上り調子の栃木に策を凝らして挑むもリベンジならず。現状を踏まえ何を求めていくのか
駒不足を戦術的工夫でカバーしようとしたが不発だった。前回対戦のリベンジを期した試合は、0-2で敗戦。この現状をどう乗り切っていくか。
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可変式3バックでミラーゲームを仕掛けるが…
メンバー的には4バックも可能な編成だったが、蓋を開けてみるとシステムは3-4-2-1。栃木に対してミラーゲームを挑んだ形だった。
基本フォーメーションから守備では両WBが下がって5バックとなり、攻撃ではシャドーの伊佐耕平が渡邉新太と2トップ、ボランチの1枚が落ちてアンカーとなる形。守備では相手に対するマークをはっきりさせ、攻撃では相手とズレを作って前進する狙いのようだった。
ただ、相手の1トップ宮崎鴻にボールを集められたり南野 遥海と大島康樹の2シャドーのコンビネーションに対応したりで保田堅心と小酒井新大が押し下げられた。野村が落ちて組み立てに参加するようになるとボールは回るようになったが、全体に重心が低く、上手く前進できない。攻撃時には伊佐が流れて右サイドに人数をかけ、そこから崩していくイメージを持っていたようだったが、それもあまり機能せず、人数の少ない左サイドは相手と1対1で対応されて連係することが出来ずにいた。
それでもチャンスは作れていた。13分には野村の右CKから保田が狙って枠の上。26分には伊佐が起点となり有働夢叶の速いクロスから伊佐がシュートしてラファエルにブロックされる。37分には宇津元伸弥が仕掛けてシュートし丹野研太に阻まれた。44分には野村のFKにペレイラが頭で合わせて枠の左。
栃木のほうも大分の立ち位置を見て修正を施しながら攻めてきた。23分には大島のスルーパスに抜け出した南野のシュートをペレイラがブロック。35分には森俊貴のFKに宮崎が頭で合わせて枠の上。40分には南野がFKを直接狙い、落ちた弾道は枠を捉えていたが濵田太郎がファインセーブで掻き出した。
後半は修正するも一瞬の隙から先制を許す
後半もメンバーはそのままだったが、片野坂知宏監督は伊佐と渡邉の位置を入れ替え、右偏重だったバランスを整えて修正した。これにより伊佐が背後を突くシーンが増える。
後半の入りはよく、50分には宇津元のFKの流れから渡邉のシュートをゴール前で収めたペレイラが狙ったが、丹野に阻まれた。失点はその直後。52分に宮崎に起点を作られ、展開された川名連介のカットインからのシュートをゴール左隅に流し込まれる。川名の対応にあたっていた3人ともが、寄せが甘くなっていた。
64分には自陣でボールを持った野村が大きく前線へと浮き球を送り、宇津元が抜け出してビッグチャンス。だが、丹野のタイミングのいい飛び出しに阻まれ、得点することは出来なかった。
65分、片野坂監督はU-19代表帰りで疲労の見える保田をベンチに下げ、中川寛斗を投入して基本フォーメーションを4-4-2に変更。ただ、守備時には左肩下がりの3バックに可変して相手とのミラー状態は継続した。中川が中央に入ったことでボールが持てるようになり、連係して前進できる場面が増えてきた。
72分には伊佐の守備で奪ったボールを野村が縦に送り、伊佐、渡邉と繋いで有働がグラウンダークロス。宇津元が詰めたが体を張った栃木守備陣に阻まれた。73分には奥田晃也のカウンターで大ピンチ。だが、シュートはわずかに枠の左に逸れ命拾いする。
選手交代とシステム変更も劇的効果は得られず
74分、片野坂監督は渡邉を長沢駿に交代。クロスからの得点を期した。77分には小林伸二監督が2枚替え。背後を取られがちだったラファエルを藤谷匠に代えて守備を修正するとともに、南野を小堀空に代えて運動量を維持する。
79分には片野坂監督が3枚替え。香川勇気を佐藤丈晟、伊佐をキム・ヒョンウ、宇津元を木許太賀に代えて、可変しない4-4-2システムに変更すると攻撃色を増して1点を追った。85分には小林監督が宮崎に代えてイスマイラ。
選手交代で試合の流れを引き寄せ合いながら、試合はいよいよ終盤へ。ビハインドの大分は1点リードして構えた相手を攻略にかかるが、86分、長沢が起点を作って木許が持ち上がったシーンも、パスは相手に引っかかり不発。89分には中川のパスを受けた有働のクロスに安藤智哉が飛び込み、そのこぼれ球を長沢が落として野村がシュートしたが相手のブロックに遭う。
なんとか追いつきたい大分はペレイラを前線に上げてパワープレーに出るが、逆に90+1分、守備の薄くなったところを突かれた。有働のスローインを長沢がトラップしたところを相手に狙われ、奥田に運ばれて小堀にダメ押しの2点目を許す。90+3分、小林監督は森を黒﨑隼人に代えて時間を使う。試合終了直前まで攻め続ける大分は、最後に安藤がこぼれ球からミドルで狙うも枠の左。ホイッスルは無情に鳴り響き、大分は0-2で敗れる結果となった。
この一試合で得たものは何だったのか
1-2で敗れた第6節のリベンジを期しての今節だったが、それは叶わず。逆にその第6節以来、勝利のなかった栃木に14戦ぶりの白星を献上し、ダブルを達成されるという残念な結果となった。
小林監督体制へと舵を切って以来、栃木は内容を上向けており、アグレッシブな組織的守備とボールポゼッションからの崩しのクオリティーを一試合ごとに高めていた。それを警戒し、またSBのメンバーたちの負傷や弓場将輝と藤原優大を欠いた台所事情の中で、片野坂監督たちコーチ陣は工夫を凝らした戦い方で挑んだ。狙いのハマらなかった前半のうちからチャンスを築き、最近にしては多い12本のシュートを放ったが得点は奪えずに終了。
連戦中、中3日で初めての3バックシステム、しかも可変式を落とし込み、選手たちはそれをよく理解して動いていたようには見えたが、それが上手く行かなかったときに修正できる選手とそうでない選手とのギャップが、ピッチ上では生じていたようだった。野村や香川が臨機応変に対応しようとする中で、保田には早い時間帯から疲労が見えた。中川投入後には改善されたが、リードして自陣を固める相手は堅い。佐藤や木許、キムらフレッシュな若手の突破力に期待したが、こちらはプレーの精度を欠いた。
この一戦で何かを収穫できたかと問えば難しい。怪我人の状況などによっては今後も3バックシステムを併用することになるのかもしれないが、それならその練度を高めることは急務となる。工夫を凝らした戦いの着眼点は面白かったが、栃木をリスペクトし過ぎた嫌いもある。小林監督は試合後、「相手がさまざまに立ち位置を変えてくる中で、選手たちがよく対応した」と栃木のメンバーをねぎらった。相手を見て戦い方を変えるようになれることが、小林監督が栃木に就任しての立て直しの第一歩だったようだ。それはベースがしっかりしていてこそ変化をつけられるものだ。
いま大分は負傷者が多く、一試合ごとにメンバーや配置が変わっており積み上げが難しい状況だ。戦術的工夫で駒不足をカバーすることが小手先感に繋がってしまうことが最も危険なことに思える。とはいえ無い袖は振れず、このチームがどうやってここを乗り越えていくかが当面の注目ポイントとなるだろう。