中断期間の積み上げをほとんど体現できず。覇気欠くプレーで0-2敗戦
新加入選手のフィット、負傷者の復帰、戦術の再確認とポジティブな材料を重ねて臨んだ中断明け初戦。だが、実際にはそんな期待感の砕け散るような内容と結果になってしまった。
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試合序盤には意図も垣間見えたが…
新加入選手や負傷からの復帰組を組み込んで中断期間に落とし込んだのは5-3-2フォーメーションでの守備と、そこから転じての攻撃。特に守備時の定位置からどのようにボールを運んで前に出ていくか、攻撃時にどれだけ前線に厚みをもたらせるかという点に重点を置いて、トレーニングは進められた。
にも関わらず、維新みらいふスタジアムで繰り広げられたのは、それとは程遠いゲーム。組織は一体感を欠き、運動量やアグレッシブさが不足し、攻守両面で選手間の関わりが乏しかった。当然、強度と勢いあふれ前への矢印を明確に出してくる山口に主導権を明け渡すことになる。
それでも試合序盤には、やろうとしていることが垣間見える時間帯もあった。16分には左サイドで徐々に前進し、裏に抜けた茂平からの折り返しに走り込んだペレイラがシュートしてミートできず。そのクリアボールを安藤智哉が拾って再び攻撃へと転じ、保田堅心が叩いてペレイラのクロスから長沢駿がヘディングシュート。23分には吉田真那斗が中盤でボールを奪い、髙橋大悟とのコンビネーションから吉田がクロス。いずれも関に阻まれたが、スピード不足の感こそあったものの意図した攻撃は出来ていた。
33分には吉田のロングスローをニアの安藤がバックヘッドで中央へ送り保田堅心が飛び込んだが、ボールはクロスバーに弾かれる。そんな決定機もありつつ、ボールの動かしの判断が遅く、各駅停車でリズミカルなテンポが出ない。髙橋が斜めに走って起点を作ろうとするなど随所にアイデアも見えたが、連係のスピード感を欠くためにことごとく相手に対応されてしまう。
あっさり喫した失点が重くのしかかる
それでも、山口の力強い攻撃にも粘り強く対応しながら、徐々にこのやり方でペースを掴んでいければ…という前半の立ち上がりだった。だが、38分、ひとつのミスから先制点を奪われる。ヘナンのクサビを左サイドに開いてフリーで立っていた相田勇樹がワンタッチで前線に送ったとき、対応しようとしたペレイラが軽い守備から野寄和哉に入れ替わられ、運ばれてグラウンダークロス。この日は2トップの一角で出場していた河野孝汰に沈められ、あっさりと失点した。
ここからチームはさらに山口の勢いを受けるようになる。野寄のシュートが枠上に逸れ、吉岡雅和のミドルシュートにはムン・キョンゴンがキャッチ。前半アディショナルタイムにはまた山口の左サイドのコンビネーションを断ち切ることが出来ず、田邉光平にクロスを許す。逆サイドからスライドしていた茂平がスライディングして河野へは通さなかったが、マークにつく相手に上回られスピードで置いていかれる場面が、前半に何度も見られた。
中断期間に準備してきたことが何故ここまで体現できなかったのか。プレーヤーにとって非常にやりづらい環境だったことは否めない。スタンドから見てもわかるくらいボコボコに荒れたピッチには水が撒かれておらず意図通りにボールが走らない。加えてこの日の山口市は、その盆地ならではの蒸し暑さに慣れたはずの地元民までもが「今日の暑さはヤバい」と口にするほどの蒸し暑さ。互いに同じ条件とは言えど、日常的にここに暮らし、2試合に1回の割合でこの環境でプレーしているホームチームのほうが、多少はアドバンテージを握っていたとも言える。「こういうことはあまり言いたくないのだが、みんな暑さで足が動かなくなった。そんなことはあってはならない。でも、それが事実」と、試合後に吉田は俯いた。
