狙いどおり前半に先制も逆転負け。ここで得たものをリーグ戦につなげられるか
G大阪のサイド攻撃+マンツーマンディフェンスに対し、策を準備して臨んだ一戦。前半は見事にそれが奏功したが、後半はパトリックを生かす修正に抑え込まれ逆転負け。ただ、この試合から見えた収穫もある。それをリーグ戦につなげていけるか。
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前半はG大阪に対し準備した策がハマる
ともに苦戦中のリーグ戦に挟まれてのマッチアップ。大分は先発全員を、G大阪は10人を入れ替えて臨んだ。大分の3-4-2-1に対しG大阪は4-4-2。基本フォーメーションが異なる中、G大阪はマンツーマン気味の守備で大分のビルドアップを阻みつつ、攻撃ではウェリントン・シウバが左サイドに流れ山見大登や倉田秋らが流動的に動いて、そこを起点にする狙いを見せた。
一方の大分もそれに対する準備は万端で、ウェリントン・シウバには伊東幸敏や増山朝陽がガッチリと対応。前線からプレスをかけて蹴らせつつ、セカンドボールを拾ってマイボールにすると、G大阪がプレスに来る背後へと素早くボールを送り、エリア内へと進入する積極性を前面に出した。
その大分の策がハマり、前半のG大阪はほとんどいい攻撃の形を作れない。逆にG大阪側は大分の裏狙いに対応できずファウルを繰り返し、立ち上がりから大分がセットプレーのチャンスを量産した。13分、坂圭祐のロングフィードに抜け出してドリブルでエリア内に進入した宇津元伸弥が佐藤瑶大に倒されて獲得したPKを呉屋大翔が蹴り、見事にゴールネットの右側を揺らす。エースストライカーの約3ヶ月ぶりの得点に、チームの士気も高まった。16分には弓場将輝が自ら運んでシュートし枠の右に逸れる。
G大阪もウェリントン・シウバが左サイドに流れたところから突破を図るが、26分には伊東が、27分には増山が対応。31分には中村仁郎のクロスに逆サイドから飛び込もうとするところをしっかり防いだ。
33分には増山朝陽がFKから直接狙って枠の上。35分にも屋敷優成が中村のファウルを誘い、増山のFKから坂が折り返したが、相手に掻き出されてゴールには至らなかった。37分にはぎりぎりエリア外でのファウルと判定されたFKを中川寛斗が蹴って壁に阻まれる。45分には弓場から攻め上がる小出悠太に託してクロスというきれいなサイド攻撃の形も築いたが、追加点は奪えず。前半アディショナルタイムの宇津元のシュートは相手にブロックされた。
パトリック投入で流れを持っていかれた後半
準備してきたことを封じられたG大阪は、後半開始と同時にウェリントン・シウバをパトリックに交代。パトリックが明確なターゲットとして前線を動くことで攻撃がシンプルになり、力強さが発揮されはじめる。
大分ももちろんパトリックが投入されることは想定内で、ハーフタイムにはそれを示し合わせて準備して臨んだのだが、それでもパトリックの脅威はそれを上回った。試合後に弓場は「あの人ひとりで流れが変わったという感じ」と振り返る。それまでハイプレスをかけて長いボールを蹴らせた末に回収できていたセカンドボールを、パトリックに収められるようになり、形勢は一気にG大阪へと傾いていく。
それでもチャンスがなかったわけではなく、48分には増山のFKから呉屋がヘディングシュートし、惜しくもクロスバー。逆に49分、倉田のロングパスに抜け出した山見が切り返しで伊東を振り切ってエリア内に進入し、飛び出してきた西川幸之介の頭上を越えるループシュートで同点弾を仕留める。
53分、保田堅心が自ら持ち上がってミドルシュートも枠の左。55分には山見が自陣から、西川が前に出てガラ空きになっていたゴールをロングシュートで狙ったが、素早く戻りながら片手で掻き出した西川のファインセーブで追加点は許さず。だが、パトリックに対応するために大分の守備陣は人数を割かれ、そのことでG大阪のサイドがフリーで起点となる場面が増えた。
60分、G大阪は倉田とチュ・セジョンを南野遥海と奥野耕平に2枚替え。64分にはパトリックの落としから柳澤亘にシュートを許すが小出がブロックした。66分、福岡将太のクロスからパトリック砲。マークについていた小出を上から抑え込むような強度全開で逆転された。68分には南野の反転シュートが枠外。南野は71分にも決定機を迎えたが仕留めきれず。G大阪がチャンスを増やしていく中、屋敷も積極的に仕掛けてクロスを送るなど、大分も攻める姿勢を緩めない。
敗退とはなったが有形無形の収穫も
G大阪が72分に山見を坂本一彩に代えると、大分も73分、増山を野嶽惇也、屋敷を藤本一輝に交代。82分には藤本のクロスがクリアされ、宇津元のシュートがブロックされる。83分、大分は呉屋と宇津元を梅崎司と佐藤丈晟に代え、藤本を頂点に、佐藤丈を左WBに配置。85分にはG大阪が中村を髙尾瑠に代え、87分には大分が弓場をエドゥアルド・ネットに代えて、激しい攻防は続いた。だが、89分、ロングフィードを収めたパトリックがドリブルでエリア内に進入し、対応した西川が倒してPKに。パトリックに沈められ、点差は2へと開いた。
攻撃時にはエドゥアルド・ネットが前線に顔を出すなど最後まで得点を狙ったが、2点目には届かず。天皇杯はこれで敗退となった。
ただ、この試合で選手たちが見せたゴールへのベクトルは、背後を狙う戦術と選手たちの積極性が噛み合ったかたちで、相手を慌てさせた。さらに、日頃から「おとなしい選手が多い」と言われがちなチームが、ロッカールームで激しく言葉を掛け合いながら士気を高めたという。試合後に囲み取材に応じる弓場の表情も、ここ数試合でより引き締まってきたように思える。増山、野嶽、エドゥアルド・ネットら戦線離脱していたメンバーが復帰を遂げたことも好材料だ。
週末にはリーグ熊本戦。大分からもたくさんのサポーターが駆けつけるに違いない。目標達成に向かう強い気持ちを、公式戦のピッチでプレーに反映させて勝利を遂げたい。