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試合レポート

2点先行も相手の猛追をしのぎ切れず。勝点1ずつの痛み分け

 

上位へと食い込んでいくために、ともに切実に望んだ勝点3。離脱者多発の中、勝つためのゲームプランニングはロジカルではあったが、相手の猛追を押し返せずプラン遂行できずに、2点のリードを守り切れなかった。

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サムエル先制弾で総力戦の幸先は上々だったが

スタッフにも感染者が出た今節。ベンチには普段は入らない福井一城コーチに加え、西山哲平GMがポルトガル語通訳も兼ねてコーチとして入るなど、スタッフも総力戦である現状を垣間見せた。
 
コロナ感染や負傷で何人かの選手を欠く中で、今節のスターティングメンバーはペレイラ、エドゥアルド・ネット、サムエルとブラジリアン三銃士のセンターライン。立ち上がりの駆け引きを見極める間もない3分、いきなりスコアが動いた。ネットの縦パスを藤本一輝がトラップしたところへ新井直人が対応に来た、そのこぼれ球をすかさずサポートに入った町田也真人がスペースに出して藤本が裏抜け。並走するサムエルにボールを託すと、サムエルが持ち替えて放った左足シュートは、ホセ・アウレリオ・スアレスの手の届かないところを狙ったように、左ポストの内側を叩いてゴールへと転がり込んだ。
 
それからしばらくは、大分が立ち位置で先手を取れていた。特に町田と梅崎司が守備では相手のパスコースを切り、攻撃では周囲からのパスコースを作る。羽田健人とネットのダブルボランチも中の堅さを増した。増山朝陽と藤本は個人技で可能性を見せる。ただ、9分に梅崎がドリブルで運んだり町田と藤本のコンビネーションでスイッチを入れようとしたりするが、徳島も読みのいい守備でそれを阻んだ。逆に19分にはサイドチェンジを受けた浜下瑛に個人技で持ち込まれてシュートされるが、ニアポストを叩いてボールは外へと弾き出された。

 

苦しい時間帯の司の2点目も後半立ち上がりに失点

その後は徳島の巧みなポゼッションに押し込まれる時間帯も多くなる。右からのクロスがファーに流れることが多く、上夷克典やペレイラが対応した。32分には逆サイドからのクロスに浜下が頭から飛び込むが枠の右。大分は34分に藤本のクロスのクリアボールを増山が拾って2度シュートするが得点には至らなかった。
 
徳島のポゼッションに押し込まれる時間が増え、苦しい展開になってきたと思われた前半終了間際、だが、梅崎の会心の2点目が生まれる。増山が右サイドで強さを見せてボールを奪いきると、それを受けた町田がダイレクトでゴール前の梅崎へと浮き球を送る。見事に決まった胸トラップからの反転シュートは相手に対応の隙を与えず、44分といういい時間帯に、苦しい流れを断ち切る希望をもたらした。
 
だが、「後半最初の15分は絶対に失点しないように」と申し合わせて臨んだにもかかわらず、54分に失点を喫する。徳島はハーフタイムに浜下と石井秀典をベンチに下げ、ムシャガ・バケンガとエウシーニョを入れてシステムを4-4-2に変更。最終ラインは右からエウシーニョ、内田航平、安部崇士、新井の並びとなり、玄理吾と白井永地のダブルボランチ、右SHに児玉駿斗、左に杉森考起、2トップに藤尾翔太とバケンガを並べた。中盤の守備の安定を図りつつ攻撃にパワーをかけていく狙いがハマり、白井の強いシュートがペレイラに当たったこぼれ球を、バケンガとともに詰めた藤尾がゴールへと蹴り込んだ。

 

苦しい台所事情を受け早めの交代策も…

1点を返して勢いづいた徳島と、リードを守る意識へと傾いた大分。エウシーニョの地を這うミドルシュートは高木駿がキャッチしたが、明らかに徳島へと流れは移っていた。下平隆宏監督としてはもっとボールを握りたかったのだが、徳島の巧みなポゼッションに対してプレッシャーをかけきれなくなり、布陣の重心が低くなる。
 
