作戦のメリットを生かせずデメリットを突かれた。修正して猛追も一歩及ばず
首位・新潟に対し策を準備して挑んだが、その狙いのメリットを生かせず、デメリット部分を突かれた形で2点ビハインドに。修正して追撃し1点は返したが、追いつくには一歩及ばず。足りないものが浮き彫りになった。
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対新潟のプランはロジカルではあったが…
前節の流れを継続するように、スタートは3-4-2-1を基本形に、攻撃時に3トップを形成する戦い方。ただ、形は同じでも今節はしっかりと対新潟戦術が落とし込まれており、選手たちはスタートから果敢にそれにトライした。
後方から丁寧に攻撃を組み立てる新潟に対し、大分は前線から激しくプレッシング。視野を狭めてパスコースを阻み、ビルドアップを阻害して精度の低いロングボールを蹴らせる。それを収めて攻撃へと切り替えると、攻め急がずにボールを動かして相手の攻撃時間を削りながら、好機をうかがってサイドを起点に素早く攻める算段だった。4バックの相手に対して両ワイドが幅を取れる大分として、プラン自体はロジカルだ。実際に立ち上がりはセカンドボールも拾えていた。
だが、新潟も大分をしっかりスカウティングしており、井上健太のスピードには堀米悠斗が対応。藤本一輝にボールが入ると2人がかりで潰しにかかり、両サイドに起点を作らせてくれない。両サイドが高い位置を取る間にゴール前はしっかり固められ、クロスはことごとく跳ね返された。
激しい試合展開で先制され焦りがあらわに
3分に野村直輝の右CKからニアで三竿雄斗が合わせ、これが決まっていれば出足も最高だったが、小島亨介のファインセーブに掻き出された。そこからは互いにコンパクトな陣形を保つ中で、デュエルが多発する激しい展開に。レフェリーの笛も多く鳴り、18分には呉屋大翔、25分と28分には高宇洋と藤原奏哉に、それぞれイエローカードも提示されて、選手にとっては難しいゲームになったと思う。
互いに互いの攻撃を潰しあう殺伐とした前半は、シュート数も新潟が2本、大分が1本。そのうちの1本を新潟が仕留めて、22分に新潟が先制した。ペレイラをつり出しながら下がってボールを受けた鈴木孝司のスルーパスに高木善朗が抜け出し、高木駿との1対1を制してネットを揺らす。
そこからは新潟のペースへと傾いた。大分の選手たちに早くも焦りが見え、少なくとも攻撃に関しては効果的なプレーが出来ているとは言い難い状態になる。両サイドは相手の速いプレスに遭ってプレー精度を損ない、点を取りたいFW陣はゴール前を固める相手守備陣の密集に埋もれてクロスを待ち、変化をつけることが出来なかった。
松本と長沢の投入で連係が蘇る
ともに交代なく折り返した後半。修正の成果を見極めるより前に、2失点目を喫した。後半立ち上がりの新潟は、追撃する大分が躍起になる裏を突くようにカウンターを狙ってくる。47分、フリーになっていた松田詠太郎が持ち上がってややマイナスのクロスを入れると高木善がボレー。決していい体勢ではなかったが、運悪く上夷克典に当たって軌道を変えたボールは、ゴールネットへと吸い込まれた。
大分は井上がクロスを入れる位置を改善したかに見えたが、今度はそこに走り込む選手がいない。64分、下平隆宏監督は呉屋を長沢駿に、藤本を松本怜に交代。単騎突破が得意な藤本から周囲と連係しながら崩せる松本へと代わったことで、三竿が攻撃に絡みはじめ、左サイドが活気づく。ポジショニングよく時には下りて起点を作る長沢は、やはりゴール前に到達する頃には相手に囲まれていたが、それでもそれは得意の形だ。松本が「頭ひとつ出ていた」という長沢をターゲットに攻め、68分、三竿のクロスから長沢のヘディングは枠の右。だが、73分。松本のクロスから長沢が決めて、73分、大分が1点を返した。
さらに経験豊富な2人を入れて猛追したが
畳み掛けたい大分は74分、野村を梅崎司に、弓場将輝を下田北斗に交代。66分に松田を谷口海斗、高木善を伊藤涼太郎に代えていた新潟は、77分、本間至恩に代えて小見洋太を投入し、前線の勢いを保った。
以後は経験豊富な選手を加えた大分が、相手陣へと攻め込む時間が増える。新潟は前がかりになった大分の背後を突いて3点目を狙う構図。終盤には疲労の色濃いペレイラに羽田健人や上夷も戻って相手のカウンターに対応しながら、猛追は続いた。
だが80分、カットインした井上から渡邉新太へのスルーパスはオフサイド。87分、下田の左CKからの上夷の頭での折り返しは味方に当たって枠外へ。88分には下田からボールを受けた松本が持ち上がり、そこからの横パスをダイレクトで下田がシュートして小島の正面。90分、羽田と松本の協力関係から梅崎が送ったクロスは相手に掻き出された。
アディショナルタイムは4分。90+3分に新潟は谷口を長谷川巧、高を星雄次に代えて時間を使う。90+3分、下田の左CKから上夷がゴールネットを揺らしたが、渡邉のポジションがオフサイドを取られゴールは認められず。せめてもう1点が遠いまま、試合は1-2で終了した。
当初の狙いにアレンジが必要だったのではないか
1失点目は一瞬の隙を突かれたかたちで、2失点目には不運な要素もあった。もとよりリスクを負ってハイラインを維持する戦術でもあり、最終ラインへの負荷は大きかった。
それよりも攻撃の狙いが機能しない際の修正の遅れが気になった。サイドを封じられ、中を固められたときに次の一手への工夫がなかった。チームの狙いとしての共通認識があり、個々の判断では大きく変え難い部分もあったと思うが、呉屋や藤本、井上のストロングポイントが消されたまま、連係できずに時間が過ぎたのはもったいなかった。終盤に経験豊富な選手たちが投入されて以降、試合の流れに変化をもたらすことが出来たことを考えると、先発出場していたメンバーにももう少し工夫できる余地があったのではないかとも思える。それが出来ないのなら交代のタイミングを早める選択もあったと思うが、特に負傷から復帰直後の長沢ら選手のコンディションの問題もあったのかもしれない。そのあたりは監督以下コーチ陣の考えもあることだと思うので、今後、チーム内ですり合わせが進むことになるだろう。
首位との勝点差を縮めるチャンスをものに出来ず、その差が14に開いた状態でシーズンを折り返すことになったのは痛かった。だが、巻き返す時間はまだある。大混戦の今季J2で、最後に笑えるように、チームを取り巻くすべてが一丸となって上を目指し続けるのみだ。