守りきれなかった勝点2。一瞬の隙を突かれた負けに等しいドロー
巻き返しを誓って臨んだ後半戦初戦。栃木の激しい守備や硬いピッチに苦しみながらも勝利を目前にしていた後半アディショナルタイム、あと1分ほど乗り切ればというところで、勝点2が手からこぼれ落ちた。
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立ち上がりにはビッグチャンスも迎えたが…
この状況で得る勝点が3なのか1なのかは大きな差だ。それが痛いほどわかっているから、試合後の選手やスタッフたちの落胆は大きかった。ロッカールームでは最年長の梅崎司が、みんなに話をしたという。試合後のミーティングが長引いたため、下平隆宏監督はDAZNのインタビューに間に合わず、記者会見の時刻もずれ込んだ。チームにとってそれだけ大事なミーティングだったのだろう。
今節もフォーメーションは前節と同じ3-4-2-1。ただ、前節から1トップが呉屋大翔から長沢駿、左WBが藤本一輝から松本怜、ダブルボランチの1枚が弓場将輝から下田北斗へと、先発3人を入れ替え。攻撃時はボランチの1枚が最終ラインに落ちて4-3-3の形を取り、後ろから丁寧にボールを動かしながらプレッシングに来る栃木を剥がしていく戦法を採った。
日中からひどく蒸し暑く、じっとしていても汗が滲んだ。日暮れには少し涼しくなるかと期待されたが、湿度は高いまま。ピッチレベルでは虫が多く、選手たちがしきりに手で追い払っている様子が見て取れた。どうやら刺すタイプの虫だったようで、刺された箇所が腫れた選手もいたようだった。
4分、三竿雄斗のアーリークロスに長沢が右足で合わせるが枠は捉えきれない。6分にはボールをつないで決定機。長沢が右サイドに展開するとボールは上夷克典から井上健太へ。井上のカットインからの縦パスをエリア内で渡邉新太が受け、仕掛けてクロス。川田修平のクリアを長沢が押し込もうとするが相手に掻き出され、松本も詰めたが相手にライン上でクリアされた。
栃木にスペースを消され徐々に厳しい戦況に
攻める場面はいくつか作りつつ、相手に掻き出される繰り返し。11分には左サイドに流れた矢野貴章にカウンターで抜け出され、羽田健人がプロフェッショナルファウルで止めた。それで与えたFKは高木駿がパンチングクリア。13分には谷内田哲平の右CKから大谷尚輝にヘディングシュートを許すが、枠の左に逸れた。
低い位置でブロックを構える栃木は、徐々に大分の勝負のパスに対応するようになる。大分は野村直輝と渡邉新太の2シャドーにボールを入れようとするが、そこから先に進めなくなった。そんな22分、黒﨑隼人の爆速カウンターに対応したペレイラが負傷。24分、坂圭祐と交代し、坂がそのまま3バックのセンターに入った。
35分には上夷がミドルシュートを放つが枠の上。この試合では積極的にスルーパスやミドルシュートを狙う姿勢が見え、チームが意図的にそういうプレーを増やしていることが伝わってきた。
羽田のプロ初ゴールで先制に成功
ボールを動かす大分と、得意のカウンターを繰り出す栃木。それぞれに特徴を出し合いながらスコアレスで折り返すと、ともにハーフタイムの交代はなし。
47分には黒﨑のクロスが矢野に通ってヒヤリとしたが、ボレーは上手くミートせず。激しい攻め合いが続く中、56分、三竿からのクサビを受けようとした野村が大谷に倒され、左サイドの敵陣中央でFKを獲得。このチャンスが先制弾へと結実する。セットしたボールのそばに野村と並び立った下田の弓なりのキックを頭で押し込んだのは羽田。ゴール前でふたつの山に分かれていたうちのファーサイドのほうで、本当は長沢をフリーにするためにカルロス・グティエレスを抑え込む役割を担っていたのだが、弾道はフリーでふたつの山の間に顔を出した長沢を越えてきれいに羽田のもとへ。グティエレスを抱え込んだまま決めた、羽田のプロ初ゴールで1点を奪った。羽田はこのセットプレーのアイデアの発案者である岡山一成コーチのもとへとまっしぐら。試合に絡めず苦しかった時期に一緒に練習してくれたコーチと喜びを分かち合った。
62分には三竿がゴール前に送った長いボールを長沢が収めようとしてグティエレスに倒されるが、ホイッスルはなし。63分には栃木にボールを動かされた末に黒﨑に左足シュートを許し、守備陣が体を投げ出してブロックした。そこからの栃木の右CKも、こぼれ球を植田啓太にシュートされたが、三竿が体を張って阻止した。
追撃態勢の栃木のパワーに押し込まれていく
67分、栃木は植田を湘南から育成型期限付き移籍で獲得したばかりの根本凌に交代。中盤3枚、矢野と根本の2トップに変形して前線にパワーをかけ追撃にかかる。69分には森俊輝にシュートされ枠の右。70分には森にカウンターで持ち上がられ大森渚生にクロスを許すなど栃木に攻められる場面が増えていく。
71分には高木と矢野が接触して倒れ込んだが、ともに怪我はなく、矢野にイエローカード。73分、大分は松本を藤本一輝に、渡邉を梅崎司に2枚替えして終盤の力を保った。78分には栃木が西谷優希に代えてトカチ。
84分、トカチに倒された下田がFKで直接ゴールを狙うが弾道はわずかに落ちきれず枠の上。85分には矢野のパスに抜け出したトカチがゴールへと迫ったが、井上がしっかり体を寄せ、シュートは高木がキャッチした。85分、栃木は黒﨑と谷内田を大島康樹と神戸康輔に交代。
最終盤に突入した中、大分は上手くセカンドボールを拾いつつ、小刻みに時間も使って試合を運んでいた。90分にはトカチの右足シュートを高木が横っ跳びで掻き出す。
あとわずかで許した痛恨の劇的同点弾
アディショナルタイムは5分。時間を使うとともに、追撃のため前がかりになる栃木の背後に抜け出させる狙いで、大分は90+3分、疲労した井上を宇津元伸弥に、長沢を呉屋大翔に代えた。
本当に残り1分ほどをそのまま乗り切れれば、2試合ぶりの勝利は手中に収まり、後半戦最初の試合を白星で飾ることが出来たのだが、試合はまさかの劇的展開に見舞われる。呉屋が猛然と二度追いでプレスをかける中、グティエレスのフィードを矢野に落とされ、それを収めた根本に切り返されシュートを許した。強く速い弾道はディフレクションでコースを変え、さすがの高木も反応できずに、ボールはネットに突き刺さる。栃木の新戦力の劇的なJ初ゴールで、大分は掴みかけていた勝点2を失った。
あまりに痛い取りこぼし。負けに等しい引き分けとなった。最後の最後で勝ちきれない詰めの甘さは、連戦が終了しあらためてチームを整えようとした下平監督が、まさに今週のトレーニングで手を入れたポイントだった。
チームは難しい問題を抱えていると、試合後に野村は言った。それについては別記事でまとめるが、ここからどう克服していくかが当面の課題となる。怪我人の復帰には大いに期待したいところだ。