選手たちが割り切って守ろうと判断したことを受け、指揮官は57分、増山を井上健太に、ネットを小林裕紀に交代。さらに64分には足をつらせたサムエルを呉屋大翔に、梅崎を野村直輝に2度目の2枚替え。井上のスピードと野村の強度、小林裕のゲームメイクと呉屋の決定力に期待して、守備を固めた状態からのカウンターを狙った。
 
66分には早速、小林裕を起点に井上がドリブルで持ち上がり、町田のクロスに呉屋が頭で合わせる形を作ったが、シュートはエウシーニョに阻まれた。73分には野村のミドルシュートが枠の右。だが、徳島の追撃の勢いは収まらず、球際に強く行けない大分は徐々に押し下げられる。カウンターを発動しようとしてもパスやクロスの精度が不足して、相手にカットされる場面が目立った。

 

守備意識に傾き途中出場選手の特長を生かせず

78分、足をつらせた町田に代わって小林成豪がピッチに入る。だが、得意の推進力を生かすチャンスもなく、守備に追われる状態になった。逆に徳島は80分、玄を櫻井辰徳、杉森を西谷和希に代えてフレッシュな力で追撃パワーを増した。ドリブル突破の得意な西谷に対応するために、井上はほぼほぼ自陣で守備対応に回ることになり、ペレイラも相手の攻撃を蹴り出すのが精一杯で、それが相手に渡ってまた押し込まれてしまう繰り返し。
 
しっかりつないでいくなりスペースに井上や小林成を走らせたり出来ればよかったのだが、呉屋がどうにかボールを収めても、周囲がサポートに行けないまま相手に枚数をかけて潰される場面が続いた。小林裕もなんとか状況を打開しようと相手SBの裏へと走り込んだりするのだが、そこで収めても他の選手の攻め上がりが乏しく、好機にはつながらない。
 
仮に得点できなくともボールを持つ時間を少しでも長くして相手の攻撃時間を削ることが出来れば、もう少し楽な逃げ切り展開に持ち込めたのかもしれないが、押し込まれて押し返せない守備陣には、その余裕はないようだった。
 
高木やペレイラが跳ね返してなんとか耐えしのぎ、試合は6分のアディショナルタイムに突入。あと少しを乗り切れば、という90+1分、白井のシュートがポストに当たりつつゴールへと吸い込まれた。

 

90+1分にゴールを割られ痛み分けに

勢い的には逆転負けもあり得る流れで、なんとか同点で収めることは出来たという結末になった。試合翌日の15日には渡邉新太の負傷もクラブから発表されたが、負傷明けでチームに合流したばかりの野村をメンバー入りさせなくてはならなかったほど、コロナ禍と怪我により台所事情が厳しかったことが窺われる。小林裕も、復帰してからそれほど時間は経っていない。
 
次節の岩手戦からは、変則的な過密日程だ。延期になっていた第28節のアウェイ水戸戦が岩手戦から中2日。そこから中4日という中途半端なブランクで、アウェイ秋田戦。その次は1週間の準備期間こそあるものの、アウェイ新潟戦という、移動の負荷も高いタフなスケジュールになっている。
 
徳島戦での台所事情を見るにそれを乗り切れるのかと心配にもなるが、復帰見込みの選手がどれだけ急ピッチでコンディションを上げられるかがカギになる。今季は調子が上がってきたところで離脱する選手が相次ぎ、本人としてもチームとしてもなかなかもどかしいところがあるが、今節、15試合ぶりに先発した梅崎が攻守にいい仕事をし、大分では2007年以来の得点を挙げたことは、明るいトピックだ。梅崎自身も「僕も今日こうしてひとつ結果を出せた。それはチームにとってプラスになると思う。そういった選手が出てこないと、シーズン終盤の勢いは絶対に出てこない。いま競争しながらチームとしてのやり方がだいぶ出来てきていると思うので、そこをより突き詰める。その両方をやっていくことが大事になる」と話した。
 
今節は、逃げ切れなかった大分と勝ち切れなかった徳島との痛み分け。昇格争いに食い込んでいくために、粘り強く勝利を目指していくのみだ。

西山GMまでが駆り出される総力戦