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試合レポート

小さなミスの積み重ねが地力の差を露呈。リベンジならず0-2で敗戦

 

手堅い入りからセットプレーも含めチャンスを築いたが、ミスから相手のファーストシュートで失点。連戦中の準備不足も響き、誓っていた前回対戦のリベンジは遂げられなかった。

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手堅い入りで清水の威力を抑える

清水戦に向けてのトレーニング中から片野坂知宏監督が「清水は立ち上がりに勢いを出してくる。その勢いにのまれずに試合の入りを乗り切れば自分たちに勝機が見えてくる」と話していたとおり、チームは試合開始直後から5-3-2のミドルブロックを組んで、長沢駿と渡邉新太の2トップもパスコースを切りながら清水の攻撃の芽を摘んだ。流動的な清水の攻撃の中で特に左に流れがちな乾貴士に対しては、中川寛斗のプレスバックも含め吉田真那斗やペレイラが粘り強く対応する。
 
その中でボールを奪うと攻撃へと転じ、試合開始からしばらくは複数のチャンスも築いた。清水の守備もコンパクトで集中していたが、ファウルを受けると10分には素早いリスタートから宇津元伸弥が抜け出して自らシュート。これは相手のブロックに遭った。17分には小酒井新大が倒されて相手陣中央で得たFKを野村直輝が安藤智哉に合わせ、相手にクリアされる。それで得た左CKを宇津元が蹴り、ファーサイドで安藤が合わせたが枠には飛ばせず。22分には渡邉が収めてすかさず長沢がシュートしたが権田修一に押さえられた。26分にもペレイラのフィードを長沢が落として渡邉が相手を背負ったセカンドボールを長沢がシュート。これも相手に当たって枠の左へと逸れた。

 

相手のファーストシュートで失点

清水の技術や戦術浸透の質が高いことはそれまでの展開でも見えていたが、それでもそこまでは大分が粘り強くボールを握ることで清水をシュート0本に抑えていた。先制できれば理想的だが、このまま試合の折り返し地点まで行ければ…と思いはじめていた矢先に、ミスが連鎖して失点した。
 
山原怜音からカルリーニョスへの斜めのパスにはペレイラが対応したのだが、そのこぼれ球を拾った小酒井のパスが正面の宮本航汰に渡り、北川航也へ。北川にボールを託されたルーカス・ブラガは対応した宇津元を個人技で剥がして右足シュート。ミスからのショートカウンターを食い止めきれず、清水に許した初めてのシュートで先制点を奪われる。
 
40分には左サイドを攻略し、渡邉の落としを野村がワンタッチで前へ送ったところへ走り込んだ宇津元が狙ったが枠の右へ。
 
41分には吉田のムン・キョンゴンへのバックパスをカットされてピンチに陥るが、乾のシュートは安藤が体を投げ出して阻む。42分、押し込まれた状態からセカンドボールを乾にシュートされ枠の右。44分には相手を押し込んだところからロングカウンターを受け、最後は小酒井が対応してCKに逃げた。戦況は急速に、大分とのミスマッチを突いて上回る清水のペースへと傾いていった。

 

反撃を期しての4バック変更だったが…

ミスの連鎖から失点し、それまでの流れを失ってしまったが、まだ1点差。大分は渡邉を鮎川峻、宇津元を茂平に代えて後半をスタートする。52分には茂が仕掛けてクロスを送ったが権田に掻き出された。
 
反撃を期した時間帯だったが、その中で小酒井が負傷。58分、保田堅心との交代を余儀なくされる。片野坂監督はこのタイミングでシステムを4バックへと変更した。最終ラインは右から吉田、安藤、藤原優大、茂。ペレイラと野村のダブルボランチに右SHが保田、左SHに中川。前線に長沢と鮎川が並んだ。
 
この変更に清水がまだ対応しきれていなかった62分、野村の縦パスをペレイラと中川が繋ぎ長沢が左足をコンパクトに振り抜いたが、権田の手に弾かれて弾道はわずかに枠の左。
 
