ほとんどの時間帯で主導権を握りながら守備の緩みで3失点。猛追も届かず
非常に手痛い黒星となった。ほとんどの時間帯で主導権を握り先制もしていただけに、取りこぼした感が途轍もなく大きい。
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左サイドが躍動して入りから好感触
ペレイラが出場停止の今節。デルランもペレイラがいるほうがプレーしやすそうというところで今節はベンチスタートに回り、先発は岡山戦から5人を入れ替えて、システムは4-2-3-1に。ボールを握って攻め、守備では前線からプレスをかけていくことを狙いとして試合に入った。
仙台は出場停止のエヴェルトンの位置に鎌田大夢が入ったのみであとは前節の大宮戦と同じメンバー。2CBには古巣戦の若狭大志と福森直也が並んだ。コイントスに臨む中山仁斗に、勝ったらエンドをチェンジするようにとアドバイスしたのは福森だという。若狭と少し話してから中山にそれを伝えたそうで、中山も理由は聞かなかったというが、古巣のスタジアムで何らかの意図があったようだった。
それでも前半は大分のゲームになった。特に左SHに入った野村直輝と左SBの高畑奎汰が近い距離感で連係して好機を多く演出。相手守備陣の好守や精度不足で最初はなかなかシュートを打てずにいたが、頂点の伊佐耕平やトップ下の渡邉新太らも絡んで仙台のブロックにボールを出し入れしながら攻略するなど、主導権を握ったアグレッシブなサッカーを展開していた。
保田の初ゴールで先制も痛恨のPK献上
27分にはFKの流れから齋藤学にシュートを許すが、枠の外へ。30分には高畑のスルーパスに抜け出した野村のマイナスのパスをエリア内で渡邉が受けて潰され、そのこぼれ球を伊佐がつないで最後は町田也真人が左足シュート。これは相手にブロックされたが、31分、先制に成功する。相手と競り合う安藤智哉がヘディングで前線に送ったボールを伊佐が巧みに相手と入れ替わりながら収め、GKと1対1でシュート。林彰洋に正面で弾かれたが、こぼしたボールを押さえに出た林より先に伊佐がスライディングで触り、そこに走り込んできた保田堅心が左足一閃。美しい弾道がネットを揺らした。
生え抜きルーキーのプロ初ゴールで勢いづいた大分は、41分、42分と立て続けに渡邉のシュートチャンスを迎えたが、いずれも林に阻まれる。この時間帯、林は堅守を貫いており、まずはここで得点できなかったことがひとつの課題として後に響いた。
さらに前半アディショナルタイム2分が尽きる頃、自分たちのスローインからロストして、エリア内で安藤が鎌田大夢を倒してしまいPK献上。中山に沈められ、同点で試合を折り返すことになった。
同点弾で仙台に勢いを与えてしまった
暑さの中、ボールを動かして相手を走らせ試合を優勢に進めていただけに、この失点は痛かった。ハーフタイムのロッカールームでは下平隆宏監督も選手たちも口々に「0-0のつもりで戦おう」と気を引き締める言葉を掛け合ったが、仙台にとっては勢いづく同点弾となる。
後半立ち上がりにも大分が攻め込むが、弓場将輝と野村のシュートは若狭に連続でブロックされ、町田のボレーは枠の右に逸れる。だが、仙台も守備をハメにかかり、そこから勢いを増すと57分にはカウンターの流れから松崎快がシュートして枠を捉え切れず。
61分に仙台が中山をホ・ヨンジュン、齋藤を氣田亮真に2枚替えすると、その2分後には大分も伊佐を長沢駿、町田を鮎川峻へとチェンジする。前半は左サイドに偏重していた大分の攻撃が、右サイドも活性化しはじめたが、それがオープンな展開にもつながったかもしれない。仙台のチャンスの回数が徐々に増えていた。
立て続けに2失点。長沢弾で1点は返すも…
67分、仙台に逆転を許す。松崎のクロスに合わせたホ・ヨンジュンのヘディングシュートは西川幸之介が手を伸ばして防いだが、そのこぼれ球を郷家友太に押し込まれた。大分ベンチはただちに動き、69分、渡邉を藤本一輝に交代。藤本が右SHに入り鮎川がトップ下へと移った。
だが、72分には仙台の3点目。押し込まれていた時間帯、守備組織がグダグダになっていたところを、ホ・ヨンジュンのマイナスの折り返しから内田裕斗に合わせられ、点差を広げられた。
完全に仙台に傾きそうな流れを引き戻すように、76分、上夷克典のクロスに長沢が頭で合わせ、まさに真骨頂というシュートで再び1点差に詰め寄る。下平監督は77分、弓場と上夷をベンチに下げて梅崎司と野嶽惇也を投入し、野村をボランチに移すと梅崎を左SHに配置。右サイドで野嶽と藤本のコンビネーションから追撃態勢を整えた。
突き詰めきれない個の甘さが組織の穴を生む
80分にはホ・ヨンジュンのヘディングシュートを西川がキャッチ。81分には仙台が長澤和輝をフォギーニョに代えた。藤本が高い位置を取って3トップ状態を作るが相手も5バックで守備を固める。大分の追撃が続く中、仙台は86分に内田を菅田真啓に、松崎を加藤千尋に代えた。仙台の最終ラインは蜂須賀孝治が左SB、若狭が右SB、福森と菅田の2CBとなる。
仙台が時間を使いながら試合を進める中、大分は立て続けにCKのチャンスを得るがいずれもファウル判定となる。アディショナルタイムは7分。野嶽が巧みにサイドを切り裂いて好機を築き、一度はパスワークで相手守備網を崩しもしたが、最後に野嶽の放ったシュートは枠上へと逸れ、下平監督はピッチを叩いて悔しがった。度重なるセットプレーでも得点できず、迫力の猛追は実らぬままタイムアップを迎えた。
相手に主導権を握られていた時間は短かったにもかかわらず3失点。責任の曖昧な守備のオーガナイズ、判断も含めたプレーの甘さが露呈し、試合後には指揮官も選手たちも、ちょっとしたところで緩みが生じたことを悔やんだ。野村はピッチ外の生活面も含め「J1昇格を目指すチームの選手になりきれていない」と苦言を呈し、渡邉も「練習から死ぬ気でやらないと」と厳しい顔を見せる。残り10試合。負傷していたベテランたちが続々と復帰し、成長を見せる若手もいる中で、チームはどれだけ全員でテンションを高めていけるか。スタッフのマネジメントとそれに応える選手の意識が問われる。