1万5705人が集まったレゾナックドーム大分で、ホームでも白星スタート
ドームに響く声援に後押しされ、苦しい時間帯も全員でしのぎ切って勝ち取ったホーム開幕戦の白星。連勝スタートでぐっと勢いに乗りたい。
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今節もハイプレスでペースを握った前半
3年ぶりに声出し応援が解禁された早春のスタジアム。チャンスやピンチに揺れる青いスタンドは、入場者数が1万5705人と発表されたときにもどよめいた。キックオフ前にはアルベルト城間氏による『勝利のうた』の生演奏や小澤正風社長と松本怜CROの挨拶、昨季かぎりで現役を引退した小林裕紀氏のビデオメッセージなどにより士気を高めたレゾナックドーム大分。ホームチームの勝利を願うサポーターたちの応援に後押しされながら、戦いの火蓋は切って落とされた。
今季のホーム開幕戦で迎え撃つ、技術も戦術も確かな東京V。その巧みなビルドアップを、チームはキックオフと同時に激しい前線からのプレスで阻みに行った。前半、こぼれ球への予測がハマっていたのが弓場将輝だ。何度もセカンドボールを拾っては攻撃へと切り替えると、東京Vに攻める隙を与えない。
だが、昨季から6試合無失点連勝中の東京Vの守備も堅かった。相手アンカー脇でボールを受け強弱をつける野村直輝とのコンビネーションから茂平が突破して立て続けに築いた好機は、ゴール前で防がれる。ポゼッションしながら相手を動かして仕掛けた24分の分厚い攻撃も跳ね返され、32分には野村の2本のシュートが相手守護神マテウスのファインセーブに連続で掻き出された。
時間経過とともに東京Vも少しずつ攻撃の形を作るようになってきたが、28分、野嶽惇也のパスをインターセプトした齋藤功佑のシュートはその野嶽がブロック。38分にようやく東京Vらしくボールを動かして築いた河村慶人のクロスからの決定機も、杉本竜士のヘディングシュートは枠を捉え切れなかった。大分も45分、野嶽の抜け出しからビッグチャンスを作るが伊佐耕平へのラストパスは通らず、試合はスコアレスで折り返す。
疲労と相手の変化により苦しい時間帯に
杉本を加藤蓮に代えて後半をスタートした東京Vはビルドアップ時の立ち位置を修正し、背後へのボールを増やす。それにより後半立ち上がりは前半のようにプレスがハマらず、相手の時間帯に。だが、デルランが藤本一輝へと送った浮き球パスで獲得した左CKから、54分、大分が流れを手繰り寄せる先制点を挙げた。弓場のキックに合わせたペレイラのヘディングシュートは一度はマテウスに阻まれたが、そのこぼれ球にいち早く詰めた藤本が押し込んだ。藤本はその前のプレーでマテウスがなんでもないシュートを取り落としたところを見て「こぼしそうだ」と予測していたという。
追う立場になった東京Vは59分、阪野豊史と加藤弘堅をベンチに下げ、バスケス・バイロンとマリオ・エンゲルスを送り込んでシステムを4-4-2に変更。マリオ・エンゲルスと河村が2トップを組み、バスケス・バイロンが右、加藤蓮が左の並びとなった。
前半から迫力あるプレッシングを続けた大分に疲労が見える時間帯。流動的に動く東京Vの攻撃陣が大分を押し込む。大分はまず69分、左サイドの藤本と梅崎を高畑奎汰と中川寛斗にチェンジした。中川も自慢の走力を生かしてプレスを続けようとするのだが、周囲の運動量が落ちた中では、東京Vのパスワークに巧みに剥がされてしまう。
割り切った戦法と守備の粘り強さで無失点完遂
71分、バスケスの中央に持ち込んでの左足シュートは西川幸之介が押さえる。73分にはバスケスにクロスを入れられたがファーに飛び込んだ加藤蓮にはわずかに合わず。チャンスを増やす東京Vは河村に代えて北島祐二を投入し、エンゲルスと縦関係を組ませた。79分には自陣でボールをロストし、エンゲルスのパスからバスケスにどフリーでシュートを打たれたが、バスケスがこの最大の決定機を大きく枠上に外し、大分としては命拾い。
80分には齋藤を林尚輝に代えてなおも追撃を続ける東京V。野村や野嶽が疲労している大分は、無理せずに構えて1点を守り切る姿勢。81分には高畑が持ち上がって中川に預け、そのスルーパスに抜ける形も作ったが相手に対応され、それ以外はなかなか攻める形を作れずにいた。大分は82分に伊佐を宇津元伸弥に交代する。
相手が前線に送り込んでくるボールを、デルランが体を張って跳ね返す。疲労した選手たちは満足にクリアすることも出来ないまでに押し込まれるが、90分のFKからのエンゲルスのバイシクルシュートも野嶽が顔面でブロックするなどしてしのぎ続けた。
アディショナルタイムは4分。90+1分に野嶽と野村を羽田健人と町田也真人に交代して時間を使う。羽田はそのままボランチに入った。あと少し頑張れとテクニカルエリアから下平隆宏監督が煽ると、サポーターの声援も最後の踏ん張りを後押しする。90+2分、仕掛ける加藤蓮にペレイラが対応。90+4分には激しい競り合いの中から中川がミドルシュートを狙ってマテウスにキャッチされた。セカンドボールを拾った弓場も前方へと蹴り出すのが精一杯。デルランのクリアボールをダイレクトに打った北島のシュートは大きく上に逸れる。最後はさすがの町田が落ち着いて時間を使い、耐えきった大分はついにゴールを割らせずにホーム開幕戦で勝利を掴んだ。
スタジアムの一体感が運までも味方につけてくれた
「もちろん運にも助けられた部分はある。ただ、やはりチームとしてあきらめずに何かを成し遂げようとするときというのは、そういう運も拾えるもの」と、試合後に下平監督はほっと笑顔を見せた。東京Vにとっては8試合ぶりの失点で、連勝記録を6でストップする黒星だ。大分の選手が疲労してプレスがハマらなくなってからはその手強さを痛感することにもなったが、試合後の選手たちは意外と落ち着いており、もともと構えて守る準備も出来ていたと話した。
そして指揮官も選手たちも、目標を大きく上回った1万5000人超の観客、その多くを占めるサポーターの声援に、感激の色をあらわにした。自分たちから率先して県内各地でチラシを配っての集客も、こうしてともに勝つ喜びへとつながっていく。
次節もホームで、今度は栃木を迎える。最初の2戦とは少し異なるタイプの相手。今節の苦しい時間帯には、まだピッチに立っていないメンバーのストロングポイントも必要だと強く感じる場面があった。全員がコンディションを上げて、総力で勝点を積んでいきたい。