3連戦の2戦目のアウェイ戦。高温多湿とも闘いながら無失点でしのぎ+1
日程的にも気候条件的にも戦術的にもタフさを求められた一戦。疲弊必至の条件下で立ち上がりから背後を狙い合ったが、互いに好機は築きつつ、両ゴールネットは一度も揺れずじまいだった。
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ハイラインの裏を狙い合った立ち上がり
気温28度、湿度75%という高温多湿のピッチ。しかも3連戦の2戦目で、選手たちがひどく疲労するであろうことが予測された。それも鑑みてか、4-3-3の山口と3-4-2-1で攻撃時には3トップ状態となる大分は、立ち上がりから互いにハイラインの背後を狙い合った。大分は藤本一輝が、山口は沼田駿也が、ともに左サイドの裏を狙って可能性を切り拓こうとする。その中で多く濃厚な好機を築いたのは山口だった。6分には増山朝陽との競り合いからボールを拾った沼田がクロスを上げ、寄せた上夷克典の足でディフレクションしてファーにこぼれたところへ吉岡雅和が走り込むが、シュートは枠上に外れた。大分は14分に下田北斗のクロスのこぼれ球を拾って渡邉新太がシュートするが関憲太郎に阻まれる。16分には大分のFKからのカウンターで山口がまっしぐらにゴールに迫り、沼田がシュートするが高木駿がキャッチ。
徐々に山口が主導権を握りはじめ、好機を増やす。22分には田中渉のクロスを高木大輔が収めシュートするが、高木駿の決死の寄せで弾道は上へと逸れた。大分も負けじと29分、藤本がエリア内へと進入し逆サイドへ送って野村直輝がシュートするが上手く合わせられない。33分にはペナルティーエリア手前で山口にFKのチャンス。田中が蹴りゴール前混戦を経て最後はヘナンにシュートされたが高木駿が阻んだ。
左サイドから攻め合うもともに仕留めきれず
サイドの背後を突いて攻め合ううちに布陣は間延びして、ほとんどその位置の攻防が形勢を左右するような形になっていく。警戒される藤本は個人で打開したり三竿雄斗や下田と連係したりと工夫を凝らすが、サイドで枚数をかけ中には強いCBが構える山口の守備陣をなんとか越えても、関に対応される繰り返し。一方、山口のほうも、沼田が増山と上夷の対応を振り切ってクロスを上げ、大分の好機よりは濃厚な場面を作り出すものの、高木駿や坂圭祐の対応に遭い、仕留めるには至らない。
44分には野村が右サイド自陣でボールを受け、大きく前方へと送ると、そのスペースへと抜け出したのは弓場将輝。ヘナンに対応されたがクリアボールを増山がダイレクトに渡邉に送ると、渡邉は相手をかわしシュート。強烈な弾道だったがこれも関にクリアされ、見応えのある試合ながら両ゴールネットは揺れないまま折り返した。
高木駿や坂のファインプレーでピンチをしのぐ
大分は後半頭から、三竿に代えて小出悠太。これにともなって野村と渡邉が左右の立ち位置を入れ替わった。
47分には吉岡にボールを収めさせまいと藤本が対応したこぼれ球を拾って高木大がシュートするが枠上に逸れた。52分には佐藤謙介の縦パスから田中が持ち上がり沼田に展開すると、沼田は自らシュート。鋭い弾道だったが素早く高木駿の背後にカバーに入った坂が掻き出すファインプレーでピンチをしのいだ。54分にはヘナンのフィードを高木大が落としたところへ走り込んだ山瀬功治がミドルシュート。地を這うボールは枠を捉えていたが、高木駿が横っ跳びで掻き出した。
心身を削るような蒸し暑さの中、下田が落ちてしっかりポゼッションする時間を増やしながら、下平監督は今節も早めの交代に踏み切る。56分、渡邉を中川寛斗へ、増山を井上健太へと2枚替え。56分には早速、中川が自陣から井上を走らせ、井上がグラウンダークロスを供給したが、山口の守備陣もラインを下げる中、関がキャッチする。
終盤に差し掛かって増やしたチャンス
59分には下田のフィードに抜け出して呉屋大翔がボールを収めたが、ヘナンの対応に遭い潰される。今節の呉屋にはいい形でボールを入れることが出来ないまま、64分、長沢駿と交代となった。山口は62分、山瀬を神垣陸に交代。さらに72分には吉岡と沼田をベンチに下げ、大槻周平と兒玉澪王斗を投入。高木大が右WGに移り、1トップには大槻が入る。
78分には野村、藤本と連係した小出が高い位置へと抜け出し藤本に戻すと、藤本は中の状況を見極めてクロスを供給。関に阻まれたが、大分の狙いとする形が出せた場面だった。それまでは山口のほうが細かいパスワークを駆使して局面で上回ることが多かったが、終盤に差し掛かって徐々に大分の形が増えはじめる。おそらく下平監督は後半に相手の強度が落ちることも想定してプランを練っており、勝負どころのタイミングで仕留めることを狙っていたのだろう。
80分、井上のカットインからのクロスのこぼれ球を弓場が左足で合わせて枠の左。81分には下田のパスを受けた藤本のクロスに長沢が足を伸ばしたがわずかに届かず。ただ、大分のサイド攻撃は目に見えて機能しはじめていた。
最後は両軍とも疲労してミスが増える死闘に
ここで名塚善寛監督も動く。86分に佐藤謙と田中を佐藤健太郎と石川啓人に交代。佐藤健と神垣がダブルボランチの4-2-3-1へと変形したが、戦術的な狙いではなく、やはり怪我人が多いことで余儀なくされたフォーメーション変更だったようだ。同時に下平監督は藤本を屋敷優成に代えて左の前線をリフレッシュする。
アディショナルタイム4分が尽きるまで互いに攻め合ったが、終盤には両軍の選手が疲弊しミスが多発する死闘ぶりで、結局スコアは0-0のまま。ボールの運び方でも立ち位置でも駆け引きを繰り返した好ゲームだったが、ともに今季初の3連勝には届かず、中3日での次節に向けてのコンディションが心配されるかたちとなった。
ミスはもちろん少ないほうがいいが、連戦であることと厳しい気候を考えれば、ある程度は仕方なかったとも言える。シュート数は相手の3分の1の4本に終わったが、再三のピンチを高木のビッグセーブや坂のファインプレーでしのぎ、他の全員も粘り強く戦ってアウェイでの苦しい試合で勝点1を積めたことについては「ポジティブに捉えたい」と指揮官も総括した。
ここから次節・岡山戦に向けてどれだけコンディションを回復できるか、また負傷から復帰してきたメンバーは出場できるのかが気になるところ。まずはしっかりと心身を休めたい。