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試合レポート

スタイルを貫くしまねと繰り広げた好ゲーム。戦術浸透の手応えもありつつ初戦突破

 

アグレッシブな守備とポゼッション志向。好チーム・しまねとの攻防はスタイルをぶつけ合うさわやかな一戦となりつつ、ひとつひとつのプレーや局面の力量差で大分が上回る展開に。3得点無失点での勝利とともに、さまざまな収穫も得た。

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宇津元の速いクロスに梅崎が合わせ先制

J2第19節・群馬戦から中2日。アウェイから帰ってくる移動日も含めて準備期間が乏しい中、この試合には群馬戦から10人を入れ替えてスタートした。右SBで先発した保田堅心に加え、ベンチにも4人の2種登録選手が並ぶ。対するFC神楽しまねはJFL第9節・ヴィアティン三重戦から中3日で、こちらは先発3人を入れ替えての臨戦。
 
カテゴリーの上では“格下”のしまねだが、立ち上がりから大分のビルドアップに対しスライドして3枚でハイプレスをかけながら、ボールを奪うとしっかりパスをつないで攻めるスタイルで真っ向勝負に出た。だが、大分のほうも相手の出方を見極めて立ち位置やビルドアップを変化させながら、長短のパスを織り交ぜてボールを動かす。9分、中川寛斗がカットインからシュートして枠外。20分に宇津元伸弥の速いクロスに梅崎司がダイレクトで合わせて先制点を奪った。22分にも松本怜のクロスに呉屋大翔が頭で合わせたが、これは枠の上。
 
しまねはプレスをかわされると見ると、高い位置でコンパクトなブロックを構えつつ、奪って反撃を試みる。だが、パスやトラップといったひとつひとつのプレー精度、球際での強度で少しずつ大分に上回られ、なかなか好機を築くことが出来ない。一方では大分も、何度もゴール前にまで攻め込むが、相手守備陣に対応された。39分には下田北斗の鋭い縦パスを収めた呉屋が反転シュートしたが、井上亮太にキャッチされる。

 

宇津元プロ初ゴールで追加点

両軍交代なく折り返した後半も、しまねのアグレッシブなプレーは続く。大分はそのスペースを使いながら巧みに攻め、50分に下田の縦パスを収めた呉屋のシュートは枠の上。54分には中川のクロスから得た右CKのこぼれ球を松本が狙ったが、これも枠上に逸れた。
 
しまねは55分、清本将史と髙畑智也の2トップを堀田佳佑と加倉広海に交代。57分、加倉がボールを奪ってカウンターを仕掛け、ビッグチャンスを迎えるがクロスはゴール前を横切り大分守備陣にカットされた。59分には大分の右CKの流れからの呉屋のヘディングシュートが井上に掻き出される。
 
大分がやや優勢な中で互いに好機は作りながら0-1の時間が続いていたが、63分、大分が追加点。梅崎のパスを受けてカットインした宇津元が右足シュートでネットを揺らし、自身のプロ初ゴールを記録した。その1分後にも梅崎のクロスに対する相手のクリアがあわやオウンゴールというシーン。65分には左CKの流れからシュートが2度も枠に阻まれ、最後はしまねに掻き出される。
 
68分、しまねは佐藤啓志郎に代えて川中健太を投入した。69分には大分が3枚替え。梅崎、松本、小林裕紀に代えて伊東幸敏、佐藤丈晟、上夷克典がピッチへ。保田がボランチに移って伊東が右SB、佐藤丈が右SHに入り宇津元が左SHに回った。上夷はそのまま左SBという布陣になる。

 

2種登録選手たちも躍動。3点目はFKから丈晟弾

攻撃陣をフレッシュにしたしまねも徐々に決定機の濃度を高め、74分にはボールを動かしながらゴール前へと攻め込んだが、最後の堀田のヘディングシュートは枠を捉えきれない。逆に大分は76分、中川のFKを坂圭祐が頭で折り返し、佐藤丈が押し込んで点差を3に広げた。
 
セーフティーリードと呼べる状況を作って、79分には宇津元が後藤響と交代。後藤はそのまま左SHに入る。しまねは80分、菅本岳と澤島輝を桃井紳伍と筒井俊に代えて追撃の勢いを増すが、82分、加倉がクロスに走り込むチャンスも小出悠太の対応に阻まれ、再三の好機を得点に結びつけることが出来ない。
 
84分には後藤がカウンターからドリブルで相手を剥がしGKと1対1の状況を迎えたが、シュートは井上に阻まれる。85分には中川に代えて松岡颯人。2種登録選手たちが荒削りながら伸びやかにプレーして、試合終盤のチームに勢いをもたらした。90分には後藤のクロスが松岡にわずかに合わない場面も作る。
 
3点を追うしまねも最後まであきらめないが、88分には桃井のシュートが枠の右に外れるなど、今季のリーグ戦で課題としている得点力不足が最後まで響くかたちとなった。

 

連戦をこなしながらようやくベースが育ってきた

試合後に下平隆宏監督が明かしたところによると、この試合に臨むにあたってはいつものように細かい指示をせず、特に小林と下田のダブルボランチにゲームを預けるかたちで、選手たちの自主性に任せてみたという。
 
試合後には「まずしっかり結果を出すことに関しては応えてくれた。上手くコントロールしてくれたと思う」と指揮官が評価する内容。相手との地力の差もあったかもしれないが、これまで一緒にプレーしたことのない急造布陣にして戦術的狙いを体現できたということは、それだけチームとしてのベース部分が育ってきた証左だと言える。共通理解をもとにピッチ上のリーダーが舵取りできれば理想的だ。さらに別記事で触れるが、梅崎のゴールも、ここ最近の狙いどおりだった。
 
天皇杯ではあるが、昭和電工ドーム大分でひさしぶりの勝利を遂げて、これをまたリーグ戦で勝点を積んでいく勢いにつなげたいところ。6月22日に開催される3回戦の相手は延長戦で岐阜を下したG大阪に決まった。ルヴァンカップに続き今季3度目の新旧指揮官対決となる。リーグ戦の合間で難しい状況ではあるが、このカードは駆け引きの面白さでは群を抜くので、それも楽しみに観戦したい。

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