アクシデントによる急造布陣も出場メンバーの好パフォーマンスで1-0勝利
出場停止のペレイラに加え、コロナや負傷で想定外の離脱者が続出し、今節は試合前日までメンバー変更を強いられることになった。だが、ひさびさの出場ながら「いつでも行ける準備は出来ていた」という選手たちは攻守に組織的に戦い、苦しい時間もしのいで1-0での勝利を掴み取った。
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水戸戦以後の離脱者続出で強いられた急造布陣
J2第32節ホーム岩手戦に3-0で勝利した後、中2日での第28節アウェイ水戸戦には0-2で敗戦。そこからさらに中4日で第33節アウェイ秋田戦という、変則的で長距離移動をともなうアウェイ連戦という状況に、さらなる試練が重なった。
25日、26日、27日と3日連続でそれぞれ1名のコロナ感染者が確認される。負傷者も出ており、ペレイラが累積警告による出場停止という連戦の中で準備を進めながら、急なメンバー変更に対応。中には試合前日に急遽、出場が決まったメンバーもいた。29日に発表されたとおり上夷克典も水戸戦で負傷しており、今節の最終ラインは右から伊東幸敏、羽田健人、三竿雄斗。ゴールマウスの前には第2節以来の出場となる吉田舜が立った。連戦の疲労も考慮してか呉屋大翔、金崎夢生、町田也真人、エドゥアルド・ネットらはベンチスタート。ただ、後半にギアの上がる試合の多い秋田に対しては、彼らの途中投入が奏功する期待もあった。
対する秋田は、コロナ罹患していた吉田謙監督がテクニカルエリアに復帰。0-3で敗れた前節の栃木戦からは先発4人を入れ替えた。左SHには梅崎司の長崎・キックスFCの後輩でもあり大分アカデミーOBの茂平。前節は左CBを務めた小柳達司が左SBに、前節2トップの一角だった井上直輝がボランチにと配置も変え、小柳の左SBも池田樹雷人と加賀健一の2CBも初の組み合わせ。やはり戦力のやりくりの様子が垣間見えた。
相手のミスを逃さずサムエルが先制弾
ともにそういう状況で、どうなることかと思いながら迎えたキックオフ。だが、早々の3分、思いがけず相手のミス絡みで大分が先制に成功する。中川寛斗が浮き球を送って井上健太を走らせたところへ、飛び出してきた田中雄大が右足でクリア。このボールがバイタルエリアでフリーになっていたサムエルの足元へ。利き足の左でコントロールしてすかさず右足を振り抜くと、シュートは無人のゴールへと吸い込まれた。
いきなり失点した秋田だが、焦りや動揺は見られず、2トップをターゲットに縦に速い攻撃で1点を追う。大分はペレイラ出場時とは少し異なり、羽田の統率によるラインコントロールで秋田の裏への抜け出しに対応。秋田の、一旦相手のラインを上げさせてからの裏狙いにもしっかり上下できていた。急造3バックでありながら、サムエルや中川らの素早い切り替えによる前線からの献身的な守備もそれを助けていた。
9分には梅崎の左CKからニアに飛び込んだ三竿のヘディングシュートがサイドネット。30分には中川が巧みにスペースに抜けて井上健からのスルーパスを受けるがクロスは精度を欠いた。幅を使いながら攻める大分に対し、秋田守備陣も球際強く阻みに来る。失点に絡んだ田中はその後も勇敢に飛び出してはピンチの芽を摘み続けた。
41分には増山朝陽からのボールを受けた弓場将輝のクサビを梅崎がフリック。増山にボールを出したあとゴール前まで顔を出していた三竿がシュートするが、このビッグチャンスも田中に阻まれた。
集中していた吉田のセーブと守備陣のカバーリング
46分には井上健のクロスに大外から増山が飛び込むがヘディングシュートは枠を捉え切れず。前半はひさしぶりの出場で慎重に試合に入っているようだった伊東も攻撃参加の回数を増やす中、追う立場の秋田はさらに攻守両面の強度を高めてきた。
52分には茂のFKから井上直に強烈なヘディングシュートを許すが、吉田舜が阻み三竿が掻き出す。秋田は左右からのロングスローでも大分を押し込みにかかるが、最後の精度不足やオフサイドでなかなか決定機を築けない。
先に動いたのは秋田ベンチ。59分、小暮大器を三上陽輔に、青木翔大を吉田伊吹に交代する。攻め急ぐことなくポゼッションする大分に対し激しくハイプレスをかけ続ける秋田だが、奪っても切り替えのパスやフィニッシュの精度を欠いて大分ボールになる繰り返し。タフにして細かいラインの上げ下げを繰り返す中で、64分には伊東のインターセプトから梅崎がつなぎ増山がクロス。だが、ゴール前に飛び込んだサムエルは才藤龍治に阻まれた。
選手交代で最後まで攻める姿勢を維持
秋田に流れが傾きつつある66分、今度は大分が最初のカード。疲労の見える梅崎に代えて金崎夢生を投入し、サムエルとの2トップとし、カウンター態勢も整えた。
67分、稲葉修土とのワンツーから茂が強烈な右足シュート。弾道は枠を捉えていたが、吉田舜の素早い反応によるファインセーブでしのぐ。秋田は69分にも吉田伊と三上のコンビネーションを仕掛けたが、増山が対応して防いだ。
秋田は71分、齋藤恵太を武颯に、井上直を普光院誠に交代。じわりと秋田が中盤の支配率を高める中、金崎がボールを収めることで大分はそれを食い止める。さらに84分には増山を屋敷優成に、サムエルを呉屋大翔に代えて勢いを維持。秋田も85分に茂を高瀬優孝に代え追撃を続けた。
大分も最後まで2点目を狙い、87分には左サイドでボールを収めた金崎が自らカットインしてシュートするが相手にブロックされる。90分には屋敷の右CKから三竿がヘディングで叩きつけたが左に逸れ、詰めた保田堅心も届かない。
アディショナルタイムは4分。90+1分に井上健を小出悠太、中川を町田也真人に代えて時間も使いつつ、秋田の追撃を退けて大分がウノゼロで勝利を遂げた。
アクシデントに負けずの勝点3を次節につなげられるか
変則的なアウェイ連戦を含む3連戦を2勝1敗で乗り切り、2勝はいずれも無失点。今節はペレイラを欠き、コロナや負傷によるアクシデントで急造の守備組織となったが、ひさしぶりの出場となったメンバーを含め前日や前々日に急遽出場の決まった選手たちが好パフォーマンスを発揮したことが、これまでの積み上げを裏付けることにもなった。
ただ、「無失点がめちゃくちゃうれしい」と喜んだ吉田舜だが、その気持ちはすぐに次節・新潟戦へと向かう。「これを続けるためにはやはり努力が必要。次節の新潟戦でどれくらい出来るかで自分たちの存在意義を示せる」と表情を引き締めた。追加点も欲しかったところで、より攻撃の精度を求めたい。
シーズン折り返し後は水戸戦での1敗を除き勝点を積み続けながら、なかなかプレーオフ圏内に届かずにいる。もどかしさは抑えきれないが、焦らず目の前の一戦に集中して戦い続けるしかない。残り9試合、総力を挙げての追走だ。