先発6人を入れ替え、個々が特長を生かす。粘り強くしのいで0-0で+1
戦術浸透がぐっと進んだ手応えを、甲府戦とは異なるメンバーも示してくれた。スコアレスドローではあったが、前指揮官の率いる好調な強豪とのダービーは、白熱の好ゲームとなった。
試合情報はこちら
先発6人を入れ替え、個々の特長を踏まえた戦いぶり
甲府戦を終えて翌日深夜に帰りつき、その移動も含めて中2日での今節。やはり疲労の抜けないメンバーが多く、片野坂知宏監督は先発6人を入れ替えて、この試合に臨んだ。頂点に伊佐耕平、トップ下に梅崎司。右SHの中川寛斗と縦関係を組んだのは有働夢叶。ペレイラが安藤智哉と2CBを、保田堅心が小酒井新大とダブルボランチを組む布陣。
ポゼッション志向の長崎に対し、伊佐、梅崎、中川の3人が、それぞれに特長を生かしたタスクを担って前線から激しくプレッシング。攻撃時にはまたそれぞれの特長を生かして立ち位置を取り、4-4のブロックを構える相手の間を使ってリズミカルにボールを運んだ。
キックオフ直後には笠柳翼の突破から加藤大のシュートを濵田太郎が掻き出してしのぐ場面も作られたが、その後は大分もチャンスを量産。4分にはセカンドボールを拾った伊佐が攻め上がり、ゴール前で中川が収めようとするが秋野央樹のプレスバックに阻まれた。10分には自陣でのポゼッションから野嶽惇也が前線に送ったボールを伊佐が収め、体の強さも見せながらシュートして原田岳に弾かれた。逆に12分には笠柳に間で受けられ自ら持ち込まれて左足を振られたが、弾道は枠の右へ。18分の増山朝陽のカウンターは保田が体を張って阻止した。
スタイルを体現し好機を多く築いた前半
23分には濵田と安藤のゆっくりとしたポゼッションから少し持ち上がった安藤のクサビで攻撃のスイッチが入る。伊佐が叩いたボールを梅崎が繋ぎ、宇津元伸弥が受けてオーバーラップした野嶽へ。野嶽が相手に囲まれると梅崎に戻し、その梅崎が右足シュート。26分には動き出した宇津元へと濵田からのフィードが通り、インナーラップした保田が受けてクロスを供給して伊佐にわずかに合わず。27分にも安藤からのクサビを受けた梅崎が運び、展開を受けた有働がクロスを送ったが、走り込んでいた伊佐と宇津元には合わなかった。
30分には安藤が競ったセカンドボールを梅崎が拾って小酒井が攻撃へと切り替え、有働のスルーパスを伊佐が収めたところから、相手を押し込んで攻めた。36分には有働がグラウンダーの面白いボールをゴール前に送り、ニアを中川と梅崎が走り抜ける奥で伊佐が収めたが、左足シュートは加藤にブロックされた。37分にもペレイラ〜中川〜小酒井〜梅崎と繋いで伊佐が宇津元へと展開。左サイドの関係に小酒井も絡みつつ、保田が戻してペレイラが前線に送ると、宇津元の落としたセカンドボールを梅崎がスライディングでマイボールにした。
攻守に個々の特長の生きたファインプレーが積み重なりながら、ペースを握って攻めた前半。40分にはモヨマルコム強志に強烈なシュートを放たれたが、濵田がしっかりと掻き出した。44分には前目の位置を取る濵田の背後を狙ってエジガル・ジュニオがシュートしたが枠外に逸れ、大分にとっては手応えのある前半が終了した。
フアンマ投入から流れを手繰り寄せていく長崎
大分は梅崎を野村直輝に代えて後半をスタートすると、立て続けにチャンスを築く。48分、右サイド深い位置で野村がボールを収めて折り返したところを中川が落とし伊佐がシュートしたが相手にブロックされる。50分には大分がハイプレスで相手守備陣の動揺を誘ったところから中川が相手のパスをカットしてクロス。相手にクリアされたところを宇津元が拾い、体勢を立て直してカットインからのシュート。鋭く枠を捉えていたが、原田のファインセーブに防がれた。51分にはセカンドボールを拾った小酒井が絡みながらゴール前へと顔を出し、宇津元のシュートのこぼれ球から狙うシーンも。
大分ペースで進みながら得点できずにいた53分。下平隆宏監督が澤田崇をベンチに下げてフアンマ・デルガドを投入。フアンマを頂点に置き、エジガルをインテリオールへと移した。フアンマという特大ターゲットが前線に入ったことで大分の重心は押し下げられ気味になり、長崎のサイドの推進力が増幅。モヨが積極的にクロスを送り続ける中で、57分、フアンマの頭に叩きつけられたが安藤が素早くクリアした。
58分にはカウンターで伊佐が抜け出し、巧みにボールを収めて野村がシュートしたが原田の正面。長崎が増山と笠柳の両翼をマルコス・ギリェルメと松澤海斗に代えると、さらにその攻撃の威力は増した。大分は66分、中川に代えて渡邉新太。野村を右SHに移して渡邉がトップ下に入った。73分には保田を弓場に、宇津元を木本真翔に2枚替えして鮮度を保つ。
最後は体を張って長崎のパワーをしのぐかたちに
木本も積極的に仕掛ける姿勢を見せシュートを放ったりするのだが、長崎のタレントパワーに押される時間帯が続いた。少しずつ後手に回りながらもゴール前で安藤、ペレイラ、濵田が体を張るシーンが増えてくる。
片野坂監督は86分、伊佐に代えて藤原優大を投入すると、システムを3バックに変更した。守備時には右から有働、安藤、ペレイラ、藤原、野嶽の5バックでしのぐ。そこからカウンターを仕掛けて得点を狙っていくというプランだった。88分、渡邉のシュートは枠の左に逸れる。
長崎も88分、加藤を山田陸、櫛引一紀を白井陽貴に交代。フレッシュな山田が躍動して中盤の主導権を握り、5分のアディショナルタイムはほぼ長崎の攻撃を大分がしのぐという構図になった。白井のロングスローをペレイラがクリアし、モヨのクロスを安藤が跳ね返す。秋野のシュートがワンタッチあって枠外に逸れ、その後のCKとロングスローにも体を張って対応して、最後は大分が守り切ったかたちでスコアレスドロー。
清水との首位争いで引けを取りたくない長崎にとっては、フアンマだけで5本のシュートを放ち流れを引き寄せた中で、勝てなかった感が強く残る試合となったはずだ。大分としてはアウェイ甲府戦からのタフな日程での試合を、特別指定選手2名も駆り出しながら総力で乗り切り、勝点1を積んだという印象。
だが、それ以上に、甲府戦とは異なるメンバーでも同じコンセプトでチームスタイルを表現しながら戦えたことが、この試合の最大の収穫だったと言える。この手応えを今後に繋げていきたい。