今節もウノゼロで今季初の3連勝。堅いゴールをこじ開けたのは呉屋

シーズン終盤になって、ようやく今季初の3連勝を遂げた。秋田戦、新潟戦、仙台戦と、これで3戦連続ウノゼロでの勝利だが、それぞれに異なる内容。今節の仙台戦ではこのチームが本来目指してきたかたちを最も表現することが出来た。先手を取った立ち位置で優位に試合を運び、攻め続ける展開はエキサイティングだった。
　
ただ、大当たりだった相手守護神のファインセーブを含め、ゴール前を固めた仙台の守備をなかなか破れなかったことも事実。圧倒しながら得点できず前がかりになってカウンターを食らった過去の記憶も頭をよぎったが、今節は焦れてバランスを崩すこともなく、相手の采配との駆け引きの中で途中出場した呉屋大翔が先制点を奪うと、さらに攻めながらその1点を守って勝利を掴んだ。
　
6日に指揮官交代を敢行したばかりの仙台だが、新たに就任した伊藤彰監督は実に短い準備期間の中で、対大分戦術をしっかり落とし込んでいたようだ。大分のアンカー下田北斗をトップ下に入った遠藤康がマーク。大分の左サイドの連係にも注目し、右SHの名倉巧に強く守備を求めていたという。
　
そんな仙台の狙いを表現させる隙を与えず、大分が立ち位置で先手を取った。攻撃時にサムエルと梅崎司が縦関係の2トップになり、弓場将輝と町田也真人がインテリオールとして前線に絡んでいく可変システム。状況ごとに両WBが3トップになったり相手SHとSBの中間を取ったりしながら全体にギャップを作る中で、中盤の底でバランスを取る下田との距離感も意識しながら、ときにボランチの位置まで下がる梅崎のゲームメイクが光った。

仙台は変速的な立ち位置を取る大分の選手を掴みきれず、試合は立ち上がりから大分ペースに。3分、高畑奎汰のキープからボールを受け取った弓場がペナルティーエリア左に進入して強いシュートを放ったのを皮切りに、大分が好機を量産する。
　
だが、仙台のゴール前は堅く、守護神・小畑裕馬の好セーブもあって、なかなか得点に至らない。24分の梅崎のシュート性のクロスは小畑の左手に掻き出され、そこからの下田の右CKにファーで合わせたサムエルのシュートも小畑に阻まれた。26分には弓場からのパスを受けた町田が狙って枠の上へ。28分には高畑のクロスにサムエルが頭で合わせたが、クロスバーに嫌われた。30分、吉田舜のフィードからのサムエルの落としを拾った高畑のミドルシュートも枠を捉えきれず、32分には三竿雄斗の持ち上がりからボールを動かしながら押し込むと、井上健太のクロスを高畑が折り返したが、坂圭祐はミートできない。42分には梅崎がゴール前に送った弾道に合わせたサムエルのヘディングシュートが小畑にキャッチされた。
　
これだけ多彩に攻めながらネットを揺らせない時間帯が長引くが、最終ラインとアンカーの下田がバランスを崩さず、仙台が試みたカウンターの芽を摘む。前半のシュート数は大分が7、仙台が0。試合はスコアレスで折り返した。

