10人での戦いを強いられた70分。懸命さ届かず黒星に終わる
波に乗れそうな感触を掴んだところでそれが折れてしまう。今季はそんなことが何度も起きてきた。今節も立ち上がりから攻守に充実した入りを見せたが、複数の決定機を逃すうち16分に失点。さらに18分にはペレイラにレッドカードが提示され、1人少ない状況に。チームは4-4-1の陣形を採りそれ以上の失点を防ぎながら同点のチャンスを狙うと、10人で集中した戦いぶりを見せたが、力及ばず後半はシュートを打つことが出来なかった。今節も勝点を積むことが出来ず、順位は2桁に後退した。
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攻守に前への意識を押し出した立ち上がり
東京Vは多くの試合を4-3-3のフォーメーションで戦っているが、今節のシステムは4-4-2。4-3-3の試合でも守備時にはダブルボランチになるものの、トランジションの活発な試合が予想される中ではその可変の有無がチャンスやピンチにつながることもある。チームはこの試合に向けて対4-3-3の準備を施してきたが、下平隆宏監督はピッチ内アップを見て相手のシステムに気づき、試合直前に相手の基本システムが4-4-2であることを選手たちに伝えたようだ。
試合の入りは好感触だった。攻守に前への意識を前面に押し出したチームは積極的に攻勢に出る。立ち上がりから激しくハイプレスをかけ、まずは1分、弓場将輝が相手の浮き球を高い位置でカットすると町田也真人、伊佐耕平とつなぎもう一度弓場が縦に送って渡邉新太がシュート。これはマテウスに防がれた。
4分には丁寧なポゼッションから羽田健人が前線に送ってクリアされたところを弓場がマイボールにしてスピードアップ。町田が左に展開して香川勇気が左足クロスを送り、ゴール前に走り込んだ弓場が頭で合わせたが枠上に逸れた。6分にはポゼッションから相手を押し込み、坂圭祐のクロスから渡邉が左足を振り抜いてこれも枠上。
8分には相手の右CKをニアで逸らされヒヤリとしたが、今節はゾーンディフェンスで対応したチームはそれも掻き出し、町田が相手のファウルを受けて流れを断ち切った。
先制点を奪われた直後、ペレイラが退場に
9分、梅崎司の大きなサイドチェンジから坂のグラウンダークロスに渡邉が走り込み右CKを得ると、梅崎のキックからデルランがヘディングシュートを放って枠の上。大分にボールを握られる東京Vは11分、マテウスからの長いボールでチャンスを狙う。ペレイラのクリアボールを齋藤功佑にシュートされたが、ペレイラが体を投げ出して枠上に逸れさせた。
大分がポゼッションして攻め込む時間帯のあとには東京Vがポゼッションして攻め返す。そんな見応えのある攻防が続いていた16分、先制点を奪われた。ポゼッションから送られた浮き球をデルランがクリアしたところで梅崎と中原輝の競り合いになり、中原が持ち運んだボールを齋藤が落として稲見哲行が左足シュートすると、鋭い弾道がネットを揺らした。
優勢に進めながら先制点を奪われた大分に、その直後、さらなる試練が襲いかかる。デルランにパスしようとしたペレイラの足にプレスをかけにきた染野唯月がかかって転倒。清水修平主審はDOGSOとしてペレイラにレッドカードを提示した。
4-4-1の布陣で対応しながら機を窺う
猛抗議にも判定が覆ることはなく、下平監督は即座に事後の対応として羽田を最終ラインに、渡邉をボランチに下げて4-4-1の陣形を取るよう指示を出す。最初は当初の狙いどおり前への勢いを維持しようとしたのか、状況次第で渡邉と弓場が縦関係になったり坂が高い位置を取って残りの3枚がスライドしたりと立ち位置が動いている様子も見られたが、やはり数的不利では相手にポゼッションされることが圧倒的に多くなり、被シュート数が増えた。
テイシェイラを中心に粘り強く対応する中で攻撃ではポゼッションする姿勢を貫く。45分には香川の浮き球を伊佐が巧みに相手と入れ替わって収めると、渡邉がつなぎ香川がクロスを上げるシーンも。残念ながらクロスはラインを割ったが、1人少ない中でも変わらずに攻める姿勢は、このまま守備の集中を維持していれば、ワンチャンスで追いつけるのではないかという可能性を感じさせた。
後半も交代なくスタートしたが、前半よりもしっかりと4-4のブロックを構え、そこから出ていく姿勢を徹底したようだった。機を見て出ていくエネルギーを温存しつつ効率的に守備をすることで、とにかく出来るだけ長い時間、0-1のままで試合を進めたい状況だ。攻撃もロストしないよう丁寧にポゼッションを続けた。
70分まで粘っての3枚替えで勝負に出るが…
そんなトライの中から56分、弓場と香川との連係から梅崎がクロスを入れ相手にクリアされる。そのスローインの流れから今度は香川がクロス。逆サイドで町田が競ったこぼれ球を、球際で相手を上回った坂がクロス。伊佐が頭で合わせてミートしきれず、ボールは逆サイドへと流れたが、立て続けにクロスの上がった時間帯だった。61分には香川の浮き球を伊佐が落とし、梅崎がミドルシュート。枠上に逸れたが、徐々に大分が好機を増やしはじめる。
もう少し粘って大分ベンチが動いたのは70分。梅崎、町田、伊佐の前線を藤本一輝、松尾勇佑、長沢駿に3枚替えした。先発メンバーの疲労と同点、逆転までの時間的猶予を考えた上でのタイミングだったのだろう。梅崎と町田がインサイドでのプレーを得意とするのに対し、アウトサイドに張ったところでストロングを出す藤本と松尾の投入で攻撃の色合いにも変化をつけることを企図していたと、試合後に指揮官は明かした。
72分には東京Vが加藤蓮に代えて平智広。大分は東京Vのサイド攻撃にも組織的に対応しながら、さらに攻勢を強めるべく81分に高畑奎汰をピッチに送り出す。疲労した坂がベンチに下がり香川が逆足の右サイドに回った。86分には東京Vが河村慶人と齋藤を山田剛綺と綱島悠斗にチェンジする。
集中を切らさず戦うもシュートには至らず
タイミングを見極めながら駆け引きを続けたが、やはり数的不利で東京Vの堅守を攻略するのは難しかった。追加点を与えないよう守備に多くの意識を割かれ、長沢にいいかたちでボールを入れることが出来ない。渡邉は相手CBの背後にアバウトなボールを入れようと呼びかけていたが、それもなかなか上手くいかなかった。87分には香川とのコンビネーションで松尾が抜け出しクロスを送ったが、ニアに入ってきた藤本が触るより前に相手に掻き出されてしまう。
3分のアディショナルタイムには香川が足をつらせ、保田堅心との交代を余儀なくされる。保田が練習で右SBを試していたことが、図らずもこの試合で現実のものとなった。東京Vは90+4分、染野と中原を奈良輪雄太と山越康平に代えて時間を使い切り勝利。後半、大分はシュートを打てずに終わった。
勝点を取れなかったことでJ1昇格プレーオフ圏再浮上への道はさらに険しくなった。10人になってからの4バックシステムにおける守備は、前線の枚数が少なくなったぶん攻め込まれることも増えたが、自陣では組織的に隙少なく対応できていたし、ポゼッションの質も前節より高まっていた。ただ、それが勝点につながらなくては目標の達成には届かない。残り4試合。チームのポテンシャルを最大限に発揮して、最後まで意地を見せたい。