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試合レポート

両軍サポーターがズッコケあったミス連発ゲーム。収穫部分の評価は今後に持ち越しか

 

狙いがハマって優位に進めていた時間帯に先制できず、アクシデント的な2失点。両チームにイージーなミスが多発したゲームは、残念ながら相手の勝利で終わった。

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クレバーな戦いぶりで立ち上がりは優位に

90分通して、両チームのあまりのミスの多さに思わず苦笑いが漏れるようなゲームだった。芝が長くピッチがボコボコしているところに水を撒いたことで、ボールが滑る箇所もあれば逆にボールが走らず減速する箇所もあるといった状態になっていたようだ。選手たちが足を取られる場面も多かった。大分の選手のみならず、ここをホームとする栃木の選手までもが、やたらとプレー中に足を滑らせる。どちらのチームもプレー精度が低くなっていたのは、その影響もあったのだろうか。ハーフタイムにはスタンドのどこかから、どちらのチームに対するでもなさそうな「点取れやー!」という野次が飛んだ。そのくらい、ともにミスから大ピンチを招き、相手のミスから生まれたビッグチャンスを外し続けた。
 
立ち上がりの大分は、狙いの見えるクレバーな戦いぶりで優位に立つ。前節の鹿児島戦と同じ長沢駿と渡邉新太の2人のFWが前線に立ったが、この日はより明確に、長沢のほうがトップ下の立ち位置を取り、相手と駆け引きしていた。タイミングよくファジーな位置に下りてくる長沢に起点を作らせないために、相手のアンカーが対応するのか最終ラインの誰かが出てくるのか。それによって空いてくる場所を見極め、背後を狙う。そうやって相手と駆け引きしながら戦う様子は、見ていて非常に頼もしかった。高さと強さを誇る相手攻撃陣のストロングポイントを出させないために、後方から丁寧にボールを保持しながら攻める意図も見えた。5-3-2のブロックを構える相手を攻略するためにボールを運んで陣形を崩しに行ったり、ブロックの中で辛抱強く動かしながら隙を突いてクサビを打ち込んだりというシーンもあった。

 

次第に対応され互いにチャンスを築きあう

結果から言えばその時間帯に先制点が取れていれば、という試合になった。最初の決定機は6分。藤原優大の長いスルーパスに対応しようとした平松航が転倒する脇を渡邉が抜け出してエリア内に進入。相手がボールウォッチャーになる背後には中川寛斗もいたのだが渡邉が自ら放ったシュートは枠の上へと逸れた。12分には粘り強いポゼッションから左サイドを崩す。14分にはトラップの流れを奪われたところから相手に押し込まれたが、集中した守備でしのいだ。15分には中盤の競り合いから弓場将輝がセカンドボールを前に送り渡邉がシュートにまで持ち込んだが、平松にブロックされる。17分には大島康樹のクロスが矢野貴章にわずかに合わず。21分にはポゼッションから押し込み相手を揺さぶる中で弓場が鋭いクサビを供給したが、ゴール前で受けた薩川淳貴は惜しくもオフサイドだった。
 
互いにチャンスは築きながら、相手を動かすポジショニングで試合を優勢に進めていた大分だが、決定機を逃すうちに栃木も対応。大分のポゼッションを遮るプレッシングと中を固める守備でボールを奪い、攻め返す場面を増やした。ボールを持てば手数をかけずに一発を狙うのが栃木だ。30分にはエリア内で大森渚生のパスを受けた大島に反転シュートを許すが、枠の左だった。32分には弓場の縦パスを受けた渡邉が時間を作り追い越した薩川がマイナスに折り返す絶好機。だが、中で待ち構えていた長沢には藤谷匠が寄せ、ボールは丹野研太に押さえられた。37分には右サイドに流れた矢野がボールを収め石田凌太郎がシュートを放ってサイドネット。42分には石田のクロスから大島にヘディングシュートを放たれ、枠の上に逸れた。

 

先制点献上も決定機逸も不運絡み

緻密な大分とダイナミックな栃木が互いに決定機を外しあうゲーム。後半になってもその流れは継続し、48分には石田のミドルシュートが大きく枠の上へ外れ、51分には右を崩した野嶽惇也のクロスがサイドネットを揺らした。どちらが先にネットを揺らすかという展開になっていた55分、均衡は事故から崩れた。押し込まれた状態から石田に放たれたシュートが、中川に当たって枠の中へ。さすがの濵田太郎も反応できず、意外な形から栃木に先制点を奪われた。
 
