの雰囲気を盛り立てていたと思う。

 

繋がっての攻守で好機を量産

開始早々の6分、右サイドの崩しから中川寛斗の浮き球に抜け出したペレイラがマイナスのクロス。池田廉が潰れ弓場将輝が繋いで野村がシュートすると、弾道は相手にブロックされたが、まずは濃厚な決定機を築いた。
 
高い位置からの守備により相手陣でプレーを続けていた12分には、中川のインターセプトを受けて野嶽惇也が野村との連係で左サイドを攻略。野村のクロスは掻き出されたが、カプリーニによるカウンターには香川勇気が対応。ちなみにこのクリアボールはテクニカルエリアの片野坂知宏監督を直撃した。
 
18分には香川のフィードをゴール前に入っていた野嶽が落とし、鮎川峻が繋いで弓場将輝へ。相手に囲まれて打てずに吉田真那斗に託し、最後は吉田が狙ったが市川暉記にキャッチされた。19分にもペレイラのクロスから好機。22分には野村から池田を経由したボールを吉田が切り返して左足で狙ったが、鋭いシュートはまたも市川に防がれる。

 

完璧なカウンターから先制点を奪われる

横浜FCの要である井上潮音と福森晃斗はなるべく抑えておきたかったのだが、それでも井上がボールを触れば横浜FCのチャンスになり、ファウルからFKを与えて福森の高精度の左足に緊張する場面もあった。ただ、大分が圧倒的に優位に進める中で、その回数は多くはない。
 
そんな時間帯ながら、一瞬の隙を突かれて先制点を許した。32分、福森のクサビを中盤まで落ちた髙橋利樹が落とし、カプリーニが前へ送って最後は小川慶治朗。スカウティングどおり前に出ていた濵田太郎をかわして、最後尾から全く無駄のない、ワンタッチばかりの美しいカウンターの一閃だった。
 
36分にはペレイラの左足シュートを皮切りに分厚い攻撃を仕掛けたが、失点以降、流れはやや横浜FCへと傾く。相手のクロスやFKをなんとかしのぎながら、1点を追うかたちで試合を折り返した。
 
風上の前半にビハインドになってしまい、風下に回る後半の行方が気になるところ。だが、前半にピッチレベルで撮影していたカメラマンの証言によると、フラッグが真横になびいていたほどには風の影響はなかったのではないかという話だった。そうして迎えた後半は、立ち上がりから攻め合いとなる。

 

カウンターのカウンター。アユが仕留めた!

53分には野村のFKに合わせた安藤智哉のヘディングシュートが鋭くゴールへと向かったが、市川に阻まれた。54分には右の山根永遠、左の福森から立て続けにクロスを入れられる。吉田のクロスが跳ね返され、池田のシュートは市川に防がれる。
 
そんな59分、片野坂監督は野村を髙橋大悟にチェンジした。ここ最近の野村は相手に厳しくマークされながら個人技で強度を醸しており、今日は今季初先発で野村とシャドーを組んだ池田が自由に動いて相手を翻弄していた。そんな野村がここで髙橋大に代わったことで、大分の攻撃のテイストに変化が生まれ、それが5分後の同点弾へと繋がることになる。
 
63分、髙橋大の右CKのクリアボールを拾って福森がカウンターを発動。中川が食い下がるもこぼれ球をカプリーニに回収されそうになり、そこへ弓場将輝が突撃してマイボールにした。弓場のパスを受けた吉田のスルーパスに髙橋大が抜け出し、ボールウォッチャーになっていた横浜FCのディフェンス陣の背後へと折り返すと、走り込んでいた鮎川が仕留める。そして気がつけば後半、なんと風向きが逆になっていた。

 

最後は相手のパワーをしのいで勝点1

66分、四方田修平監督は中野嘉大を村田透馬に、カプリーニをジョアン・パウロに2枚替え。さらに72分には小川を伊藤翔に、髙橋利を櫻川ソロモンにチェンジして、前線のパワーを増した。77分には福森のクロスに合わせた伊藤のヘディングシュートがファーに流れる。
 
横浜FCの強度と高さのある前線への配球に対し、78分には片野坂監督も2枚替え。鮎川と中川を長沢駿と屋敷優成に代え、屋敷が1トップ、長沢が左シャドー、池田がボランチという布陣とした。81分には横浜FCが、井上を三田啓貴に交代。よりシンプルに前線のパワーを使い、大分を押し込んできた。86分にはジョアン・パウロのサイドチェンジを村田が折り返し、飛び込んだ櫻川にわずかに合わずに命拾いのシーンも。
 
大分は屋敷1枚のみを攻め残らせ、10人でゴール前を固める。87分には香川をデルランに、疲労の見える弓場を小酒井新大に代えて跳ね返しと前線への配球を狙った。屋敷がしつこくチェイシングし、村田の仕掛けには吉田が粘り強く対応。中では安藤たちが体を張り続けた。90分、吉田が村田からボールを奪って髙橋大が前線に送り、抜け出そうとした屋敷がンドカ・ボニフェイスに倒されたときにはベンチのメンバーとスタッフ全員が飛び出して激しく抗議する一場面もあった。
 
アディショナルタイム8分も攻められ続けたが、相手の精度不足にも助けられつつ、集中して守った大分が、横浜FCの連勝を5でストップ。終わってみれば横浜FCのシュート数はわずか3で、大分は首位チームを相手にアウェイで勝点1を手にした。なにより守備の修正からいい攻撃にも繋がり、試合内容が格段に改善されたことが今後への希望となる。残り6試合。他力に頼らず自分たちで勝点を積み続けていきたい。

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