長沢&新太の2トップが奏功し3得点無失点での今季ホーム初勝利。試合運びには課題残す
長沢2得点、新太1得点と2トップが活躍して今季初の複数得点。守備陣も集中を切らさず無失点で、終わってみれば3-0の今季ホーム初勝利。だが、実際には課題の残る部分もあり、試合後の指揮官は「まだまだやることがある」と表情を引き締めた。
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流れを一変させた長沢真骨頂の先制弾
8年ぶりの鹿児島とのダービー。アウェイからは900人を超えるサポーターが駆けつけ、両軍のゴール裏が春分の日とは名ばかりの極寒のスタジアムを盛り上げた。
3連戦の2戦目、特に静岡アウェイ連戦を終えて選手たちの疲労も見える大分は、前節の清水戦から4人を入れ替えてスタート。フォーメーションは4-4-2で、長沢駿と渡邉新太の2トップが適宜、縦関係になるなどする形だった。U-19代表ヨルダン遠征中の保田堅心に代わりボランチの一角に入ったのはこれがプロ初先発の小酒井新大。左SHには古巣戦で気合の入っている薩川淳貴が配置された。
一方の鹿児島も前節の千葉戦から3人を入れ替え。右サイドには武星弥と星広太が並び、前節はベンチスタートだった野嶽寛也が左SBで、兄の惇也とマッチアップする形になった。1トップの先発は藤本憲明だ。
立ち上がりは鹿児島の勢いが上回った。3分には田中渉の落としをゴール前で収めた米澤令衣が大分守備陣をかわしながら前を向いてシュート。濵田太郎がキャッチした。6分には米澤のスルーパスに斜めに抜け出した田中が左足でダイレクトに狙ったが、わずかに枠の左に逸れた。
巧みなポジショニングで相手のほうが優位に立つかに思われたが、7分の先制弾が流れを変える。濵田のゴールキックを少し落ちた長沢が頭で後ろに落とし、渡邉新が収めて右へ展開。野村直輝が相手を引きつけながら中央へと運び、ボールはフリーの香川勇気を経由して薩川へ。薩川は対峙する星が、おそらく自分の特長を知っていて縦を警戒してくると読み、その裏をかいて右足でクロスを上げた。その弾道にピンポイントで合わせたのは、まさに長沢。2人にマークにつかれながら192cmは巧みに自らの形に持ち込み、得意のヘディングでゴールネットを揺らした。
新太、長沢の追加点で3-0で折り返す
トップ下に優れたゲームメーカーを置き、裏抜けを得意とする技術やスピードのある攻撃陣を擁する鹿児島に対し、組織的に上手くケアしながら重心が低くならないようにと、この日の大分は意識を集中しているようだった。安藤智哉と藤原優大の2CBが恐れずに前に出て、弓場将輝と小酒井のボランチは相手のボランチとマッチアップ。その付近のスペースにタイミングよく下りてきてボールを受ける長沢が相手の注意を引きつけることで、大分の中盤がボールを持てる時間が増えていた。
自陣でボールを奪ったところから攻め上がって獲得した左CKから、10分、2点目が生まれる。小酒井のキックはゴール前からニアに走り出した野村へのショート。相手がクリアしたところを弓場がシュートし、そのこぼれ球を渡邉新が押し込んだ。
早々に2点のリードを得たチームは、じっくりとポゼッションしながら相手の陣形を崩していく。15分には野村のクロスに長沢が飛び込んだが、ダイビングヘッドの弾道は枠の右へ。鹿児島もFKやカウンターでチャンスを築くが、大分の守備に遭い決定機にまでは至らない。29分には野村の左CKに安藤が合わせる迫力の攻撃。30分には前線でボールを収めた渡邉新が時間を作り、上がってきた野嶽惇也が左足を振ったが枠の右に逸れた。
攻めるチームはペナルティエリア左で薩川が倒されてFKを獲得。そのFKを野村が蹴り、またも長沢が高さにものを言わせてこの日2点目。鹿児島も40分、右CKの流れから岡本將成がヘディングシュートを放ったが、濵田にキャッチされ、試合は3-0で折り返した。
修正した鹿児島の勢いを受けてしまった後半
前半終了間際に負傷した野村を中川寛斗に交代して、大分は後半をスタート。
47分には鹿児島がポジショニングで先手を取ってボールを動かし、右で作ってから左に展開すると米澤の速いクロスに藤本が飛び込んだ。シュートが枠上に逸れて大分としては命拾い。51分にもカウンターから右サイドに流れた田中のクロスに藤本がヒールで合わせるシーンを作られたが、これも枠の左に逸れた。53分にはセカンドボールを田中に拾われて藤本に浮き球を送られるが、なんとか小酒井がクリア。
前半とは打って変わって鹿児島が先手を取るようになった修正について、大島康明監督は試合後にその一端を明かしてくれた。
「大分のディフェンスラインの特徴は、ひとつ剥がされたときにぐっと下がる。前半はその剥がすところまで自分たちが入ろうとしなかったので、少し強引にでも入らせるようにしたことで、田中があそこのポジションでボールを受けられるようになった」
優勢になった鹿児島は56分、武と米澤の両SHを西堂久俊と福田望久斗に2枚替え。鹿児島の攻撃に後手に回る大分は59分にゴール正面でFKを与えるが、25m余の位置から田中が直接狙った弾道は、濵田が横っ跳びで掻き出した。大分が62分に長沢を伊佐耕平に代えると、鹿児島は64分、藤本を鈴木翔大に交代。さらに69分には星を渡邉英祐、山口卓己をンドカ・チャールスに代え、田中がボランチに下がってンドカと鈴木の2トップへとシステムを変更した。
3バックに変更するも流れを変えるには至らず
素早い帰陣で粘り強く対応してはいるものの、前線へのロングボールを増やしてきた鹿児島に対し、大分はさらに押される展開を避けられない。73分には渡邉英にゴール前にアバウトにボールを送られ、競り合いの中で鈴木がオーバーヘッドシュート。75分にも西堂にシュートを許し、いずれも枠外で助けられたかたちになった。
押し込まれるばかりになっていた78分、片野坂監督が動く。小酒井と野嶽惇をベンチに下げ、羽田健人と有働夢叶を送り込んだ。最終ラインは右から藤原、安藤、香川の3バック。右に有働、左に薩川とシステム変更して守備を固めつつ、伊佐・中川・渡邉新にカウンターで背後を突かせる狙いへと切り替えた。
だが、追撃する鹿児島のほうが上回り続ける。迫力を持ってボールを動かす鹿児島は、ひとつひとつの精度を微妙に欠きながらもゴールに迫ると、85分には西堂の仕掛けからのシュートがクロスバーを叩く決定機逸。86分には田中のシュートが、続けざまに渡邉英のシュートも枠外に逸れる。
大分は88分、渡邉新を松尾勇佑に交代したが、最後まで鹿児島の追撃は止まず、アディショナルタイム4分もほぼ防戦状態となった。集中した対応と相手の精度不足により無失点で終えたが、積極性を増す修正へと舵を切った相手の勢いを受けるかたちになり、その流れを押し戻せなかった課題は、軽いものではなかった。放った7本のシュートはすべて前半で、後半はシュート0という数字にもそれは表れている。
「おそらくよりレベルの高い相手になると、今日のゲームも3-1、3-2、3-3、もしかしたら3-4で敗戦するようなゲームになっていた可能性もある」
試合後会見で指揮官は表情を引き締めた。収穫も多かった今季ホーム初勝利だが、まだまだ突き詰めなくてはならない部分は山積している。