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試合レポート

ホーム最終戦で0-3での黒星。欠けていたものは何だったのか

 

J1参入プレーオフに向け勢いをつけたかったホーム最終戦で、盛大にやらかした感が残った。この敗因は、山形のほうがより切実なモチベーションに突き動かされていたからなのか、あるいは。リーグ最終節を前にチームはもう一度、立て直しの必要性を突きつけられたかたちとなった。

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上位5チームが揃ってコケた第41節

前半戦の出遅れを取り戻すためにひた走り、前節の激闘を制してプレーオフ参戦権を獲得。いざ士気を高めてさらなる上昇気流へという試合で、チームは0-3での敗戦を喫した。
 
今節は前日に行われた試合も含め、新潟、横浜FC、岡山、熊本から大分に至るまで首位から5位までが揃って黒星。横浜FCと熊本が負けた結果、新潟の優勝と横浜FCの自動昇格が決定するという、少々モヤのかかったような週末となった。逆に残るプレーオフ1枠を争う徳島、仙台、山形はいずれも勝利。J1昇格を目指す上でより切迫した状況に置かれたチームと明暗を分けたかたちで、やはりモチベーションコントロールが難しかったのかと思わざるを得ない。
 
下平隆宏監督もトレーニング初日から緩みが出ることを懸念し、選手たちにもそれを伝えながら緻密に手綱を操っていたようだったが、試合後には「見ていて少し緩みがあったなと思う。それが前半のプレスの部分につながっていたり、勇気を持ってプレスをかけに行くところが緩くなってボールを持たれてしまい、後手後手に回って。勇気というか選手の心理のところで、やっぱり慎重になって入ったなという印象があった」と振り返った。自分ではそのつもりがなくとも、ここまでハイテンションで戦ってきた疲労の影響が、知らず知らずのうちに出ていたのかもしれない。

 

山形の巧みなポジショニングに徐々に劣勢に

ただ、そういう面も否めないと同時に、ピッチにいた選手たちは相手との細かい駆け引きの中で、自分たちの力不足を感じてもいたようだ。三竿雄斗は「最初からプレスに行こうという話をしていたのだが、相手がこちらのプレッシャーの掛け方を見て上手く潜ってきた。それに対して自分たちが上手く対応できなかったのが、押し込まれた原因だった」と試合後に話した。
 
立ち上がりには互いに決定機を築く。7分には山形。右サイドのコンビネーションで崩すと半田陸のグラウンダークロスに逆サイドで加藤大樹が左足を合わせたが、わずかに枠の左へと逸れた。大分も8分、弓場将輝の縦パスを収めた町田也真人が個人技で相手を振り切って左足を振り抜くが、こちらは惜しくも枠の右。
 
だが、大分は山形の攻撃時の巧みなポジショニングに次第に後手に回るようになる。町田や下田北斗が予測してカットしたり吉田舜の好セーブに助けられたりしながらしのいでいたが、34分、その町田が負傷するアクシデント。野村直輝との交代を余儀なくされた。41分には山形も、あちこちにポジションを取りながらゲームを組み立てていた山田康太が接触プレーで痛んだが、こちらは診断と治療の後、プレーを続行できた。

 

あっけない形での2失点で戦況が大きく動く

苦しいながらもしのぎつつ0-0で前半を乗り切れるかに思われた45+5分、均衡はあっけないかたちで崩れる。山形の右CKのクリアボールを川井歩に拾われ、ゴール前に浮き球を送られると、競り合いの中でディサロ燦シルヴァーノが頭で合わせた弾道は、大きく弧を描き吉田の頭上を越えてゴールへと吸い込まれた。
 
ハーフタイムに仕切り直しを誓って臨んだ後半だったが、早々に痛恨の2失点目を喫する。前半の内容を反省してアグレッシブにハイプレスに行った背後へと大きく蹴り出された國分伸太郎のロングボール。これを処理しようとして、連係ミスだったのかペレイラと吉田が衝突。ペレイラのバックパスはオウンゴールとなってしまった。
 
