3得点1失点の90分で決着。状況を見極め一体感を持って前年度王者を撃破
前年度王者の川崎Fに対し共通認識を持って距離感よく戦えたことで、後半にぐっと流れを引き寄せた。負傷からの復帰組の活躍も、リーグ戦に繋がる大きな収穫だ。
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攻めまくりの堅心、前半にシュート3本
直近のリーグいわき戦から中3日で、先発8人を入れ替えて臨んだ大分。川崎Fも直近のリーグ磐田戦から9人を刷新してスタートした。大分は負傷明けの茂平と野嶽惇也が両WBに並ぶ3-5-2。川崎Fは4-2-3-1でのマッチアップで、ゴール前には古巣戦となる上福元直人が立った。
立ち上がりからボールを握る川崎Fは積極的にクサビを打ち込んできたが、大分守備陣は落ち着いてそれに対応。逆にボールを奪うと相手の背後を使ってリズミカルにボールを運んで前進し、いくつも好機を築いた。
9分、デルランからのパスをセンターサークル付近で受けた保田堅心が茂に展開し、茂のスルーパスに自ら抜け出すが、飛び出してきた上福元に対応される。15分には松岡颯人のプレッシングからボールを奪い、カウンターを発動。最後は保田がシュートしたがわずかに枠の右へ。保田は20分にも持ち上がって右足を振り、今度は枠の左へ逸れたが、インテリオールに配置された保田のストロングポイントが存分に生き、チーム全体のゴールへの矢印が整っていた印象だった。
ブロックを構える守備に切り替えて対応
その後は川崎Fも落ち着きを取り戻す。状況を見ながらサイドに張ったり内側を取ったりフリーで動いたりと、守る側としては厄介な攻撃を持ち味とする川崎F。その巧みなボールの動かしに押し下げられる時間帯が増えてきたが、そうなると大分は割り切って5枚のブロックを構え、ゴール前ではしっかり相手をマークして自由を与えない。守備のやり方はこの日、3バックのセンターでディフェンスリーダーを務めた安藤智哉が、戦況を見ながら判断して切り替えたという。前半アディショナルタイムに右CKに合わせた大南拓磨のヘディングシュートも枠の左へと逸れ、試合はスコアレスで折り返した。
大分はハーフタイムに、茂を松尾勇佑、野嶽を佐藤丈晟、弓場将輝を小酒井新大に交代。負傷明けの茂、野嶽、松尾は当初から45分で交代する予定だったようだ。弓場は前半の接触プレーで傷んだ様子を見せていた。一方の川崎Fも、前半途中で脳震盪疑いとなった田邉秀斗を佐々木旭に交代して後半をスタートする。
復帰直後の松尾弾、迷いなき堅心弾
後半の入りに積極性を増した川崎Fは勢いを醸してゴールに迫り、47分には大南のクサビを家長昭博が受けて右に展開し、瀬川祐輔のクロスから山田新がシュートするがムン・キョンゴンがニアで防いだ。54分には大分の決定機。小酒井が運んで佐藤のクロスから伊佐耕平がシュートして、わずかに枠の右に逸れる。
川崎Fは58分、遠野大弥を橘田健人に、山内日向汰をマルシーニョに代えてシステムを4-3-3へと変更する。より前に人数をかける意図だったと思われるが、その直後の61分、大分が先制に成功した。ペレイラのフィードを伊佐がスペースに落とし、収めた鮎川峻が時間を作って小酒井へ。小酒井がワンタッチでスペースの松尾へと出すと、松尾は右足で鋭いクロス。これが相手のオウンゴールを誘うことになる。
大分のゴール裏が先制の興奮さめやらず沸き上がっている63分、追加点。ペレイラから松尾と繋いで伊佐がスペースに抜け出した保田へと託すと、「ファーストタッチが決まった」という保田は迷いなくゴールを目指し、自らネットを揺らした。
躍動するペレが獲得したPKでアユが3点目
川崎Fは68分、山田をエリソン、ゼ・ヒカルドを瀬古樹、山本悠樹を小林悠に3枚替えして追撃態勢を取る。大分は71分に疲労した松岡を藤原優大に代え、藤原を右CBに配置するとペレイラと小酒井のダブルボランチに。鮎川を最前線に置いた5-4-1のブロックで守備を固めて2点のリードを守りながらカウンターを狙う態勢へとシフトした。
伊佐が中盤に落ちてボールを出し入れしながら好機を窺っていた77分、佐藤とのワンツーで攻め上がったデルランが前線へ浮き球を送ると、鮎川がそれを収めて逆サイドのスペースへとマイナスの折り返し。そこに猛然と走り込んできたペレイラがマルシーニョにエリア内で倒され、PKを獲得した。78分、ペナルティーマークにボールをセットしたのは鮎川。上福元もコースは読んでいたが、鮎川は落ち着いて沈め、大分が3点目を挙げた。79分、大分は伊佐に代えて渡邉新太を投入する。
体を張る大分守備陣をこじ開けようと追撃する川崎Fは、89分にエリソンがセカンドボールを拾って個人技で持ち込み1点を返すが、反撃はここまで。アディショナルタイム5分には上福元もパワープレーに参加したがゴールは割れず、大分が3-1で4回戦進出を決めた。
リーグ戦に繋げたい天皇杯勝利
チームに勢いをもたらす、前年度王者を下しての勝ち上がり。守備のやり方がよく統率され、選手同士の距離感や攻撃への関わり方などが大きく改善されてのゲームだった。
さらに、流れを引き寄せる先制弾をものにした松尾をはじめ、茂、野嶽とサイドの面々が負傷から復帰してきたこと、佐藤や松岡、デルランらが戦術へのフィットを進めていること、保田がこれまでより一列前のポジションで輝きを放っていることなどポジティブな要素が多い中で、特にプレシーズンに負傷した鮎川のほぼ完全復活は、大きな力となる。
中3日で迎えるJ2第24節の相手は清水。アウェイでの前回対戦では濵田太郎のビッグセーブ連発に助けられてなんとか2失点に抑えたものの、終始相手に圧倒され続けた内容だった。そこからの成長を示し、巻き返しへの手応えを得て中断期間を迎えたい。