平日昼、悪夢の“夢スコア”。相手のプランにハマりなす術なく大敗
気温30度を超える灼熱のピッチで、チームは相手のカウンターを止められずに失点を重ねた。立ち位置変更での対応も焼石に水といった具合で、終わってみれば0-5の大敗。次節まで中3日、敗因の検証が急務となる。
試合情報はこちら
立ち上がりから相手に自由を与えてしまう
山形の3トップの両WGがやけに張っていて、3バックを広げに来ているようだった。縦関係になるボランチのアンカーを務める保田堅心が相手トップ下の國分伸太郎を捕まえきれず、自由にゲームメイクさせてしまう。こちらがボールを持てば、前節の熊本戦で苦しめられたのと似たマンツーマンディフェンスで連係を阻みに来る。それなら西川幸之介にまでプレスに来させればいいと辛抱強く後ろでボールを動かすが、その誘いには乗ってくれず、ただプレスを受けてパスの精度を削られ、立ち上がりから繰り返しカウンターピンチを招いた。
それでも8分には野村直輝が中央でデュエルに勝ち藤本一輝にパス。だが藤本のシュートは後藤雅明に阻まれた。12分には中川寛斗の左CKの流れから最後はペレイラが惜しくも合わず。
16分に裏に抜け出したチアゴ・アウベスはオフサイド判定だったが、17分に藤田息吹に奪われてからのショートカウンターではチアゴにシュートを許し、枠上へ。ペレイラがチアゴに1対1で上回られる場面が続き懸念した矢先の19分、最初の失点を喫した。チアゴのドリブルはペレイラが止めたのだがこぼれ球を拾った國分にクロスを入れられ、藤田が押し込んで山形が先制。GKを組み込んだビルドアップで相手を食いつかせるためには、リードするか最低でもイーブンなスコアでなくてはならず、ビハインドになったことで戦況は少し難しくなった。
立ち位置変更で対応も痛かった2失点目
山形は大分陣内で速い攻撃を仕掛け続ける。24分、藤田の斜めのパスに藤本佳希が走り込むところは西川が飛び出して防いだ。大分は27分、29分と左サイドからクロスを送るが相手にクリアされてシュートにはつながらない。36分には藤本一のクロスが流れたところから最後は中川のクロスに伊佐耕平が反応したが、弾道は枠上へと逸れた。
前半の途中から下平隆宏監督は、茂平を最終ラインに下げ、中川を右SHに張らせて野村をトップ下に置いた4-2-3-1へと立ち位置を変更。相手へのマークをシンプルかつ明確にすることで戦況を修正しようとし、それはある程度、手応えを感じさせてもいた。そのまま前半を乗り切れば、ハーフタイムに後半の戦い方を整えることが出来る。
そう思っていた前半アディショナルタイムに、セットプレーから2失点目を喫した。國分の右CKに飛び込む熊本雄太についていた安藤智哉のクリアは正面に飛びあわやオウンゴールとなるが、これを西川が掻き出す。だが、そのこぼれ球に素早く反応したチアゴに右足で押し込まれ、点差は2に開いてしまった。
システム変更でわずかに光明が見えるも…
後半あたまから、下平監督は大きく動いた。伊佐、野村、中川の1トップ2シャドーをベンチに下げ、宇津元伸弥、町田也真人、上夷克典を投入する。前半途中から取っていた4-2-3-1のフォーメーションで、最終ラインは右から上夷、ペレイラ、安藤、香川勇気。両WBがSHとなり、頂点に宇津元、トップ下に町田という布陣。枚数を合わせて逆に相手にマンツーマン気味のプレスをかけに行き、修正の方向性は見えたようだった。
だが、2点を追う背後を突かれての被カウンターが止まらない。50分には安藤が、ジャッジによっては厳しいものとなりかねないファウルで相手を防ぐことになった。52分にはさらなる大ピンチ。長いスルーパスに抜け出したチアゴにドリブルで独走を許し、飛び出した西川も簡単にかわされるが、カウンターの勢い余ってシュートはサイドネットに逸れ命拾いした。
