多くの時間帯で主導権を握り複数の決定機を築くも、無念の黒星
サッカーの非情さを目の当たりにするようなゲームになった。狙いどおりスタイルを体現し好機を多く築きながら仕留めきれず、激しい攻防の末に87分の1失点で敗戦。勝点を積めず、逆に岡山に+3を許したことも痛い結果となった。
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ルヴァンC大阪戦の好感触をリーグ戦で継続
基本フォーメーションは4-2-3-1で、攻撃時にボランチ1枚が落ちて中盤ダイヤモンドの3-4-3に変形する。つまり、18日のルヴァンカップ第6節・C大阪戦と同じシステムで、チームは今節に臨んだ。下平隆宏監督が最初に落とし込もうとした戦術に非常に近い形だ。一方の岡山も基本の形は4-2-3-1。こちらは両サイドが上がり攻撃時に4-3-3の形を取る。
立ち上がりから積極的にハイプレスをかけてくる岡山に対し、その立ち位置で撹乱して上回ったのは大分だ。7分、ペレイラのスルーパスに抜け出した井上健太がペナルティーエリアに進入して決定機。だが、シュートは堀田大暉に阻まれた。
9分、高畑奎汰が足を痛めるアクシデント。その攻撃能力に期待されていたが、プレー続行不可となり10分に上夷克典と交代した。ルヴァンC大阪戦では右SBだった上夷は今節は左SBに入り、左右逆ながらインサイドでボールを引き出すタスクを器用にこなす。11分には三竿雄斗の裏へのフィードに抜け出した藤本一輝が河野諒祐をかわしてエリア内に進入し右足シュート。だが、これも堀田の好セーブに遭った。
相手に修正されるも個々の特長で上回り攻め続ける
大分の立ち位置に最初は戸惑いを見せた岡山だったが、まもなく木山隆之監督がピッチサイドから声をかけて修正。上夷がインサイドを取る際に開けたスペースをタイミングよく使うよう指示したらしく、23分には田中雄大がそこへパス。流れて受けたミッチェル・デュークのクロスは三竿が対応して未遂に終わらせる。
続く24分には河野がやはり同じところを突いてパスを出し、田中が抜け出してクロス。ミッチェル・デュークに頭で合わせられたが、シュートは枠外へ。27分にもやはり田中のドリブルからのスルーパスを河野が受け、バイタルエリアの川本梨誉へ。川本のシュートは枠上に外れたが、右サイドの連係で立て続けにSBの裏を突かれ、アンカー1枚で手薄になったバイタルエリアを狙われた時間帯だった。
三竿とペレイラに小林裕紀と下田北斗が戻ってそれをカバーしながら、31分には井上がスピードに乗った突破からクロスを供給してヨルディ・バイスにクリアされる。40分には藤本からのボールを受けた野村直輝のワンタッチパスを下田がトラップで相手を外し右足シュート。だが、これも堀田がファインセーブ。44分には下田の浮き球スルーパスに呉屋大翔が抜け出してオフサイド。
攻守がめまぐるしく入れ替わる白熱の展開に
球際激しくぶつかりあうインテンシティーの高いゲームは0-0で折り返し、両軍交代なしで後半スタート。立ち上がりにいきなり川本に持ち上がられ左足を振られるが、そのグラウンダーは高木駿がしっかりキャッチする。51分には井上のクロスに呉屋が頭で合わせたが枠の右に逸れた。55分には河野のクロスから川本のヘディングシュートが枠の左。56分には三竿のクロスをファーで井上が折り返し、クリアされたところを下田がシュート。さらにそのこぼれ球を井上が狙うがこれも決まらず、互いに攻め合いながら得点が奪えない。
スペースが生まれはじめた61分、先に動いたのは下平監督。野村と呉屋を渡邉新太とサムエルに入れ替えた。63分には木山監督もハン・イグォンを木村太哉に交代する。それぞれ途中出場した選手が激しい応酬にさらなる勢いをもたらしながら、攻めも攻めたり守りも守ったり、トランジションは激化の一途。68分には小林裕のシュートが喜山康平にブロックされたところからカウンターで木村にシュートされ高木がキャッチして、めまぐるしい展開が続いた。
攻め合い守り合いながら試合は終盤へ
69分、岡山が川本と田中をチアゴ・アウベスと白井陽斗に2枚替え。白井が右SHに入り、チアゴ・アウベスとミッチェル・デュークが2トップを形成した。助っ人2人をターゲットに71分、木村が放ったクロスは高木がきわどいところでアグレッシブに処理する。
集中しなくてはならないタイミングで、またも大分にアクシデント。少し前から足を気にしていた伊東が倒れ込み、プレー続行不可能となった。74分、伊東と井上をベンチに下げ、屋敷優成と伊佐耕平を送り込む。これで両SBが負傷交代。右SBには屋敷が入り、伊佐が前線で右に大きく張った。
77分にはサムエルの落としを渡邉がスペースへと送り、サムエルがそれに追いついてドリブルで蛇行しながらエリア内まで持ち込んでクロス。掻き出されたところを藤本がシュートし、ヨルディ・バイスの手に当たったがハンドは取ってもらえず。
81分、渡邉の展開から伊佐がクロスを入れ、ゴール前に走り込んでいた渡邉がフリーでヘディングシュートを放ったが、この試合いちばんのビッグチャンスも枠を捉えることは出来ず。
一瞬の隙の失点ときわどい判定に泣く
どちらかに転ぶのか、転ばずにこのまま0-0で終わるのかという最終盤。一瞬の隙をゴールへと結実させたのは岡山だった。87分、宮崎智彦のスローインからミッチェル・デュークがファーサイドに送り、河野がヘディングで折り返してチアゴ・アウベスのヘディングシュートがネットを揺らす。大分は左右からの折り返しに揺さぶられ、寄せの甘くなったところを仕留められた形だった。
89分、宮崎を阿部海大に代えて守備を固め逃げ切りを図る岡山。アディショナルタイムは4分。ペレイラも前線に上がった90+3分に“事件”が起きた。屋敷の弓なりのクロスを藤本が競り、それを処理しようとしてファンブルした堀田と押し込もうと飛び込んだ渡邉が接触。こぼれ球をサムエルが押し込んで劇的同点弾かと思われたが、大坪博和主審は両腕を広げてノーゴールのジェスチャー。堀田のファンブルと渡邉との接触とのきわどいタイミングによる微妙なファウル判定で、これには大分の選手たちも猛抗議した。だが、判定は覆らず、異議を唱えたとして三竿にイエローカードが提示される。試合はそのまま岡山の1-0勝利で終わった。
この試合に向けていつも以上にテンションを高め準備していただけに、試合後の選手たちの落胆は大きかった。どれだけ内容のよくない試合後にも取材対応のためミックスゾーンに顔を出してくれる選手たちも、この日は悔しそうに俯いて足早にバスに乗り込んだ。最後のジャッジの後味の悪さも引きずりながら、これだけいい形でチャンスを築いておいて敗れたことが、7連戦の3戦目を終えたチームに重くのしかかった。
だが、中3日ですぐにホームでの次節だ。この敗戦を引きずらないリバウンドメンタリティーが試される。試合後、新幹線で大分に帰った選手たちは、すぐに秋田戦に向けての準備にかからなくてはならない。