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試合レポート

待望の5試合ぶり白星。難敵・熊本を制し上位争いに食い下がる

 

結果も内容も厳しかった3連戦から仕切り直して臨んだ九州ダービー。サムエルの今季初ゴールに藤本の今季6ゴール目、そして伊佐の活躍からの上夷プロ初ゴールと3得点を挙げ、1失点に抑えて5試合ぶり勝利を掴んだ。

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もう一度取り直したファイティングポーズ

前節までは本当に苦しい戦いだった。主力を中心に経験豊富なメンバーに負傷者が続出し、戦力をやりくりしながら足りないピースを戦術的工夫で埋めつつ目の前の試合を戦ってきた中で、徐々に疲弊していたチーム。イージーなミスでの失点も重なって心身の負荷を増しながら、戦術遂行に力を割かれ、ゴールに向かう勢いや味方をサポートする意識が薄れつつあった。
 
「その匙加減が難しい」と頭を悩ませていた下平隆宏監督。今節はチームのフィロソフィーを再確認するミーティングと、強い陽射しの下で課したタフなトレーニングにより、選手たちにもう一度ファイティングポーズを取らせることに成功した。コンディションの整った戦力を見極めながら、対熊本戦術を練ったコーチングスタッフが採用したのは、相手の特殊なシステムに合わせる形の4-3-3。頂点には第18節・秋田戦以来、今季2度目の先発となるサムエルを据えた。パスワークの得意な熊本に対して、サムエルを起用すれば守備面では少しリスクを負うことになるが、それ以上に、前からハメに来る熊本の背後でターゲットとなって起点を作らせる狙いを優先してその先発起用に踏み切ったのだと、指揮官は試合後に明かした。
 
そのぶん、中川寛斗や野村直輝の走力と献身性が生きた。アンカーの保田堅心は熊本のキーマンであるトップ下の平川怜をケアしながら状況に応じて上村周平を潰しにも出る。

 

先制された5分後にサムカの同点弾炸裂

序盤は互いに好機を窺う展開となった。ボールは熊本に握られたが、大分も野村や中川が上手くサムエルと藤本一輝を使ってチャンスを狙う。16分には粟飯原尚平がフィードに抜け出し松岡瑠夢がつないだところから竹本雄飛にシュートを許すが、西川幸之介がしっかりと弾き返した。
 
34分には大分がビッグチャンス。相手陣中央でボールを収めた藤本からのパスを受けた野嶽惇也が、ボックス内を斜めに走って顔を出した野村に預けると、野村は背負った相手を独力で剥がしてクロスを供給。苦しい体勢からで難しいところに飛んだがサムエルがボレーで合わせ、弾道はわずかに枠の左に逸れた。
 
36分、セットプレーから熊本に先制点を許す。平川の左CKはゴール前の密集を大きく越え、後方から勢いよく走り込んできた黒木晃平が見事な右足ダイレクトボレー。ボレーを得意とする黒木とはいえピンポイントの精度は素晴らしく、それを生かしたデザインプレーに、為す術なくネットを揺らされた。
 
だが、41分には大分が流れから魅せた。自陣に構える熊本を前に中央でボールを持った野嶽はまず藤本に預け、阿部海斗と黒木が藤本に食いついた背後に走って受けた。すぐにカバーに入った島村拓弥の隙を突いて送ったクロスにサムエルがダイレクトで合わせ、マークについていた相手をものともせずに同点弾をゲット。待ちかねた背番号9の今季初ゴールに、チームは沸いた。
 
45分にはゴール正面でパスを受けた島村への寄せが間に合わずシュートされたが、西川のファインセーブでしのいで試合は1-1で折り返す。

 

新太の機転から藤本が追加点

ハーフタイムには両軍が動いた。熊本は1トップ粟飯原を伊東俊に、大分は右WG松尾勇佑を渡邉新太に交代して後半をスタートする。
 
50分には安藤智哉のクリアボールを伊東に拾われまたも島村にシュートされるが、これも西川が触って枠上へ。機動力を増した熊本に苦戦するかとも思われたが、2点目を挙げたのは大分だった。53分、デルランから相手の背後へと浮き球を引き出したのは、中寄りに立ち位置を取っていたという渡邉。スペースを見つけてエリア内でボールを収めると、サポートに走ってきた藤本がそれを引き継ぎ、得意の足技で相手GKを惑わせ落ち着いてゴールを奪った。藤本は今季6点目。
 
66分にはゴールに迫る島村のボールをデルランが奪ったところから、中川、野村が素早く前へとつなぎカウンター発動。サムエルのポストプレーを受けた藤本のクロスは相手にクリアされたが、こぼれ球を拾った渡邉がシュート。田代琉我にセーブされたところを渡邉が落として中川がシュートし、これもブロックされると最後は保田。得点には至らなかったが迫力をもってゴールに迫る場面を作った。

 

伊佐の迫力が上夷のゴールを呼び込む

67分、大木武監督は島村を道脇豊に交代。12日の天皇杯3回戦・鳥栖戦で終盤に出場し、自身のプロ初ゴールを含む2点を挙げて劇的逆転勝利に貢献した17歳だ。
 
飲水タイムを挟んだ71分、下平監督はサムエルを伊佐耕平に、中川を鮎川峻に代えて布陣を4-4-2に変更。伊佐は早速見せ場を作り、最初のシュートは相手にブロックされたが、それによって得た左CKから73分、伊佐らしいプレーで3点目を呼び込む。野村のキックに気合満点で飛び込んだ迫力のダイビングヘッド。それ自体は田代に阻まれたのだが、そのこぼれ球が藤本に当たったところを上夷が押し込んでリードを2点に広げた。上夷はこれが5年目にしてプロ初ゴール。
 
76分、竹本を田辺圭佑に代えて追撃する熊本。79分には自陣でボールロストしたところから松岡にシュートを許すピンチも、相手の精度不足に助けられる。大分は80分、足を痛めた野村に代えて池田廉。83分には走り続けた保田も足をつらせて弓場将輝に交代した。84分にはその弓場がシュートチャンスを迎えるが枠の上に逸れる。

 

西川のファインセーブ連発で連敗ストップ

最後は追撃する熊本を、しっかりとブロックを構えて跳ね返す終盤に。渡邉の対人守備も光る中、89分には鮎川がループシュートを狙う惜しいシーンも。
 
5分のアディショナルタイムには平川のワンタッチシュートが枠上に逸れ、田代も加わってのパワープレーで熊本の左CKが続く中、平川のシュートはデルランがブロックし、阿部と上村のシュートは西川が好セーブして追加点を与えない。熊本の猛追と大分の守備の集中のせめぎ合いは、大分に軍配。試合は1-3で終了し、大分は5試合ぶり、後半戦最初の白星を掴んだ。
 
前日に東京Vが徳島とスコアレスドローだったため、3位・東京Vと勝点で並んだ。得失点差は相手の「16」に対しこちらは「1」。藤枝を4-1で下した磐田が2位に浮上。首位の町田は秋田の記録的大雨のため今節は開催中止となった。前節までの閉塞感を払拭してタフな上位争いに食い下がった今節。第19節・甲府戦以来の複数得点にも勢いを得て、ここからもう一度巻き返していきたい。