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試合レポート

追加点が取れず、焦りから失った勝点2。収穫は貪欲に次につなげる

 

前節からの立て直しを期し、メンバーとシステムを大幅に変更して挑んだが、1点のリードと数的優位を生かせず結果は負けに等しいドロー。それでも今節の収穫を、貪欲にこれからにつなげていきたい。

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守備ベースで組んだ4-2-3-1

前節の大敗からの立て直しを期して臨んだ今節。3連戦の3戦目、準備期間は中3日というスケジュールの下、下平隆宏監督はメンバーとシステムを大幅に変更し、まずは戦う姿勢の回復に的を絞った。
 
前節から先発7名を変更し、システムは4-2-3-1。苦戦した熊本戦、山形戦と同様、攻撃時に3トップの左右がワイドに張る長崎に対し、守備戦術の観点から4バックを採用した。長崎の数多い強力な攻撃陣のうち誰が出てくるかが読めない中で、対人強度の高いペレイラとデルランを2CBに並べ、ボランチの一角には今季初先発の羽田健人を配置した。
 
立ち位置で意表を突いた大分がサイドを起点にチャンスを作り、長崎はエジガル・ジュニオを軸にして攻めるが、互いに集中した守備で対応する。18分には野嶽惇也がゴール正面20mほどの位置で倒されて得たFKを高畑奎汰が直接狙って枠の上。24分には西川幸之介の縦パスをエジガルに引っ掛けられたがシュートは枠の右へ逸れた。

 

退場者を出した相手に先手を取った前半

25分、野村直輝を倒した宮城天にこの日2枚目のイエローカードが提示され、長崎は長い時間を10人で戦うことに。トップ下のクレイソンを左SHに回して4-4-1の布陣で対応するが、失点を避けたい意識が重心を低くし、孤立するエジガルは起点を作ることが出来なくなった。
 
そんな長崎にじわりと数的不利を突きつけるように、大分は攻め続ける。33分には羽田のシュートが枠上へ。羽田は37分にも右CKの流れからヘディングシュートを放つが、これも枠を捉えきれなかった。39分にようやく先制点が生まれる。野嶽の縦パスを収めた藤本一輝が得意の個人技で相手を剥がし、ゴールネットを揺らした。
 
45分には藤本のクロスに宇津元伸弥が飛び込んだが、波多野豪に防がれ、試合は1-0で折り返す。

 

攻守をシンプルにした長崎の反撃に遭う

長崎はハーフタイムに2人を代えて後半をスタート。笠柳翼を岡野洵に、クレイソンを高橋峻希に代えると、高橋は左SBに入り米田隼也と増山朝陽を一列上げる。「こういう展開だったので技術よりも力を持ってプレーできる選手を使いたかった」とファビオ・カリーレ監督は試合後に説明した。
 
シンプルに前への勢いと強度を増す作戦が奏功して、後半は立ち上がりから長崎がペースを握る。以後は個のポテンシャルを生かしてセットプレーからチャンスを増やし、大分を押し込んだ。
 
51分、増山のロングスローの流れから櫛引一紀に放たれたシュートは西川が掻き出してことなきを得たが、その一方では、こぼれ球に反応した町田也真人のシュートが波多野にファインセーブされるなどして、大分はなかなか追加点を奪えない。ハーフタイムには数的不利の相手に勢いを損なわず2点目を取りに行こうと心をひとつにして臨んだのだが、これ以上の失点は出来ないとゴール前を固める相手を前に、逆に点を取りにいく意識が前面に出過ぎたのか、攻め急ぐ印象になっていた。

 

徐々に余裕を失ったように見えた終盤

長崎は66分、エジガルを澤田崇に代えて大分の背後を狙わせる。大分は68分に町田を佐藤丈晟に、宇津元を伊佐耕平に2枚替えして勢いを保った。
 
追加点を狙う大分だが、攻撃が単調でことごとく相手に跳ね返されてしまう。試合の流れが徐々に相手に傾くのを感じてか、1人少ない相手に1点リードしている状況ながら攻守に余裕のない様子になっていた。それを象徴するような焦った守備が、相手の同点弾につながってしまう。ペナルティーエリア右で仕掛ける増山を3人で囲んで倒し、与えたFK。増山が蹴り、ヴァウドがフリーで飛び込んでのシュートは西川が弾いたのだが、至近距離で狙っていたカイオ・セザールに頭で押し込まれた。
 
長崎は78分、増山を都倉賢に代え、澤田を右SHに移して都倉を頂点に置き前線にパワーをかけてきた。大分は82分に野嶽を弓場将輝に、上夷克典を茂平にチェンジし、それでも得点を奪えないと88分、疲労した藤本を安藤智哉に代えて野村を左SHに移し、安藤を頂点に据えてパワープレーに出た。だが、最後まで安藤がいい形で勝負するチャンスは生まれず、試合は1-1でタイムアップする。

 

組織としての若さが露呈した一戦

数的優位も先制点も生かせず、勝点2を失った試合だった。追加点が取れなかったことがつくづく悔やまれる。
 
長崎の最終ラインは、SBがサイド攻撃の対応につり出されてもスライドすることなく2枚のCBがゴール前を固め続ける。SBとCBの間のスペースはボランチが下りてカバーする形だ。その堅い守備を崩すには、もっと揺さぶりをかけるなりの工夫が必要だった。波多野に防がれた町田のシュートはその形から生まれている。古巣戦の後半からディフェンスリーダーを務めた岡野は「失点しないようにしながら下がりすぎることなく、上手くバランスを取って守れた。(相手の攻撃は)もっとやり直されたりしたほうが嫌だった」と試合後に振り返っていた。
 
試合後会見で質問に答えて指揮官は、出場を予定していたFWが負傷して急遽メンバー変更した旨を明かした。それによってCFの特徴が変わったのであれば、出た選手に合わせたフィニッシュを選ばなくてはならない。前節も2トップにしたもののなかなかそこにボールが入らず、今節は安藤に配球できなかった。早急に詰めていきたい改善点だ。
 
前節のダメージを回復し、勢いをつけて追加点を取りにいく、その思いが強すぎたのか、組織としての若さが露呈して勝点2を失った一戦。ただ、連戦中ながら戦術変更してその狙いがハマっていたことや、複数名が今季初出場・初先発を果たしたことは、前節からの立て直しにある程度成功し、今後につながる材料として前向きに捉えたい。厳しい3連戦が終わり、チームは次節、1週間の準備期間を経てアウェイで秋田に挑む。

うれしそうに挨拶してました