66分には乾のパスに抜け出したカルリーニョス・ジュニオにシュートまで持ち込まれるが、カバーに入った吉田が対応。70分には中川が鮎川へと絶妙なスルーパスを送るも、一足早く高木践に掻き出された。71分には濡れたピッチに足を滑らせた藤原がルーカス・ブラガにボールを奪われるピンチ。持ち上がったルーカスは乾へと横パスを出したが、乾のシュートにはムンが体を張ってゴールを割らせなかった。

 

伊佐のヘディングシュートも実らず

73分、清水はカルリーニョス・ジュニオとルーカス・ブラガを白崎凌兵と矢島慎也にチェンジ。同時に大分も長沢と中川を伊佐耕平と松尾勇佑に2枚替えした。大分は選手の配置を変え、松尾が右SHで保田がボランチ、野村が左SHに。
 
78分、安藤のパスを受けた吉田が早めにクロスを送って右CKを獲得。保田のキックに合わせて伊佐が高い打点からヘディングシュートを放ったが、権田にパンチングでクリアされる。そこから2次攻撃も試みたが、これも実らなかった。
 
そこから大分はさらに選手の配置を変える。ペレイラと保田のダブルボランチはこの展開では生きず、清水がコンパクトなブロックを構える中、大分はボールを受けて動かす形が見えてこないため、片野坂監督は再び野村とペレイラのダブルボランチに変更。保田はトップ下に入り、鮎川が左SHに移った。
 
83分には清水が山原と北川をベンチに下げ、吉田豊と北爪健吾を投入して5バックで守備を固める。これにより大分の追撃は難しさを増した。ボールを握る清水に対し、高い位置で奪おうと前がかりになっていた89分、背後を突かれて乾にカウンターで運ばれ、北爪のクロスを一度は藤原が掻き出すも、もう一度北爪から配球されて最後は乾がトドメ。試合はこれで決した。清水は90+2分に乾を新加入のアブドゥル・アジズ・ヤクブに代えて時間を使い切る。清水はこの勝利でアウェイ連敗記録を4でストップし、リーグ首位へと躍り出た。

 

中断期間にはやるべきこと満載

個々の技術の高さに力量差があることを踏まえ、手堅く入った立ち上がりは成功していたが、そういう相手は小さなミスを見逃してくれない。ひとつのミスが次々にミスの連鎖を生み、先制点を奪われたところから大分のプランは崩れてしまった。
 
ここ数試合、勝利した試合でも、立ち上がりには主導権を握りながら前半途中から相手のペースになってしまうことが続いている。長沢は試合後に「相手が慣れてきて勢いを持ったときや、こちらがミスして失ったりしたときに、やはり相手を勢いに乗らせてしまう。僕が感じる部分はそういうもったいないミス。こちらが勝手に焦ってミスして奪われて詰められるということが多かったなと思う。あとは相手がロングボールを蹴ってきたときにセカンドボールを拾えず相手に拾われたときなどに、そういうところで勢いを失ってしまっていた」と振り返った。
 
小酒井が負傷退場したあと4バックへとシステム変更したことも、この試合では裏目に出た。上手く攻めてチャンスを作った場面もあったが、単発な感に終始する。頻繁な選手の配置転換からも、十分な準備が出来ていない印象を受けた。おそらく急な体調不良者の続出も影響したものと思われるが、ここ最近の3-5-2がハマっていただけに、選手たちも急な切り替えに反応できなかったようだ。
 
中断期間には戦い方を整理し、負傷からの復帰組をフィットさせ、戦術の幅も広げて攻撃のチャンスを増やしたいと試合後の指揮官は無念さと反省の入り混じった表情で語った。ここまで24試合を終えて19得点という少なさ。個々の技術と戦術、両面の課題克服が急務だ。

プレゼンターは高山薫さんでした