後半立ち上がりも大分の優勢が続く。46分、町田のスルーパスから井上の送ったクロスに弓場が勢いよく走り込んだが、ヘディングシュートは小畑の正面。48分には坂の送ったクロスがゴール前で落ちるところを三竿がダイビングヘッドで狙ったが、これも小畑の伸ばした手に掻き出された。
　
攻め手を探る仙台は55分、名倉に代えて富樫敬真を投入。遠藤が右SHに移り、富樫は中山仁斗と2トップで並んだ。58分には吉田のパスを遠藤に引っ掛けられたが、そのパスもずれてペレイラが対応する。63分に仙台が氣田亮真を加藤千尋に、松下佳貴を梁勇基に代えると、同時に大分もサムエルと梅崎を金崎夢生と呉屋に代えてフォーメーションを固定の3-5-2とした。これにより仙台の両SHが下田の脇のスペースを使って好機を増やす。
　
仙台が徐々に形勢を盛り返してきた時間帯。だが、ここで途中投入された金崎と呉屋が大仕事を遂げた。66分、押し込まれた状態から高畑がつないだボールを金崎が呉屋とのワンツーで運び、井上が送ったクロスには4人が走り込みながらシュートは打てなかったが、その2分後、ついに先制点が生まれる。井上がエリア内に送ったボールを相手を背負いながら金崎がキープし、再び井上へ。井上がワンタッチで送った弓なりのクロスに頭で合わせたのは呉屋。クロスの落下地点に入ってクリアしようとした真瀬拓海の前に素早く入り込んで放ったシュートは、ようやく小畑の反応をかいくぐってゴールネットを揺らした。呉屋にとっては今季7点目、大分のJ2通算700ゴールとなる。
　
試合後に呉屋は「健太のクロスからなかなか点が入っていなかったのを知っていたので、クロスが上がったときに健太からだと意識していなくてよかった」と井上をからかった。ルーキー時代からクロスの練習に励み、今季はプレーの幅を広げてクロスの種類も増やした井上に初アシストを記録させたストライカーの愛情に笑いが起きた。

ゴールによって生まれた時間に下田がベンチと話し合い、フォーメーションを変更。選手交代で前線にパワーをかけてきた仙台に対し、中盤の枚数を増やして守備を安定させる。
　
71分にはセンターサークルを越えたあたりから三竿がロングシュートを放つが枠の上。73分には呉屋のスルーパスに抜け出した金崎が小畑と1対1のビッグチャンスを迎えたが、ここでも大当たりの小畑に左手で阻止された。76分には吉田の足元を狙った富樫に自陣でボールを奪われるが、シュートは枠を逸れて命拾い。
　
追撃する仙台は77分、中島元彦と内田裕斗を蜂須賀孝治と皆川佑介にチェンジ。蜂須賀はそのまま左SBに入り、遠藤をボランチに下げて右SHに富樫、皆川はトップでターゲットとなる。同時に大分は町田を小林成豪に、高畑を香川勇気に代えて組織の強度を維持する。さらに81分には足をつらせた井上に代えて宇津元伸弥。攻める姿勢も損なわず、前線にパワーをかける仙台の追撃に備えた。
　
83分には追加点の大チャンス。三竿の浮き球を金崎が落とし、香川のパスをフリーで受けた呉屋が個人技で相手を剥がしシュート。だが、小畑の手の届かないコースを周到に狙ったものの、ものすごいスピードでカバーに入った蜂須賀にギリギリのところで掻き出された。呉屋も「クリアされてびっくりした」というほどの気迫の守備だった。

リードは1点のみ。そこからはゴール前にボールを送り込んでくる仙台に攻められる展開となる。前線の呉屋としてはもっと前から圧をかけてラインを上げたかったようだが、タフな90分を少数精鋭で守ってきた守備陣も疲労しており、押し込まれて跳ね返す終盤となった。
　
88分、遠藤からのロングパスを受けた加藤のシュートは枠の上。アディショナルタイムは4分。吉田と最終ラインは落ち着きと集中を損なわず対応し、無事にタイムアップを迎えた。
　
ここに来てようやく遂げた、今季初の3連勝。順位は変わらず6位のままだが、1試合未消化で7位の長崎との勝点差は4に開き、5位に後退した仙台と勝点で並んだ。その得失点差が4であることを考えると、つくづくこの試合での小畑の好調が残念だった。4位・熊本とは勝点2差。3位・岡山とは勝点8差。
　
次節は中3日でアウェイ大宮戦だ。「いまチームとして勢いが出ており、誰が出ても活躍できるような雰囲気がチームの中に充満している」と手応えを口にした指揮官が、次はどんなメンバーをチョイスし、選ばれた選手たちがどれだけ力を発揮できるか。大分の反撃はまだまだ続く。