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試合レポート

波乱含みの展開を乗り越えて6試合ぶりの白星。相手をシュート0本に抑え完封

 

38分に相手に退場者が出て予想とは少し異なる展開となったが、準備してきた守備戦術を遂行しつつ攻撃で個のポテンシャルを発揮して、6戦ぶりの勝利。前後半を通じて相手をシュート0本に抑えた。

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試合前、指揮官からのメッセージとアドバイス

10戦無敗で3連勝中の好調・水戸との敵地戦。こちらは5戦白星なし、5試合で12失点中と守備に課題を抱えている。フォーメーションは大分が4-2-3-1で水戸が4-4-2。ミラー状態で球際激しくぶつかり合う展開が予想された。
 
いつもは試合前ミーティングで戦術上の狙いどころを最終確認する下平隆宏監督だが、この日は「目の前の相手に負けるな」とだけ伝えたようだ。失点の嵩む守備の課題克服に取り組み、対水戸の守備戦術をトレーニングでしっかり落とし込んだ中で、それでも最終的に守れるか否かを分けるのはコミュニケーションやサッカーのベース部分。それをシンプルなメッセージとして伝えた上で、この試合を担当する主審の個人的傾向として、カード提示が多めであるから気をつけるようにとも付け加えていた。
 
早速、キックオフ後3分で渡邉新太にイエローカード。渡邉はこれが通算4枚目で次節・大宮戦への出場停止となった。その後もファウルで試合が止まる場面が多く、かと言って球際を緩めることも出来ない。序盤から少し難しさが感じられていた。

 

梅崎、香川の左サイドが活性化

大分は前節の徳島戦から左サイドの2人を入れ替え。2点ビハインドから追撃の勢いを醸し出した梅崎司と香川勇気が先発となった。立ち上がりからボールを動かす中で、その左サイドが活性化して多く好機を築く。守備では運動量豊富でボールを持たせると厄介な相手のダブルボランチに、伊佐耕平と渡邉が激しくプレスバックした。
 
15分にはペナルティーエリア内でボールを受けた安藤瑞季をデルランが止めに行った際に安藤が倒れ、多少もらいに行った感が見えたのかホイッスルは鳴らず。すぐに立ち上がって攻撃を続けようとする安藤を次はペレイラが倒してしまったが、ここでも笛はなかった。主審によってはPK判定かもしれないというシーンでヒヤリとする。
 
香川が巧みにコントロールしてのポゼッション。伊佐への長いボールは相手DFも簡単には収めさせてはくれなかったが、ボールを動かしながら相手を押し込む場面も作った。FKの流れからペレイラとデルランが相手ゴール前に残っていた21分、香川のクロスをファーで渡邉が折り返し、ペレイラが触ったこぼれ球を弓場将輝がシュート。相手にブロックされた。

 

多彩な攻撃でファウルを誘い38分に水戸が10人に

前半途中からは風に乗って小雨が打ちつけた。集中して組織的に守る大分は水戸の攻撃の芽を摘みながら主導権を握って攻める。守備に意識を置いているためか羽田健人も弓場もあまり高い位置を取らず、相手の守備にハメられそうな場面もありながら、渡邉がタイミングよく下りてはパスコースを作った。そこで受けてからゴールへと向かう渡邉の推進力が、相手のファウルを誘う。伊佐や梅崎や野嶽惇也も倒されてFKのチャンスを得るなどした。
 
32分に渡邉が倒されて得たFKを香川が蹴り、こぼれ球を梅崎が狙って枠上へ。38分には守備をハメられかけたところから香川が長いパスを出し、自陣まで下りていた伊佐がフリック。野村直輝が左を駆け上がる渡邉へと展開し、その渡邉が仕掛けたところで相手に倒された。ここで提示されたイエローカードは前田椋介にとっての2枚目。水戸は前半のうちに心臓の半分を欠いて戦うことになった。
 
前半の残り時間も少なく、水戸としては無失点で乗り切ってハーフタイムに修正したいところ。ブワニカ啓太が中盤に下りた5-3-1のブロックを組んで大分の攻撃をしのぐ。そんな水戸に追い討ちをかけるように、前半アディショナルタイムには大崎航詩が負傷。長井一真との交代を余儀なくされた。

 

好機量産する伊佐の裏抜けから新太の今季初ゴール

水戸は成瀬竣平を得能草生に代えて後半をスタート。得能は5バックの左に入る。1枚少なくなって自陣に構える相手に対し、大分はハーフタイムにもっと大胆にプレーしようと話して臨んだ。失点しないように5枚のブロックでゴール前を固められると、こじ開けるのはかなり難しくなる。
 
だが、水戸の最終ラインの位置は果敢に高く保たれていた。その背後を突いて48分、デルランのフィードに伊佐が抜け出す。伊佐の落としを弓場が前に送り渡邉が反転シュートという形を作ったが、精度不足で最後は山口瑠伊にキャッチされた。
 
スコアを動かしたのは58分。香川のボールにここでも伊佐が抜け出してマイナスのパスを送ると、野村がつないで渡邉が左足を振り抜く。地を這う弾道はDFとGKの股を抜いてゴールへと突き刺さった。渡邉にとっては今季初得点。天性のゴールハンターが怪我から復帰後、ようやく本領を結実させた。
 
59分、得点前から準備していた2枚替え。梅崎を藤本一輝、渡邉を長沢駿へ。

 

水戸の追撃を抑えシュートを打たせず勝利

その後も大分がボールを持って水戸のブロックを攻略するゲームが続いた。78分には両軍ベンチが動く。水戸は安藤を新里涼に代えてブワニカを頂点に移した。大分は野村を町田也真人、香川を高畑奎汰にスイッチ。町田がブロック内のあちこちに顔を出してかき回すことで攻撃に細やかなバリエーションが加わったが、水戸も必死に藤本の足元を狙い高畑のクロスを弾き出す。
 
83分、我慢しながら1失点で抑えていた水戸が同点を目指す選手交代。ブワニカと鵜木郁哉を久保征一郎と永長鷹虎に代え、システムを4-3-2に変更して攻撃に打って出た。大分が見せたのは1点を守り勝つのではなく追加点を狙う姿勢。87分には伊佐を宇津元伸弥に代えて最後まで攻め続けたが、シュートはなかなか枠を捉え切れない。水戸のほうもFKの絶好機を仕留め切れず、試合は0-1のまま終了した。
 
待ちかねた6試合ぶりの勝利。アクシデントにも見舞われたとはいえ、終わってみれば前後半を通じて相手をシュート0本に抑えていた。2CBのエースキラーぶりと2トップのプレスバックが特に光った。攻撃ではGKと最終ライン、ボランチでのポゼッションと伊佐の裏抜け、相手のファウルを誘う渡邉らの仕掛けなど、個々の特長が存分に生きた。
 
追加点は取れなかったが、渇望していた勝点3。これでプレーオフ圏内まで勝点1差の8位となった。残り6試合。「どれだけ泥臭くても、どれだけ内容が悪くても、とにかく勝つ、そこに執着したい」。キャプテンの言葉がチームを力強く牽引する。