互いにスペースを突きあった中、重心高い攻撃からの新太弾で6試合ぶり勝利
7連戦の5戦目は、一部の選手を入れ替え戦い方を変えての攻略。互いに裏のスペースを突きあう展開で相手にも決定機を作られたが、高木の好守にも助けられ無失点。渡邉の先制弾がそのまま決勝点となり、6試合ぶりの白星を掴んだ。
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早めに前線のスペースへとボールを送って攻めた
この日、群馬県高崎市では午後に気温35.2℃を記録し、全国初の猛暑日に。群馬特有の灼熱の陽射しが照りつけたが、試合開始前には28.9°Cにまで下がり、さわやかな風がわたる夕暮れとなった。15時55分には茨城県沖を震源とする地震も発生したが、前橋市は震度1にとどまった。
この日の布陣は4-4-2。前節に続き羽田健人が先発したが、今節は3バックではなく弓場将輝とボランチを組んだ。攻撃時にボランチの1枚が下りて3-4-3となるのは前節と同じ。前節は長いボールを多く入れてくる秋田対策として高さがあり対人にも強い羽田を最終ラインに配置したかたちだった。下平隆宏監督は「羽田を入れておけば試合中にそのまま5バックも形成できる」と、そのユーティリティー性に言及した。
攻撃時に中盤ワイドとなる伊東幸敏と松本怜、3トップの両WGとなる井上健太と藤本一輝がそれぞれに内側を取ったり大外を取ったりしてギャップを作りながら、この試合では早めに相手SBが高い位置を取った背後のスペースへと配球。藤本や井上が収め、松本や伊東、トップ下の渡邉新太、さらにはアンカーや最終ラインも絡んで群馬を押し込む算段だ。
一方の群馬も、攻撃時にはスライドして3バックを形成しながら、立ち上がりから積極的に大分のSB裏のスペースを突いてきた。やはり後方からのビルドアップでなかなか迫力を醸せていない現状で、大分の特徴であるSBがインサイドを取った際の背後へと素早くボールを運ぶ。特に試合開始直後の勢いはめざましく、小島雅也には何度も突破からのクロスを許した。高木駿の落ち着いた好守を中心に、ペレイラと三竿雄斗のカバーリングや松本、伊東、井上らの速い帰陣で対応したが、相手の精度不足に救われていた感も否めなかった。
少しずつの質で相手を上回り新太弾で先制
だが、徐々に試合は大分のペースへと傾く。守備時には4-2-4気味に積極的な立ち位置を取り、ボールを持てば押し込みながらなかなか効果的に好機を築けない時間帯もあったが、藤本や井上の個での突破と組織での連係の合わせ技でサイドでの数的優位を作り、クロスを入れる場面が増えた。
この試合では右CK時にも新たな試みを披露。松本と弓場が並び立ち、左右いずれのキックが来るかを惑わせた。15分、そうやって蹴った松本の右CKをサムエルが競って羽田に当たり、最後は井上がシュートするが櫛引政敏にキャッチされる。その2分後には畑尾大翔のフィードに抜け出した小島に切り返しで剥がされてシュートを許したが、高木が横っ跳びで掻き出した。21分には加藤潤也が最終ライン裏に送ったグラウンダーのボールに平松宗が走り込もうとしたが、伊東が先にカットして事なきを得た。
22分、相手を押し込んで左サイドでボールを動かすところから先制点が生まれる。藤本、松本、三竿が絡んで弓場がクロスを上げると、岩上祐三の足に当たって少し軌道を変えたボールは城和隼颯の頭上を越える。ボールの落下点に入って渾身で頭を振ったのは渡邉だ。前々節の岡山戦でヘディングシュートを外してから意識的に練習していたという、その成果が早速、この試合で得点に結実した。
後半は群馬が修正して展開を五分に持ち込む
