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試合レポート

好調の新潟に6試合ぶりに土。組織的守備で無失点勝利を呼び込む

 

5戦無敗、いずれも無失点で3連勝中と好調の2位・新潟に、アウェイで1-0勝利の快挙。コロナ禍の影響で強いられた総力戦で、組織の成熟が垣間見えた。

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特別なことはなく、やるべきタスクを各々が全う

長いホイッスルが試合終了を告げた瞬間、下平隆宏監督は地面に膝をついて渾身のガッツポーズを見せた。ともにポゼッション志向のチーム同士、ホームでの前回対戦は2-1で敗れていることもあり、指揮官としても自らのサッカー哲学を懸けた意地の見せどころだったはずだ。
 
後半は追撃する相手に持たれる時間帯が多くなり、「もっと自分たちが持ちたかったという思いは正直ある」とも言ったが、高い攻撃力を誇る新潟を零封した組織的守備に大きな手応えを感じていたようだった。
 
4-2-3-1の新潟に対し3-4-2-1の大分が採った守備は、実にオーソドックスに見えた。新潟の得意とするスルーパスを通させないように、前線からパスコースを制限しつつボランチの2人が中を閉める。通されればペレイラの潰しを中心に周囲もカバーリング。相手がサイドに振れば、全体をスライドさせながらWBが前に出てビルドアップを阻む。特に伊藤涼太郎・堀米悠斗と対峙した井上健太の働きは目覚ましかった。新潟のボールの動かしに大きくつり出されることもなく、規律の下にバランスと集中力を保って連動する様は、見ていて心地よかった。

 

いい守備から繰り出した躍動感あふれる攻撃

最初のチャンスは新潟。トーマス・デンの浮き球をピッチ中央で収めた伊藤涼太郎のスルーパスに抜け出したシマブク・カズヨシがゴール前にグラウンダーで送るが、それが谷口海斗に渡る前に坂圭祐が掻き出した。4分には大分が相手の隙を突いてビッグチャンス。パスコースを作るようにボールをこねるトーマス・デンに突撃した中川寛斗が奪い切ると、25mほど先でガラ空きになっていたゴールへとシュートする。弾道は小島亨介をすり抜けたが、わずかに枠の左へと逸れた。
 
6分には三竿雄斗が持ち上がってサムエルに当て、その落としを弓場将輝が展開して増山朝陽がクロス。再びサムエルが落として中川が浮き球をゴール前に走り込んでいた三竿へと送るが、相手にクリアされた。そのこぼれ球をサムエルがダイレクトで狙ったが、枠の上へ。動きつつ動かすことで縦横のギャップを使った、相手を翻弄できる攻撃だった。
 
11分には坂の逆サイドからのフィードに増山が抜け出し、トーマス・デンの対応に遭いつつ左CKをゲット。梅崎司のショートCKの流れから保田堅心がゴール前に送って坂が折り返し、三竿がボレーシュートを放ったがこれも枠を捉え切れなかった。

 

先制はステルス中川の頭(11試合ぶり今季2度目)で

好感触の攻撃が続く中、先制は19分。相手のボランチ脇で三竿のクサビを受けた梅崎が展開し、増山が仕掛けてクロス。ニアで潰れたサムエルの後ろに弾丸のように走り込んできたのは中川だ。155cmのヘディングシュートはまたも見事にネットを揺らした。
 
新潟も攻めはするのだが、そのパスのわずかなズレを見逃さない大分がたちまちボールを奪う。攻撃時には積極的に前線に絡む弓場が高い位置でインターセプトして切り替える場面も。弓場は30分にも梅崎の落としから左足を振り抜いたが、小島のファインセーブに阻まれた。
 
33分には堀米のパスが谷口に通ったところへ三竿が寄せて収めさせず。そのこぼれ球を拾った堀米に強烈なシュートを放たれたが井上がブロックして、試合は0-1で折り返す。後半の早い時間帯に失点せず持ちこたえれば、終盤に金崎夢生を投入して前線でボールを収めることで新潟の追撃を振り切ることが出来るかもしれない。そんな期待を抱かせる前半だった。

 

ベンチワークでも主導権を争う後半

後半は攻め合いながらなかなかゴールネットが揺れない展開。50分には堀米のクロスを増山がクリアしたこぼれ球を拾われ、最後は伊藤に強烈なシュートを放たれたがワンタッチあって枠の外。51分には高木善朗の右足ミドルシュートを吉田舜が横っ跳びで掻き出した。56分、三竿のアーリークロスを相手を背負いながら胸トラップしたサムエルが反転ボレーを披露するが、枠の右。58分には新潟のインターセプトから谷口がシュートしたが吉田がキャッチする。60分には自陣深くでのスローインの流れからサムエルがスペースにボールを送り、抜け出した増山がカウンターでゴールに迫るが、打つタイミングを失って藤原奏哉に対応された。
 
疲労により大分の前線からの守備の強度が落ちつつあった63分、新潟が3枚替え。伊藤、シマブク、高宇洋を小見洋太、秋山裕紀、松田詠太郎に交代して戦力をリフレッシュする。島田譲も前線に顔を出す回数を増やして圧を増すと、小見が井上のスライディングタックルをかわして切れ込みクロス。保田が体を投げ出してクリアしたが、ヒヤリとするシーンだった。
 
新潟が好機を立て続けに築くようになった71分、大分が2枚替え。中川と梅崎を町田也真人と金崎夢生に代え、保田をアンカーに置いた5-3-2で新潟の追撃に対応する。73分には新潟が谷口に代えて矢村健。同時に大分もサムエルを呉屋大翔に、また負傷した増山を屋敷優成にチェンジした。

 

最後は粘りと集中の守備で新潟を振り切る

77分には秋山の展開から松田が折り返し、高木がダイビングヘッドも枠の上。78分には相手の攻撃を跳ね返した吉田の弾丸キックが秋山に渡り、そのままロングシュートで狙われたが吉田がキャッチ。新潟は81分、千葉和彦を田上大地に交代。83分、松田の持ち上がりへの屋敷の対応がPKになるのではないかと新潟の選手たちが猛烈に主張するも判定はゴールキックとなった。
 
新潟のパスのズレが目立つ中、坂や井上もスライディングクリアで守備に貢献。89分には松田と競り合った屋敷のカウンター発動に対応した藤原にイエローカードが提示される。90分、弓場に代えて下田北斗。5試合ぶりにピッチに戻ってきたキャプテンへと、三竿からキャプテンマークが渡された。
 
アディショナルタイムは5分。高木の左CKを吉田がパンチングで掻き出し、矢村のシュートも吉田がキャッチ。最後は前節に続く吉田の活躍で、新潟の追撃を振り切った。
 
前節後に3名のコロナ感染者が確認され、またもメンバーが入れ替わっての今節だったが、2戦連続のウノゼロ勝利。守備では行くところと構えるところの意思疎通が明確に共有されており、攻撃ではそれぞれの特長を生かしながら躍動感を醸し出した。攻守のバランスしかり、戦術的規律と臨機応変な柔軟性のバランスしかり、今季なりのディシプリンがようやく本格的に浸透してきた印象だ。そして暫定ではあるが、ついに今季初のJ1参入プレーオフ圏内突入。手応えが結果につながった一戦を自信に、次節は今季初の3連勝を狙いに行く。

キャプテンおかえりなさい
新潟のポゼッションサッカーのキーマンになっていた伊藤(上)と小島
出場はなかったがボランチで開花中の星も元気でした

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