ボタンを掛け違えたような前半を取り戻しての猛追。逆転勝利には届かず
狙いをもって入った前半が、上手く機能しなかった。相手の勢いを引き出して劣勢となったが、選手交代で盛り返して猛追。逆転勝利も狙える流れに持ち込んだが、勝点3には届かなかった。
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前節の大宮戦から6人を入れ替えてのスタート
今季ラストの連戦となる3連戦の3戦目。前節・大宮戦から中3日でのアウェイ連戦に、下平隆宏監督は先発6人を入れ替えて臨んだ。ホームでの前々節・仙台戦と前節の大宮戦は同じスタメンだったこともあり、疲労などによるコンディションを考慮したのであろうとともに、マンツーマン気味のタイトな守備を敷く金沢への対策でもあったと、指揮官は試合後に明かした。
第31節の徳島戦以来、約1ヶ月ぶりに野村直輝がメンバー入り。羽田健人と伊東幸敏は第33節の秋田戦以来、4試合ぶりの先発となった。エドゥアルド・ネットの先発も第31節の徳島戦以来という陣容だ。
基本フォーメーションは3-4-2-1。サムエルを頂点に金崎夢生と野村を2シャドーに配置する形だったが、おそらくサムエルと金崎が2トップ気味になり野村がその下を自由に動くことになるだろうと予想された。金沢のマンツーマンディフェンスに対して強度の高いサムエルと金崎が体を張るところへ、ネットの容赦ないクサビが入ればチャンスが芽生える。それをサポートする野村も左WBの増山朝陽も、ゴリゴリのドリブルで打開する力を持っている。指揮官が台風の影響をどれだけ考えたかはわからないが、ピッチが強風に見舞われたとしても、彼らなら比較的その影響を受けずに強度を出せるのではないか。
ここ数試合では後半にギアを上げるためにベンチスタートすることが多かったメンバーを先発に並べた“パワー系”な布陣に期待を寄せる中で、試合はスタートした。
試合の入りの失敗が相手の勢いを引き出したか
だが、実際のピッチではなかなか計算どおりには運ばないものだ。ひさしぶりにピッチに帰ってきたメンバーの試合勘なのかどうなのか、立ち上がりからミスを散発。激しくプレッシングする金沢を余計に勢いづかせることになり、雰囲気でも立ち位置でも後手に回った。
5分には早々に失点。インターセプトされたボールを林誠道に収められ、それを受けた杉浦恭平が持ち込んで最後は松本大弥がターンして左足シュート。こちらも帰陣はして人数も揃っていたのだが、迷いなくカウンターを繰り出す金沢に対して後追いになり、最後のところで体を張れなかった。
10分にもパスを引っ掛けられてカウンターを受ける。藤村慶太に寄せたペレイラがかわされて大石竜平にスルーパスを通され、吉田舜と1対1の状況でシュートされたが、吉田が足を出してディフレクションした弾道はポスト。増山が掻き出して命拾いした。16分にはスペースでボールを受けた杉浦恭平のパスを伊東がクリアしたが、そのセカンドボールに大分守備陣は誰も詰めず、再び杉浦に拾われてシュートを許す。これも吉田が体を投げ出して阻んだ。
大石に増山の背後を何度も取られ、そこでも上回られることになった。決して増山だけが不調だったわけではなく、布陣全体が噛み合っていなかった。ネットの攻撃強度は魅力的だが、自由に動くぶんバランスが崩れる一因にもなる。ネットからはじまる攻撃をフィニッシュに持ち込む前にカットされ、逆にスペースを使われて相手の得意な展開に持ち込まれた。
夢生の移籍後初ゴールで一度は同点としたが
それでも26分には、そのネットのクサビから同点に追いつく。サムエルに当てて再びネットがボールを託したのは、その隙にするするとゴール前に上がっていた三竿雄斗。寄せてくる相手の隙間を通した三竿のクロスを最後に金崎が流し込んで、金崎の移籍後初ゴールが生まれた。
