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試合レポート

4連勝への壁越えられず。ビルドアップには手応えも決定力と試合運びに課題

 

1点リードして守備固めに入るも守りきれず、初の4連勝にはまたも届かなかった。共通認識が高まった部分とまだ足りていない部分とが際立っての、勝点1止まり。指揮官も選手たちも試合後に悔しさを滲ませた。

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千葉はメリハリある守備で大分を潰しに来た

互いにやりたいことに粘り強くトライし続け、その駆け引きが非常に見応えのあるものとなった。ただ、互いに複数の決定機を築きながらいずれも仕留めきれず、ともにPKで1点ずつを挙げたのみ。後半戦最初のゲームは、勝点1ずつの痛み分けとなった。
 
ここ2戦は0トップシステムで戦っている大分を、小林慶行監督はロジカルな守備で抑えに来た。最後尾からのビルドアップには激しくプレスをかけ、それをかいくぐった大分が前進してからは中川寛斗と野村直輝が自由に動いて流動的になるのに対し、構えて粘り強くしのぐ。中を閉めながらも藤本一輝には枚数をかけて対応し、逆サイドでは上夷克典の攻め上がりに先手を取るかのように、左SHの高木俊幸が高い位置を取ってペレイラからのパスコースを消した。
 
立ち上がりの千葉の激しいプレスに面食らううちに、相手にセットプレーのチャンスを与えた。12分にはカットインした高橋壱晟のパスに走り込んできた田口泰士を倒し、ゴール正面でFKのピンチ。田口が自ら放った弾道は西川幸之介が片手で触ってクロスバーに弾かれた。
 
14分には大分も決定機。西川のフィードに巧みに抜け出した藤本のクロスに野村が飛び込む。だが、ヘディングシュートは新井章太のセーブに遭い、ボールはもう一度野村に当たってラインを割った。18分には千葉がGKからボールをつないで前線まで運ぶと、最後は米倉恒貴のクロスに小森飛絢が頭から突っ込んだが、西川が正面でキャッチした。26分には再びゴール前でFKを与える。今度は佐々木翔悟が蹴り、わずかに枠上に逸れた。

 

立ち位置の修正で次第に好機を増やす

千葉のハイプレスに対応するために、中川が中盤の底にまで下りて組み立てに参加したり、弓場将輝と池田廉のいずれかが最終ラインに落ちたりと工夫を重ねる大分。だが、パスミスも多発してなかなかスムーズにフィニッシュまでの形を作れない。対する千葉も、ボールを奪ったにもかかわらず大分のプレスを嫌ってバックパスや横パスが多くなり、息詰まる駆け引きが続いた。
 
34分には相手の間で松尾勇佑のパスを受けた野村がミドルシュートし、新井に掻き出される。40分、ハーフスペースを攻め上がった上夷が右サイドのローテーションから抜け出して折り返し右CKをゲット、そこからビッグチャンスが生まれた。野村のキックは中で合わず逆サイドに流れ、拾った高畑奎汰が自慢の左足でゴール前へと送る。美しい弾道にまず弓場が潰れ、その後ろで安藤智哉が右足で合わせたが、クロスバーに弾かれた。安藤はそのこぼれ球をもう一度、頭で押し込もうとしたが体を張る千葉の守備陣に掻き出されてしまう。
 
43分には相手のスローインを弓場が奪い、松尾にスルーパス。フリーで抜け出した松尾だったがトラップが乱れ、シュートは枠をわずかに外れた。44分には後方で組み立てに参加していた中川が前線に浮き球を送り、藤本が上手く相手と入れ替わってヒールで落としたところを高畑がシュート。これも枠の右に流れ、試合は0-0で折り返す。

 

エリア内に攻め込んで獲得したPKで先制に成功

後半立ち上がりには立て続けに好機を築いた。西川のフィードからのセカンドボールを拾った弓場が左に展開し、藤本が抜け出した高畑に送ってクロス。だが、野村がシュート体勢に入る前に相手にクリアされた。47分には相手のクサビを安藤がカットし、野村に預けながら自らゴール前まで攻め上がる。野村から中川へと託されたボールは抜け出した藤本へと渡り、藤本が左足で狙ったが枠は捉えきれなかった。
 
51分には池田の背後から小林祐介がボールを奪い、シュートに持ち込もうとするところを西川が対応。そのこぼれ球を見木友哉がシュートしたが、安藤が体を張って西川がキャッチする。53分には藤本がカウンターで持ち上がって右足シュートを放ち、相手に当たって枠上に逸れた。55分には小森がフィードに抜け出してマイナスに折り返し、田口が飛び込んでのシュートが枠外へ。互いに好機を築きながら、いずれも仕留めきれずに激しい攻防が続く。
 
