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試合レポート

歴然の力量差に、垣間見えた足りなさ。いずれも収穫に変え、復帰組を加えて今後へ

 

シーズン序盤の不調から脱出して現在急ピッチで勝点を積みながら浮上している京都との4回戦。アグレッシブなスタイルを標榜し勢いに乗るJ1チームの強度は、やはり高かった。

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長期離脱メンバーが戦線復帰

ショッキングな逆転負けを喫したJ2第27節・アウェイ愛媛戦から中2日。さらにこの試合のあとにはまた中2日で第28節・アウェイ岡山戦が控えているとあり、本来ならばスタメン全員をターンオーバーしたかったであろうレベルの日程の中、片野坂知宏監督は愛媛戦から9人を入れ替えてスタートした。
 
GKはムン・キョンゴン。新井栄聡が町田へと移籍した後、濵田太郎が離脱中のため現在は実質、西川幸之介との2人体制なのだが、その西川が試合前日のトレーニングで負傷したため、ベンチには急遽、U-18の守護神・平野稜太が控えることになった。
 
フォーメーションは3-5-2で、3バックのセンターには4月に右膝外側半月板を損傷し軟骨も痛めていた羽田健人が復帰。ベンチにはプレシーズンに負傷した池田廉と屋敷優成が入り、負傷していた香川勇気も顔を並べた。
 
京都も直近のJ1第27節・C大阪戦から中3日。リーグ戦と同じ4-3-3で、アンカーの福岡慎平以外の10人を入れ替えた。ただ、ベンチにはC大阪戦でハットトリックしたラファエル・エリアスをはじめ原大智とマルコ・トゥーリオの強力な攻撃陣を控えさせた。

 

徐々にゲーム強度に慣れてはきたが…

立ち上がりから強度高く前への矢印を醸してきた京都。いきなりGKのフィードに抜け出したムリロ・コスタにシュートを許し、ムンが対応することになった。勢いを持ってゴールへと向かってくる京都に対し、大分は「同じ土俵に乗ってオープンな展開になるとスペースを与えて危険」という方針から、自陣でブロックを構えて粘り強く対応する。
 
9分にタックルした小酒井新大がイエローカードを提示されるなど、最初のうちはファウルで止めるシーンが多くなった。だが、11分、12分、15分と立て続けに迎えたFKのピンチやその後のCKやクロスを相手の精度不足にも助けられながら粘り強くしのぐと、大分の選手たちも徐々に慣れてきた様子で、スペースを突いてボールを前に運ぶ場面を作りはじめた。
 
22分には木許太賀が伊佐耕平に当てて再び受け、浮き球を送るがそこに味方はおらず。試合後に木許に確認したところによると「伊佐くんが走ってきているように見えたので出したが伊佐くんは止まっていた」とのことだった。25分には伊佐がスルーパスに抜け出して相手に対応されたこぼれ球を木許がグラウンダークロス。相手に阻まれたが、この伊佐と木許のコンビネーションは良好に見えた。

 

PKのチャンス生かせず、相手ペースへ

27分、エリア内に得意のドリブルで攻め込んだ木許が倒されてPKを獲得する。劣勢の中、生え抜きルーキーのゲットした先制のチャンスは実に大きかった。だが、キッカーを務めたデルランの左足から放たれた弾道は大きく枠を外れ、大分は千載一遇の好機を逃すことになる。
 
31分には自陣でボールを奪われ安齋悠人にシュートを許すが枠の外。40分にはムリロのFKのこぼれ球をムンが処理。41分には弓場将輝が中盤でボールを収めて自ら持ち上がりミドルで狙ったが枠の上。前半終了間際には京都が複数のセットプレーのチャンスを得たが、いずれもゴールには繋がらずに試合はスコアレスで折り返した。
 
片野坂監督は怪我明けの羽田を安藤智哉に代えて後半をスタートする。47分にはデルランがボールを奪ってクロスを供給したところから、最後は小酒井が左足を振り抜いて枠を捉えきれず。
 
時間経過とともに次第に京都のペースへと傾れていった要因は、やはり個々の強度のもたらす地力の差だったと思われる。セカンドボールを拾われ、前を向かれ、それに対して体を寄せても、わずかに相手の精度を削るのが精一杯といった様相。逆に大分は、上手くスペースを突いて相手陣にまでは前進できても、アタッキングサードでは安定感をもって京都守備陣に対応され、シュートに至ることが出来ない。

 

交代でさらに強度を高める京都

56分、ムリロの右CKから松田佳大にヘディングシュートを決められて失点。その2分後にも長いスルーパスを通されてムリロのシュートを浴びるが、これはムンが処理した。
 
宇津元伸弥のクロスやCKも相手に対応される中、65分には曹貴裁監督が福岡を平戸太貴に交代。さらに69分には安齋とムリロを原とマルコにチェンジした。同時に片野坂監督も、伊佐と弓場に代えて佐藤丈晟と池田を投入。宇津元が最前線へと移り佐藤が左WBに入った。
 
球際で佐藤が個人技を見せたり池田が気の利いた球捌きで相手をかわしたりという場面もあったが、試合の大勢は個々の強度で上回る京都の優勢で変わらず。78分にはロングフィードに抜け出した原に対応した茂平が得点機阻止として一発退場に。片野坂監督はデルランに代えて香川を入れ、最終ラインの右から松尾、安藤、香川、佐藤の4-3-2の陣形を取って対応した。
 
81分には2失点目。ターンした川﨑に運ばれ原を経由して平賀大空にシュートを打たれ、それがポストに弾かれたこぼれ球を川﨑に押し込まれる。

 

J1との対戦経験を今後にどう生かすか

81分、片野坂監督は木許に代えて屋敷を投入。屋敷もようやく左膝前十字靭帯損傷からの復帰が叶った。83分には曹監督が川﨑と佐藤響を宮本優太と福田心之助に代えて守備を固める。
 
アディショナルタイムは6分。最後は安藤やムンも前線に上がってのパワープレーで一矢報いようと戦ったが、2次・3次攻撃も相手に跳ね返され、得点はついに奪えず。力の差を見せつけられて、試合は0-2で終了。同時に今年の天皇杯チャレンジも終わった。
 
試合後の片野坂監督からはたくさんの反省の言葉と選手へのメッセージが聞かれた。若手選手からはこの試合で感じた手応えと課題が、長期離脱より復帰した選手からはひとまず戦線復帰への安堵が語られた。これらをすべて収穫へと変えて、自身とチームの今後に繋げていくことが肝要だ。そして3日後にはリーグ次節の岡山戦。また強度の高い相手とのタフなゲームがやってくる。