だが、狙いの形の結実にも雰囲気は変わらず、金沢の優勢が続く。38分には杉浦のクロスを林が頭で逸らし、それを収めた大石の右足シュートで2失点目を喫した。大石の前には人数が揃っていたにもかかわらず誰も寄せきれず、おそらく吉田もブラインドになっていたのだろう。あまりにあっさりとした失点だった。
前半アディショナルタイムにはネットのクサビを野村がフリックし、サムエルが収めて出したボールは相手にクリアされたが、それを奪った金崎がすかさずシュート。だが、三浦基瑛のセーブに阻まれる。前半の大分のシュートは3本のみで、不甲斐ない内容の修正が急務だった。
下平監督は増山を高畑奎汰に代えて後半をスタート。仕切り直したかったところだが、49分に藤村のクロスに頭で合わせた杉浦のボールがペレイラの手に当たりPK献上と、今節は運さえも悪い。杉浦のPKによりスコアは3-1となった。
一気に流れを変えた選手交代とシステム変更
ネットからサムエルのクサビを起点にしたり金崎が前線でボールを収めたりして大分も好機は築くのだが、どうにも得点の匂いがしない。下平監督は57分、ネットと野村を弓場将輝と梅崎司に代え、羽田をアンカーに、その前に弓場と梅崎を並べた3-5-2へと変更した。
相手にも次第に疲労が見えていた時間帯でのテコ入れ。ここ数試合でハマっていた可変システムの亜流といった感じで、ここから一気に流れは大分へと転じる。61分には弓場がボールを奪って井上健太がカウンターで中央を駆け上がり、井上がパスを出したサムエルはシュートを打てなかったがフリーで待っていた金崎へ。金崎のシュートはサイドネットを揺らすにとどまったが、チームに本来の勢いが戻ってきた感触だった。
67分には金沢が杉浦と林の2トップを丹羽詩温と豊田陽平にチェンジ。同時に大分もサムエルを呉屋大翔に代える。呉屋は早速猛然とプレスをかけに走った。井上のクロスが増え、梅崎のプレースキックのチャンスが増える。金沢は69分、松本に代えて力安祥伍。だが、梅崎のシュートがブロックされて得た右CKから72分、梅崎のキックをペレイラが頭で合わせて1点差に詰め寄る。
後半は相手をシュート2本に抑えて攻め続けたが
そこからの大分の猛追は迫力満点だった。そして77分、ついに2度目の同点弾。伊東のフィードを金崎が収め、浮き球のスルーパスに抜け出した井上のえぐってからのマイナスのクロスに走り込んだのは弓場。ピッチに入って流れを変えた生え抜きが、得点という結果も見せた。
ペレイラのシュートは三浦に掻き出され、三竿のクロスが弓場にわずかに合わず、それでも大分の怒涛の追撃は続く。金沢が81分に大石を黒木謙吾に代えて守備の枚数を増やすと、大分は同時に金崎を伊佐耕平に交代。伊佐は第27節の群馬戦以来、実に約2ヶ月ぶりの出場だ。期するもののすべてをぶつけるように、金沢の厚い守備の中でセカンドボールを拾いまくり、アディショナルタイムのダイビングヘッドまで、2本のシュートも放った。決まりはしなかったが伊佐の攻守でのプレーは相手のターンを削ることになった。
前半は精彩を欠いていた伊東も終盤になると井上とのコンビネーションからクロスを供給するようになる。大分が攻めに攻めて逆転勝利を狙える展開になった中で、後半の金沢のシュートは2本のみ。
ただ、数々の決定機はことごとく仕留め切れず、勝点3を得るには至らなかった。弓場は流れを引き寄せた自身のプレーに手応えも匂わせつつ、勝てなかったことは実力不足だと顧みた。下平監督は前半の不甲斐ない内容について自らを責めたが、金沢の勢いにのまれ盛り返せなかった選手たちには猛省を促し、さらなる奮起を求めたい。
残り5試合にして、順位は6位のまま。2試合連続のドローを次につなげるためにも、次節・甲府戦での勝利はマストとなる。今節ピッチに戻ってきたメンバーのコンディション向上にも期待しつつ、白星を重ねていくのみだ。