27分には内田達也のサイドチェンジから小島の折り返しに風間宏希が合わせるが、猛スピードで高木の背後にカバーに入ったペレイラが見事なブロック。31分には井上の仕掛けから渡邉がシュートチャンスを迎えたが、上手く打てずに掻き出された。45分にも左サイドの回しから羽田がシュートするが、これは相手にブロックされる。
群馬はボールを奪ってからつなごうとして大分に引っ掛けるミスを多発。パスワークで相手をいなすことにかけては、やはり大分のほうが一日の長があると見えた前半だった。
それも受けて後半の群馬は、岩上が最終ラインに落ちてビルドアップする形に変更。前線からの守備も大分の攻撃時の形に合わせてハメにかかった。1点リードした大分は守備時に4-4-2のブロックで落ち着いて対応する。
48分には山根永遠のミドルシュートを高木がキャッチ。山根は49分にもグラウンダーのクロスを入れるがこれも高木が押さえた。51分には渡邉がサムエルとのワンツーからエリア内に攻め込むが相手に対応される。
高木の度重なるファインセーブで流れは明け渡さず
53分、ボールを運ぶ山中惇希に寄せた井上が右腕を押さえてプレーを中断。ピッチサイドで治療し、一度は復帰する意志を見せたのだが、下平監督は「連戦でもあるし早めにカードを切った」と、55分に井上とサムエルを宇津元伸弥と呉屋大翔にスイッチした。
その交代直後、一瞬の隙が生まれていた56分。カットインした山根からの浮き球に飛び込んだ平松に頭で合わされてヒヤリとしたが、高木が至近距離で阻止する。
この日の群馬にはツキもなかったようで、60分にはバックパスからの櫛引のダイレクトのキックが、その瞬間の突風に流されてゴールラインを割り、大分のCKになる不運も。そこからの弓場の右CKはクリアされ、続く左CKは松本が蹴って、逆サイドに流れたところを宇津元が折り返し、そのこぼれ球を弓場が狙って枠外に逸れた。
65分には高い位置でボールを奪った渡邉がシュートするが櫛引の正面。68分には小島のクロスを内田がゴール前で受けるが、トラップの大きくなった隙に高木が対応した。
大槻毅監督は69分、岩上に代えて天笠泰輝。70分にはセットプレーの流れから風間がシュートしたが、これも高木ががっちりとキャッチする。
激しい攻め合いの末に逃げ切り成功
72分には下平監督が藤本と松本を梅崎司と上夷克典にチェンジ。73分には小島のクロスから平松にヘディングシュートされるが枠の左へ。78分には呉屋が相手のパスをカットして自ら持ち上がり櫛引との1対1の状況を作るが、鋭いシュートは櫛引に阻まれた。群馬は79分、風間と小島をベンチに下げ奥村晃司と川上優樹を投入する。
82分には伊東のスローインにはじまる一連の攻撃。弓場、渡邉、宇津元が絡んで最後はエリア内のスペースに走り込んだ伊東が左足を振り抜いたが、弾道はわずかに左に逸れた。83分にはカウンターから山根が右足ミドルシュートで狙い、高木が跳んで掻き出すファインセーブ。群馬は86分、加藤と平松を北川柊斗と髙木彰人に交代して3バックに変更。川上を前線に上げてパワープレーで激しく追撃した。
互いに攻めあいながらアディショナルタイムは6分。大分は90+1分、渡邉に代えて野村直輝を投入した。経験豊富な野村が巧みに時間を作り時計を進め、どちらのネットも揺れないままで試合は終了。大分が1点で逃げ切り、6試合ぶりの勝利を掴んだ。
羽田や弓場の特長を生かした起用法とシンプルな戦法の採用でまた新たなオプションを加えたチーム。サムエルのストロングポイントをどう生かすかを周囲が理解してきた手応えもあり、今節は急造気味で荒削りな部分も多くなったが、戦い方の幅は徐々に広がっている。あとはこれを勝点に結びつけるだけだ。
天皇杯を挟んで次節の町田戦で7連戦は終了。同時に11連戦、9連戦と続いてきた大型連戦も終わる。負傷者も含めての壮絶な総力戦。チームはまだまだ、諦める状況にはない。