スコアは2-0だが白熱の接戦。見どころ満載の雨中の好ゲーム
立ち位置で上回った前半からプレッシングで猛追された後半へ。こちらから相手へと流れが反転する中、粘り強く守りながら選手交代でそれを引き戻した。
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独特の立ち位置を取る群馬に先んじて対応
3連戦の2試合目。朝から全国的に雨模様だったこの日、正田醤油スタジアム群馬も冷たい雨に見舞われた。水曜ナイトゲームということもあり、入場者数は1255人と振るわなかったが、トリニータサポーターも雨具装用(あるいは脱いでいた…?)で熱い鼓舞を続け、濡れた夜のピッチでは拮抗した好ゲームが繰り広げられた。
結果は0-2で大分勝利だったが、後半アディショナルタイムに渡邉新太による追加点が生まれるまで、どちらに転ぶかわからない試合だった。立ち位置の駆け引きと選手交代で流れを奪いあい、選手個々のファインプレーも多く、特に現地で観戦した人は白熱したのではないか。
前半は大分が主導権を握った。群馬は攻守で可変しながら独特の立ち位置を取ってくるチームだ。それをしっかりスカウティングしているようで、大分は巧みにそれに対抗した。センターに立つ伊佐耕平と中川寛斗、両サイドに立つ宇津元伸弥と松尾勇佑がそれぞれにプレッシングと落ちる/抜けるを繰り返す。弓場将輝と小酒井新大のボランチは相手ボランチと対峙。群馬があまり前から守備に来なかったため、テンポよくボールを動かすことが出来ていた。
宇津元の左CKからオウンゴールを誘って先制
9分、宇津元のFKに安藤智哉が頭で合わせて枠の上。15分には伊佐の落としを小酒井が展開し、それを受けた松尾が運んでパス。最後は宇津元がシュートしたがこれも枠上に逸れた。18分にも藤原優大のクサビを中川が受けて縦に出し、宇津元が伊佐とのワンツーで抜け出してクロス。弾道は精度を欠いたが、巧みにスペースを使いながら攻めることが出来ていた。
ただ、群馬も一度大分を剥がせば脅威だった。20分、ワイドに張っていた佐藤亮が中に立ち位置を取る田頭亮太とのパス交換で抜け出し、そのままカットインして左足シュート。横っ跳びした濵田太郎が右手で掻き出してCKに逃れた。
23分には自陣から運んだボールを右サイドに流れていた中川がクロス。クリアされたこぼれ球を香川勇気と弓場が繋ぐと伊佐が小さく落とし、ゴール前に入ってきていた野嶽惇也が狙ったが、相手にブロックされた。
そこで得たセットプレーから先制点が生まれる。宇津元の左CKは相手の前に出る安藤の頭上を越えたところで、クリアしようとした相手のオウンゴールを誘った。
ハイプレスでの反撃から後半は群馬の流れに
ビハインドとなった群馬は後半、一転して激しくハイプレスをかけはじめる。それによって大分が前半のようにはボールを動かせなくなり、流れは群馬へと傾いた。
49分には右CKの流れから天笠泰樹の強烈なミドルシュートを濵田がセーブ。続く右CKも濵田が掻き出すと、こぼれ球を収めた川上エドオジョン智慧が右足を振り抜き、わずかに枠の上へ。54分には川上からボールを受けた髙澤優也が大分のDFライン裏へと絶妙なクロスを送ったが、走り込もうとした平松宗が濡れたピッチに足を滑らせ、大分としては助かった場面となった。
ボールを握って大分を押し込む時間を増やした群馬は60分、平松を佐川洸介、イエローカードを1枚もらった天笠を高橋勇利也にチェンジ。屈強な佐川が前線で強度を出し、ギアを上げてきた。
大槻毅監督の2枚替えに対し、片野坂知宏監督も2枚替え。立ち上がりから攻守にアグレッシブに走り回った伊佐と中川を、渡邉と長沢駿に交代した。ここでトップ下に入った長沢の存在が、群馬に傾いていた流れをイーブンに近い状況にまで引き戻す。中間でボールを収めて起点を作り、寄せられればファウルを誘って時間を使った。67分、群馬はさらに髙澤に代えて和田昌士。大分は71分、足を痛めた野嶽を有働夢叶に、宇津元を薩川淳貴に代えた。
最終盤までどちらに転ぶかわからない展開
追いつきたい群馬と追加点がほしい大分の、雨の中でのせめぎ合い。75分、安藤のインターセプト即クサビが渡邉に通り、薩川が折り返してゴール前に入った長沢へ。わらわらと群がってくる相手をかわしながらシュートするが体を張る相手に枠上へと弾き出された。
81分にはCKのこぼれ球からカウンターを受け、自陣へと攻め込まれる。その流れから攻め込む高橋を飛び出して濱田が防いだこぼれ球がゴール前へと高くバウンドし、落下点にいた佐川が渾身のヘディングシュート。素早くカバーに入った安藤がこちらも全力でクリアした。
猛追する群馬は83分、佐藤と田頭の右サイドを永長鷹虎と山中惇希に交代。84分には中塩大貴のクロスに和田が合わせて枠の上。大分も負けじと攻め返し、88分に長沢が反転シュートしてこれも枠外。
最終盤に差し掛かってもどちらに転ぶかわからない展開は続く。片野坂監督は迷いながら88分、松尾をベンチに下げデルランを投入して、右から有働、藤原、安藤、デルラン、香川の5バックで守備を固めた。1点のリードを守り切る方へと舵を切ったが、下手すればラインが下がって決壊し追いつかれるかもしれない選択だ。90分、群馬の左CKのチャンスにはGK石井僚も上がってのパワープレーで、濵田が掻き出す。
試合を決定づけたドリからの新太弾
アディショナルタイムは4分。前線に積極的にボールを入れてくる群馬の攻撃を自陣で跳ね返す中から、試合を決定づける追加点が生まれた。藤原が和田と競ったセカンドボールを安藤がスペースに出し、そこに詰める風間宏希を体でブロックしながら有働が前線へと送った。絶妙な位置に飛んだボールは中塩と城和隼颯の間を抜け出す渡邉に渡り、渡邉がエリア右へと自ら持ち込んで右足を振り抜くと、石井の指先も届かず、ボールはゴール左サイドネットに突き刺さった。さすがストライカーという仕事だった。
最後は左右に揺さぶられた挙句の和田のシュートを濱田が掻き出し、そこからの右CKもしのいで群馬を完封。これで8節を終えて無失点は5試合目となった。
スカウティングに基づいて対策とプランを煉り、それを遂行して先制すると、相手の猛追を選手交代で押し返して追加点。タフなアウェイゲームでの勝利の喜びは大きかったが、スコアほどの力量を見せつけた試合でなかったことも事実で、濵田のファインセーブがなければ逆転されていた可能性も否めない。
前半から自身のストロングポイントを遺憾なく発揮したように見えた中川だったが、試合後には悔しさの残る表情を見せた。「僕はこのままだと強いチームにはなれないと思う」。具体的な課題も挙げながら、もう一度J1のピッチに立ちたいと口にした。