一体となって戦えなかったことが何よりの課題
そういうタフな環境の中でもプレー強度やスピード、判断力を、少しでも落とさないようにするのがプロの仕事でもある。特にJ2やJ3は全国各地のさまざまな敵地で試合をする過酷なリーグだ。そのリーグでプレーしている以上、そのいかなる環境にも出来るだけ適応していくための気配りを、日常生活から意識していなくてはならない。さまざまな環境条件を「言い訳」として安易に切り捨てるのも乱暴ではあるが、プレーヤーは個々、自らの価値を高めるためにも、自身の強度を高める必要がある。
そして、上手くボールを前進させることが出来ないのであれば、ある程度割り切って早めに長いボールを前線へと送り、セカンドボールを拾って攻める選択肢を取ることも必要だったのではないか。早くボールを入れてほしい前線と、上手く動かして運びたい後ろの選手たちの意識がバラバラになった前半途中で、それをまとめることが、この試合でのチームには出来なかった。本来それを担うべき中盤は、不用意なロストからのカウンターに備えるためか前に出ていくことが出来ない。最終ラインは出しどころに迷う中で、奥行きを見ることが出来ていたか。
山口はもとより4-4-2の基本フォーメーションから攻撃時には左上がりのスライドで3バックに可変する戦い方を採用しており、この日も前線と2列目の配置は変わりながらそれを採用していたが、中断前とは異なり、逆の右サイドからも前貴之が積極的に攻撃に関わるようになっていた。茂の動きなどを見ているかぎり、それもスカウティング済みだったのではないかとも思われたが、いわゆる「上手く行かないときにどうするか」の部分で組織がバラバラになっていたため、あらゆる準備がほとんど意味をなさなくなっていた前半だった。
後半の修正も決定機創出には至らず
片野坂知宏監督は後半、陣形を3-4-2-1に変更して前線の守備も変更。立ち上がりから勢いある山口のシュートを立て続けに浴びたがいずれも枠上に逸れ、こちらも反撃を試みる。57分には志垣良監督が2枚替え。野寄と酒井宣福を若月大和と山本駿亮に代え、河野をサイドに移して若月と山本の2トップとする。片野坂監督も64分に茂と保田を鮎川駿と野村直輝に代え、野嶽惇也が左WB、鮎川がシャドー、野村と中川のダブルボランチの形を取った。この修正により大分の攻撃時間がやや増えるが、決定的な場面を生み出すにはなかなか至らない。
山口は75分、吉岡に代えて新加入の奥山洋平。80分、その奥山に藤原優大と野村が対応して与えた新保海鈴の右CKから、ヘナンに頭で合わせられて点差を広げられた。
その後、両ベンチが同時に動く。大分は髙橋と野嶽に代えて松尾勇佑と小酒井新大。吉田を左に移して松尾が右WBに入り、野村がシャドーに上がって小酒井と中川のダブルボランチとした。山口は相田と河野をキム・ボムヨンと佐藤謙介に交代。5バックに変更して枚数を合わせ守備の安定感を増す。大分は86分に長沢をキム・ヒョンウに代えて一発に期待し、終了間際には安藤も上がってパワープレーで意地を見せようとしたが、得点の生まれる匂いはせず、試合は0-2のまま終了した。
今季2度目の連敗も痛いが、何よりも中断期間に整えたものがほとんど体現できなかったことがショッキングだった。前への矢印を強調したトレーニングを重ねたにもかかわらず、シュートは3本に終わっている。大分戦での初勝利、入場者数1万人超えで盛り上がるホームチームを前に、チームは屈辱を噛み締めた。過酷な蒸し暑さの中、約2000人とカウントされた大分のサポーターたちの熱に、報いることが出来なかった。
ここで崩れてしまえば残留争いの色合いは濃くなる。立て直すために何をすべきか。チームとしても、選手個々としても、厳しく問われる局面だ。