このミスで火が着いたように大分は攻勢を強めるが、2点のリードを得た山形は守備意識を高める。そんな山形を押し込み、チームスタイルを表現して攻めるが、中を固める山形を前に、サイドまでは攻略できてもことごとくゴール前で跳ね返されてしまう。焦りもあるのか、金崎夢生が強引に放つシュートは精度不足。弓場のヘディングシュートはポストに弾かれた。

 

崩れたプランを立て直せずに過ぎた時間

流れを変えるべく下平監督は61分、金崎を伊佐耕平に、梅崎司を中川寛斗に交代。64分には山形も、國分を樺山諒乃介、ディサロをデラトーレ、加藤をチアゴ・アウベスへと3枚替えした。
 
今節、大分のベンチに控えていた攻撃陣は野村、伊佐、中川、屋敷優成ら、高さはなくとも機動力と勢いを誇るメンバー。山形が後半にデラトーレやチアゴ・アウベスを投入することを踏まえ、前線から激しくプレスをかけるゲームプランもあったのかと思われたが、思いがけない2失点からそのプラン遂行は少し難しくなっていた。
 
それでもゴール前を固める山形に伊佐や中川が圧をかけることで、押し込み続けることは出来ていた。ただ、山形の牙城は堅く、なかなかこじ開けることが出来ない。左右に振って揺さぶりをかけても崩れず、下田が果敢にクサビを打ち込んだり三竿がオーバーラップしたりと工夫を凝らすが、最後のところで弾き返されてしまう。66分には三竿のクロスに合わせた弓場のヘディングが枠の右。70分には井上健太のクロスから野村のボレーが枠を大きく外れた。増山朝陽は得意のドリブルで素晴らしい突破を繰り返したが、おそらくパスを出さずにそのままゴールの中まで突進したほうがよかったのではないかと思われるほどに、大分のサイド攻撃は封じられ続ける。井上と増山の左右を入れ替えてみても、あまり状況は変わらなかった。

 

この敗戦を今後にどうつなげるかが大事

77分、山形は山田に代えて小西雄大。大分が81分、弓場をエドゥアルド・ネット、井上を屋敷に代えると、山形は85分に藤田息吹を喜岡佳太にチェンジ。5バックでゴール前を固め、逃げ切りの態勢を取る。
 
ピーター・クラモフスキー監督は自らの攻撃的スタイルを絶対に崩さない指揮官だが、今節を前に、初めて5バックで守備を固める練習をしたとのことだ。ここからプレーオフ進出のため、さらに進出後の一発勝負を見据えて、そういうシチュエーションが来ることを予測しての準備だったという。半田は「今後の戦いにはこういう割り切った選択も必要になるので」と試合後に話した。
 
それに対比して、プランの崩れた今節の大分は、勝つための術を表現できなかった。外に追い出されてはシンプルなクロスを入れても、中で合わせる側の高さが足りない。屋敷や中川がドリブルでの進入を試みてもその先が続かず、伊佐を生かすことも出来ずに時間が過ぎていく。
 
アディショナルタイムにはデラトーレが吉田からボールを奪い、最後はチアゴ・アウベスに沈められて3失点目。下平監督も会見で「すっきりするくらい」と苦笑いする負けっぷりで、今季最多入場者を集めたホーム最終戦を終えた。
 
「もちろん気持ちだったり勝つ意志だったりという心の部分はいちばん大事だと僕は思うし、本当に大事なのだが、サッカーなのでそこだけではどうしても勝てない。やっぱり下手くそではシュートが入らないし、チームに貢献できないし、もっとそういう面だけでなく、技術的・戦術的なところにももっと目を向けていかなくてはならない」
 
三竿は試合をそう振り返る。今季最初から揺るがずに目指してきたJ1昇格に向け、「もう一度この敗戦を逃げずに見つめ直し、今日の敗戦が気持ちで負けたというふうに片付けず、しっかり分析して修正すべきところを修正する。サポーターの思いもわかっているつもり。責任を持って戦いたい」と前を向いた。