だが、ついにスコアが動いた。58分、池田の縦パスからエリア内に攻め込んだ大分。藤本が受けてゴールに向かおうとするところを小林に倒され、PKを獲得した。キッカーは野村。左隅に確実に沈め、先制に成功した。
 
千葉はただちに怒涛の3枚替えで追撃態勢に入る。小森、高木俊幸、米倉を呉屋大翔、新明龍太、田中和樹へと攻撃陣を刷新。古巣戦に強いと自認する呉屋が早速、68分にヘディングシュートの形を作った。
 
72分には両ベンチが同時に動く。大分が松尾と中川をサムエルと渡邉新太に、千葉が田口を風間宏矢に交代。サムエルが頂点に入り渡邉と縦関係、野村は右SHへと移る。

 

交代策が上手く機能せず相手の流れに

だが、この交代が試合の流れを大きく左右することになった。中川がいなくなり野村がサイドに移ったことで、中盤では千葉が主導権を握り、流動性を増してポゼッション率を高めた千葉が一気に好機を増やしていく。呉屋もボールを要求するように、何度も下りては顔を出した。大分は構える時間帯が多くなり、サムエルと渡邉を上手く生かしきれない。立て続けのセットプレーにも粘り強く対応していたが、流れの中で守備が後手に回りミスが重なった78分には呉屋にシュートを許し、わずかに左に外れて命拾い。下平隆宏監督は79分、疲労した弓場をベンチに下げ、前への勢いを増すように保田堅心を投入した。
 
完全に千葉ペースに傾いていた84分、サムエルが倒されて相手陣右サイドでFKを得たタイミングで、下平監督は池田と藤本をデルランと屋敷優成に代え、5-4-1の布陣で逃げ切り態勢を取った。FKは高畑が蹴り、ファーで折り返した安藤のヘディングはまたもポストに当たってしまう。
 
86分にはサムエルのポストプレーを受けた保田がリズミカルに前線に運んでシュートにまで持ち込んだが枠の上。そのあとに陣形を整えたとき、指揮官は想定外の光景を目の当たりにした。サムエルが右サイドに位置取り、渡邉が中央という立ち位置になっている。渡邉が背中でコースを切ってサイドに出させたところで、ボールを受けた佐々木に対応したのはサムエル。その寄せが甘く佐々木にアーリークロスを入れられ、安藤が対応して左CKに逃れた。この左CKを風間が蹴ると、ファーで鈴木大輔と競ったのは野村。空中戦でバランスを崩して上がった野村の手にボールが当たり、ハンドを取られてしまう。PKを見木に決められ、89分に同点に。

 

成長した部分と未成熟な部分があらわに

試合後の会見で、下平監督は嘆いた。デルラン投入で5バックにしての逃げ切りは、リーグ戦直近3試合の勝利の方程式となっていた試合の閉め方だった。当然、指揮官としてはそれも共通認識の大前提と考えていたのだが、サムエルがサイドの守備を担うという予期せぬ図式。「何故サムエルが右に入ったのかが僕も理解できない。それは上手く伝わらなかったので僕の責任だが」と、CKを与えることになった一連の流れを悔しがった。
 
6分のアディショナルタイムには安藤が前線に上がりパワープレーで追加点を狙ったが、少し前のプレーで負傷したペレイラが動けず、カードを使い切っていた大分はペレイラが前線に上がる形を取る。最後は千葉にFKやシュートを許し逆転の危機にまで陥る中、相手の精度不足と水際の守備で、なんとか1失点に抑えてタイムアップを迎えた。
 
相手の守備に対して立ち位置を変えながらビルドアップし、流れを引き寄せたことはチームの進歩だった。試合後に高木俊幸は「相手の修正能力も高く、中川選手と野村選手あたりの質の高さが、この試合を分けたかと思う。ビルドアップの形も変えてきて、こちらは背中で切りながらプレスに行かなくてはならないので、ボールホルダーに対して100%のプレッシャーはかけづらかった。そこの相手のポジションの修正、ポゼッション能力の高さを感じた」と試合を振り返った。
 
0トップシステム採用後、選手交代前に初めて得点できたのも収穫のひとつだ。一方で、サムエルにサイドの守備を託す未熟さも、チームにはあった。選手交代後の試合運びとともに、数ある得点機で仕留めきれなかったところも課題として残されている。4連勝への壁は厚い。

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