58分には小堀空に高い位置でボールを奪われたが、シュートは上手くミートせず。60分には中川の右CKに長沢が頭で合わせたが相手に掻き出された。62分には大分のビッグチャンス。弓場の左CKから長沢が狙ってクリアされたこぼれ球に反応した薩川が左足を振る。抑えの効いたシュートかに見えたが強烈な弾道はクロスバーに阻まれた。これが入らないのはそろそろ今日は運がないのかという雰囲気も立ちのぼってくる。
 
両ベンチが動いた62分。大分は中川を松尾勇佑に、栃木は矢野を宮崎鴻に代えた。64分、押し込んでエリア内から放った渡邉のシュートはわずかに枠の左。67分、薩川のクロスに長沢の背後で飛び込んだ弓場のヘディングシュートは丹野に弾き出され、そのこぼれに反応した松尾のシュートも丹野。かつての仲間が栃木ゴールを強固に守ってきた。

 

追撃中、アンラッキーな2失点目

栃木は68分、小堀と大島を青島太一と南野遥海に2枚替え。栃木としても追加点で大分を突き放したいところだが、79分、ショートカウンターから押し込みながらも大分守備陣にゴール前を固められシュートが打てない。72分には大分のクリアミスを拾ったところから宮崎がシュートしてネットを揺らしたが、わずかにオフサイドで大分にとっては命拾いとなった。74分には大分が2枚替え。香川に代わって有働夢叶が左SBに、渡邉に代わって伊佐耕平が最前線に入った。
 
82分には有働が青島と入れ替わられて攻め込まれるが、GKと最終ラインの間を狙った横パスはわずかに奥田晃也に合わず逆サイドへ。それを拾って放った南野のシュートも枠を捉えきれず、失うほうも失うほうなら決めきれないほうも決めきれないほう、という場面になってしまった。84分、栃木は石田と大森を大谷尚輝と森俊貴に交代し、大分も同じタイミングで、少し前に負傷していた小酒井新大がプレー続行不能となったことを受けて羽田健人がピッチに入った。
 
1点を追う試合終盤。こちらもミスだらけだが相手のミスにも助けられ、1点差ならまだ逆転の目もありそうだった。アディショナルタイムは7分。大分ベンチがペレイラ投入でパワープレーの準備をしていた90分に、あまりにアンラッキーな事故が起きた。相手陣でボールを動かしていた中で、羽田が足を滑らせて奥田にボールを拾われる。広大な栃木陣をドリブルで独走する奥田を、追走した羽田も飛び出してきた濵田も防ぐことが出来ず、痛恨の2点目を奪われた。

 

パワープレーからPKで1点は返したが…

そのタイミングで大分は弓場に代えてペレイラを前線に送り込む。90;4分には薩川のロングフィードを長沢が落とし、ペレイラが飛び込もうとしたが丹野に対応された。だが、90+5分、藤原のフィードを長沢がエリア内に落としたところで、ペレイラが平松と接触して転倒。これがPK判定となった。残り時間が少ない中、猛抗議する栃木の選手たちと時計を止めろと第4審判に交渉する片野坂知宏監督。騒然とするスタジアムの中で、ペナルティーマークに素早く静かにボールをセットしたのは長沢だった。1点返せるかどうかの重大局面。35歳のストライカーは37歳の守護神との心理戦を制し、ゴール右上隅にボールを突き刺した。
 
さらに同点を狙って猛追する大分からボールを奪うとその背後を突いて、90+7分、奥田が独走態勢に入った。完全に3失点目を覚悟した流れだったが、1対1で立ちはだかる濵田の脇を通した奥田のシュートは枠の右へ。こうして相手のミスに助けられながら、試合は2-1、ホームチームの勝利で幕を閉じた。
 
3連戦の3戦目という疲労も影響していたのかどうか。まずオン・ザ・ボールの部分でミスが多すぎるゲームだった。判断ミスもいくつか。準備してきた狙いが的確に奏功していただけに、そこで得点できなかったことと、その後に相手に対応された中で試みた修正をなかなか反撃に繋げられなかったのが残念でもあった。
 
双方にとって微妙な判定もあり、また大分にとっては不運続きの失点と決定機逸とも言える。ミスの連発に両軍サポーターがズッコケあった試合で勝点3を相手に渡してしまったのは痛恨の極みだが、有効なポジショニングと連係の高まりが見えた点は今後への期待に繋がる。この試合の評価は今後に持ち越しだ。

試合後、ゴール裏スタンドに向かってずっと深々と頭を下げていた