前節に続き3得点。可変システムの山口を強く巧みに攻略して今季2度目の3連勝
試合前の予想を大きく上回る5744人の入場者がホームアドバンテージを演出してくれた、今季初の平日ナイトゲーム。前節に続く3得点で山口を下し、今季2度目の3連勝で単独首位に浮上した。
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山口の可変システムにも落ち着いて対応
ともに前節から中3日での、3連戦の2試合目。名塚善寛監督は前節の栃木戦(1△1)から先発5人を入れ替えて大分へと乗り込み、下平隆宏監督は前節のいわき戦(3○1)と同じ先発メンバーで、この一戦に臨んだ。
山口は可変システムで大分のビルドアップを阻みにかかる。守備時には吉岡雅和が最終ラインに落ちて5バックを形成すると、マッチアップする藤本一輝をがっつりマーク。大分の3バックの前にはトップ下の池上丈二を真ん中に、右に梅木翼、左に小林成豪が並ぶ形になる。そうやって枚数を合わせることで藤本と茂平の両WBをケアするとともに、野村直輝と中川寛斗の2シャドーはSBの前貴之と沼田圭吾がそれぞれマーク。大分の攻撃の要を抑えつつ、シャドーにボールが入ったタイミングでSBがボールを奪えれば、ハーフスペースから効率的に攻撃をスタートすることが出来るという、理にかなった戦法だった。
だが、逆に大分は、タイトにマークしてくる相手を動かすポジショニングでスペースメイクしながら、立ち上がりから好機を量産する。オープニングシュートは野嶽惇也のミドル。吉満大介の正面だったが、チームに勢いをもたらした。12分、野村のスルーパスに抜け出した藤本が吉満と1対1の決定機を迎えるが、浮かせた弾道は枠の左へ。24分には上夷克典のロングフィードが伊佐耕平を目指すと思いきや、その背後から走り込んだ野村がシュートしてわずかに枠の右。28分には中川のFKを伊佐が頭で叩きつけて枠の右。33分、藤本のクロスに合わせた中川のバックヘッドも枠外へ。
ペレイラの家族来日歓喜弾と藤本今季2点目
攻めに攻めながらなかなか得点できずにいた大分だが、ようやく43分、先制点を挙げる。伊佐が倒されて得たFKはペナルティーエリア手前左、直接ゴールを狙える位置。キッカーの野村は直接狙うと見せかけて、やわらかく壁を越える弾道。そのニアに飛び込んで頭で仕留めたのは、試合前々日に待望の家族来日でテンションを上げているペレイラだった。
試合後にペレイラが明かしたところによると、野村からの指示は伊佐経由でペレイラに伝わったという。ゴールシーンではペレイラの背後に伊佐も飛び込んでおり、こぼれ球への準備も完璧なデザインプレーでのゴールだった。
45+2分には2点目も生まれる。デルランのクサビを受けた藤本が巧みなターンで相手と入れ替わり、ドリブルでスピードに乗って持ち上がるとそのままシュート。
山口は45+1分、池上の左CKに合わせた梅木のシュート1本のみ。相手を動かすビルドアップからゴールに迫り続ける大分はアウェイチームを内容的に圧倒して、試合は2-0で折り返す。
嫌な流れを断ち切る、野嶽絡みの豪快野村弾
ともに交代なくスタートした後半も、最初のチャンスは大分。49分、野村のスルーパスを受けた藤本のシュートは枠の右に逸れた。
守備を修正しつつ攻撃でも前への意識を強める山口は60分、佐藤謙介を矢島慎也に代えて攻撃色を強める。62分には相手陣でのスローインの流れから神垣陸が強烈な左足シュートを放ち、枠の右へ。だが、矢島が軸になってボールを動かしていた68分、沼田圭吾の浮き球のファーへのクロスに池上がスライディングで合わせ、1点を返した。
畳み掛けたい山口は小林成豪を松橋優安に、吉岡を高木大輔に2枚替え。ここで勢いづかれるのは避けたい流れだ。それを断ち切るように72分、殊勲の3点目。相手陣でボールを動かしながら山口を攻略する中で、野嶽が野村とのワンツーで中央突破を試みる。相手に行手を阻まれるとヒールで落とし、そこにいた野村が左足を振り抜いた。強烈なシュートは掻き出そうとした吉満の左手に弾かれながらもゴールネットを揺らす。
73分、下平監督は伊佐を長沢駿に、藤本を高畑奎汰に代えて終盤を戦う態勢を整えた。
しっかり試合を閉めた交代選手の活躍
76分にはセンターサークル付近でインターセプトした長沢が持ち上がり、ペナルティーエリア内へ。相手の帰陣にシュートのタイミングを逸し、サポートに上がってきた高畑へと託すが、高畑も相手に囲まれて打つことは出来ず。80分には高畑のクロスが長沢にわずかに合わなかった。
80分には両軍同時に2枚替え。山口が池上を五十嵐太陽、梅木を大槻周平に代え、大分は野嶽を羽田健人、野村を梅崎司にチェンジする。81分には五十嵐のマイナスの折り返しから大槻にシュートを許すが西川幸之介がキャッチ。86分には沼田の大槻への低いクロスをペレイラがカットした。87分にはカウンターを発動した梅崎からボールを受けた高畑の思い切りのいいシュート。これは吉満に触られてクロスバーに弾かれる。
88分、デルランに代わって安藤智哉がピッチへ。安藤が真ん中、上夷が左CBに回る。90分、松橋のシュートは枠外へ。90+1分には前のシュートを梅崎が体を投げ出して防いだ。4分のアディショナルタイムにはゴール裏から『トリニータ・オーレ』の歌声が。落ち着いて試合を閉めると、大分は今季2度目の3連勝。ホーム連勝記録を5に伸ばした。また、ヤマハスタジアムで町田が磐田と引き分けたため、大分が順位を入れ替えて首位浮上。次節の頂上決戦に、上の立場で挑むことになった。
平日ナイトゲームにもたらされたホームアドバンテージ
ロジカルに大分対策を施してきた山口と、それを受けて柔軟に上回りに行った大分との、見どころの多い好ゲームだった。昨季まで大分で愛され、初めての古巣戦となった小林成豪が立ち上がりに接触プレーで倒れ込んだときには、両軍のサポーターがその身を気遣い、プレーに戻ったときには拍手が沸き起こった。
今季初の平日ナイトゲームとあって、前売りチケットの販売数などから予想されていた入場者数は4000人に満たないレベル。クラブが当日券半額企画などでアピールする一方で、監督やスタッフ、選手たちもSNSなどで来場を呼びかけ、クラブスタッフも試合開始直前までスタグル情報などのSNSを更新し続けた。
その甲斐あってか当日券売場には長い列。発表された入場者数は5744人だった。選手入場時にスタンドを彩った青いペンライトやワンプレーに沸くサポーターの声が、ホームアドバンテージを演出したことは間違いない。
平日にもかかわらずアウェイサポーターも多く山口から駆けつけていた。次は8月6日の第29節、大分が山口の本拠地へと乗り込む。真夏の維新はひどく蒸し暑いはずだ。