56分にはようやく好機。町田がワンツーで相手を剥がしてペナルティーエリア中央の宇津元にパスを送るが、宇津元はあっという間に相手に囲まれてシュートを打つことが出来ず。60分、香川のFKにきれいに合わせた安藤のヘディングシュートは、相手の巧みなラインコントロールによりオフサイドを取られた。リードに余裕のある相手は布陣をコンパクトに保ち、効率的に守りながらカウンターを狙っていた。
前がかりの背後を使われ失点を重ねた終盤
62分、山形がチアゴとイサカ・ゼインの両WGを加藤大樹と横山塁に2枚替え。その3分後の65分、スローインの流れからドリブルで仕掛けた横山にペレイラがかわされ、ニアを射抜かれて3点目を奪われた。なんとか戦況回復へとつないでいた望みの糸が、ここで切れたようにも思われる、痛いタイミングでの失点だった。
点差が開き、下平監督は茂をベンチに下げてサムエルを投入。町田を右SHに移してサムエルと宇津元の2トップとした。後半に投入されて以後、何度も攻撃参加して打開を図っていた上夷が71分に上げたクロスに、サムエルが飛び込むが惜しくも合わず。
75分には山形が國分を田中渉にチェンジ。79分、浮き球に抜け出した田中がファーに送ったクロスは、走り込む藤本佳にわずかに合わない。そして82分、スルーパスに抜け出した横山のグラウンダークロスはペレイラがスライディングで掻き出したのだが、そのこぼれ球を加藤に沈められ、点差は4に開いた。
83分、大分は弓場将輝を野嶽惇也に交代。野嶽の交代は少し前に一度検討されていたのだが、野嶽は一度脱いだビブスを再び着てアップに戻っていた。ベンチワークにも迷いが見られた場面だ。一方の山形は迷いなく気持ちよく得点を重ねる。85分、前がかりになった大分の背後へと藤田がアバウトに蹴ったボールは西川が猛ダッシュして無事に収めたのだが、その西川のボールを背後から横山が突き、こぼれ球を拾った藤田が自陣からロングシュート。ボールが無人のゴールへと転がるのを、西川も振り向いて見送るしかなかった。
86分、山形は藤田を岡﨑建哉に、藤本佳を後藤優介に交代。これだけ点差が開いても山形は最後まで姿勢を緩めず、3分のアディショナルタイムも使い切って5得点無失点での大勝を完遂した。
敗因の検証とチームの立て直しが急務
平日13時30分キックオフというスケジュール、そして過酷な真夏日にもかかわらず山形まで応援に駆けつけた約150人のサポーターの前で起きた、悪夢のような現実。大分側の誰にとっても、うなだれるしかない内容とそれに見合った結果だった。
この敗因がどこにあるのかは、至急かつ厳密に検証しなくてはならない。立ち位置の修正で戦況打開を図ったはいいが、要所となる選手個々のパフォーマンスがあまりに低く、修正の狙いは十分には表現されなかった。そのパフォーマンスに、30度を超える暑さと中3日での疲労が影響していたのか、あるいはなんらかの理由でプレーに迷いが生じていたのか。
先発した1トップ2シャドーがベンチに下がって以降、ピッチにはリーダーが不在なように見えた。西川、安藤、保田と若く経験も浅いセンターラインに多く皺寄せが来る展開は厳しかった。経験豊富な前線の3人がいかに献身的に布陣のウィークポイントをカバーしていたかが逆説的に証明されたかたちだ。戦力の組み合わせも結果的によくなかった。マンツーマンディフェンスの相手に対しドリブルで剥がしてスペースを作ることが出来る野嶽がいなかったことも痛かったし、相手へのマークをピッチ内で整理できる選手もいなかった。2トップに変更して以降、2トップの意図も表現できないまま。メンバー固定気味で戦っていることにより相手に対策されているここ数試合、新たな主力候補が台頭して戦術の幅を広げなくては、このスタイルを維持するのは困難なこととさえ思われる試合だった。
不本意にも渡邉晋監督の真骨頂をただただ披露させてしまった一戦。相手にとってはあまりにイージーモードだったのではないか。自分たちの不甲斐なさを噛み締めるだけ噛み締めて、すぐに次節・長崎戦。中3日での立て直しにはいつも以上のパワーが必要そうだが、ここはいちばんの踏ん張りどころだ。