2点を先行も相手の勢いにのまれ3失点。未熟さが露呈して逆転負け
相手と駆け引きしながらペースを握り2点を先行したものの、甲府の追撃にのまれ逆転負け。ウタカの存在感と甲府のプレスに冷静さを欠き、未熟さが露呈した。
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新太の好判断から羽田先制弾
選手の特長を生かしながら、トレーニングしてきたことを表現して2点を先行した前半。相手の巧みなポジショニングにも粘り強く対応して無失点で折り返したが、後半は相手のプレスと裏抜けの前に必要以上に焦りを見せると、守備では後手に回り攻撃では自信と精度を欠いた。失点を重ねるたびに高まるアウェイの雰囲気にのまれ、終わってみれば2-3の逆転負け。勝点2差だった甲府に抜かれ、9位にまで沈んだ。
2点ビハインドから追いついた前節・長崎戦の勢いを今節に繋げるべく、スタメンは継続。前節Jデビューを果たしたテイシェイラを組み込んだ形を落とし込みつつ、前半は寄せてくる相手と駆け引きしながらバックパスからの前へというボール運びが成功していた。
立ち上がりからいくつか好機を築いた中で、15分に先制点。高畑奎汰のクロスから得た左CKを野村直輝がショートで出し、高畑、渡邉新太とつないで渡邉が再び野村に戻すと、野村のスルーパスに抜け出した高畑のクロスに羽田健人がニアで合わせて美しくゴールネットを揺らした。5分に得た左CKでも同じショートを仕掛けており、そのときは渡邉が自らゴール前にボールを送っている。1本目は得点にはならなかったが、渡邉の好判断も生きて甲府の守備を崩してのゴールだった。
伊佐のストロングが生きた29分の追加点
甲府の攻撃も厄介ではあった。特に三平和司と長谷川元希はこまめに絶妙な立ち位置を取りながら単独と連係を使い分けてきたが、守備陣が粘り強く対応できていた。テイシェイラの長身を生かしたキャッチングにも安定感があった。
29分には追加点。渋谷飛翔のロングフィードを安藤智哉が渾身のヘディングで跳ね返して大きく前に送り、右サイドハーフウェイライン付近で渡邉が収め、ワンタッチでアバウトに前線へ。高く上がったボールを処理したエドゥアルド・マンシャと出てきた渋谷に一瞬の連係ミスが生じ、その隙を逃さずに伊佐が倒れ込みながら左足ボレーでゴールへと流し込んだ。伊佐の迫力ある走力と身体能力が存分に生きたゴールだった。
44分には長沢駿のポストプレーから高畑がクロスを供給し、伊佐と渡邉が飛び込んでわずかに合わない惜しい決定機も生み出す。前半の終盤には甲府に押し込まれる時間帯もあったが、伊佐と長沢の30代2トップの献身的なプレッシングは質も高く、それによって全体のラインを押し上げることも出来ていた、好感触の前半だった。
甲府のウタカ投入で一気に形勢反転
とはいえ甲府がそのまま引き下がるわけがない。後半頭からクリスティアーノをピーター・ウタカに替えると、ウタカを裏に走らせながら、前半の大分がバックパスを巧みに使いながらボールを前進させていたことを逆手に取るように、アグレッシブに守備をハメてきた。
下平隆宏監督もそれは予想していて、出来るだけウタカに攻撃機会を与えないようにとボールを保持するよう指示を出していた。だが、大分は甲府のプレスに慌てたように落ち着きを失い、ミスを連発する。ウタカを警戒するあまり腰が引けたようになり、前半は前進の伏線としてあったバックパスが相手の勢いを引き出すことになった。
一気に甲府ペースになった中で、52分に失点。ウタカの裏抜けからのシュートは安藤がブロックしたのだが、そこからの2次攻撃で松田陸のグラウンダークロスを三平に仕留められてしまった。
テイシェイラ負傷のアクシデントも響き…
58分、下平監督は状況を変えようと疲労の見える長沢を鮎川峻に、渡邉を梅崎司に代える。だがその後、テイシェイラがまさかの負傷。メディカルスタッフが治療を試みたがプレー続行は不可能となり、急遽67分、西川幸之介がゴールマウスを守ることに。同時に伊佐に代わって上夷克典がピッチに入り、システムを5-4-1に変更して守備の安定を図りつつ、鮎川に裏抜けを狙わせた。
だが、甲府の攻撃を跳ね返すのが精一杯でボールを持つことが出来ない大分は押し込まれる流れを改善できず、70分には追いつかれる。三浦颯太の速いクロスに中村亮太朗と競り合ったペレイラのクリアボールがオウンゴールに。西川も必死で手を伸ばしたが、無情にも弾道は指先とクロスバーの間をすり抜けてゴールへと吸い込まれた。
74分には野嶽惇也から上夷へのパスが流れたところを三平につながれて被カウンターとなり、抜け出すウタカを西川が体当たりで倒してしまう。だが、与えたウタカのPKを西川が止め、最初の逆転の危機は脱した。
流れを引き戻すチャンスもあったのだが
ウタカのPK失敗で大分に再び流れが来るかと思われたチャンス。77分、梅崎のスルーパスに抜け出した羽田が折り返す。鮎川が相手を引きつける後ろで受けた野村がシュートを放ったが、体を投げ出した松田に当たった弾道はポストに跳ね返る。こぼれ球に詰めた高畑も相手に阻まれた。梅崎の右CKの流れから最後に放った安藤のシュートも枠上へ。この一連で流れを引き寄せることが出来なかったことが残念だった。
79分には野嶽に代えて藤本一輝。システムは再び4-4-2に戻され、藤本は鮎川との2トップとなった。だが82分、またもPK献上。長谷川のシュートは上夷がブロックしたのだが、その衝撃で倒れている上夷のカバーに入った梅崎が三浦を倒してしまった。今度は長谷川がPKを蹴り、84分、ついに甲府が逆転に成功。85分には三平と宮崎純真を武富孝介と鳥海芳樹に代えた。
90分には鮎川がシュートチャンスを迎えたが枠は捉えきれず。選手交代で時間を使う甲府に逃げ切られ、ショッキングな逆転負けという結果で試合は終わった。甲府に7戦ぶりの勝利を許し、昇格争いには非常に痛い一敗。残り8試合でもう一度、プレーオフ圏内へと食い込みに行くのみだ。