野村復活弾、北斗FK弾。岩手の猛追を振り切って今季2度目の連勝
終盤には相手の猛追を跳ね返すばかりの苦しい展開となったが、どうにか退けて今季2度目の連勝。野村の戦線復帰という大きな収穫もありながら、タフなアウェイ連戦を乗り切った。
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積極的にクサビを打ち込み野村の個人技を引き出す
キックオフ時刻には15℃にまで上昇すると予想された気温は、いまひとつ上がりきれないまま。公式記録には12.4°Cと記載されたが、寒風吹き荒ぶスタジアムは極寒状態。おかげで雨上がりながら湿度は20%と快適だった。
前半は風下スタート。守備時には5-4-1のブロックを構える岩手に対し、大分はSHが中に絞りSBが幅を取って攻撃する。サイドに起点を作ることで中を固める相手を動かしながら、小林裕紀や下田北斗が積極的にブロックの中にクサビを打ち込んだ。長いリハビリから復帰して今季初出場の野村直輝と渡邉新太、長沢駿と呉屋大翔の2トップがそれを受け、コンビネーションを駆使して攻略にかかった。
中から攻め、早めに前線につけることで相手のカウンターに対するリスクマネジメントにも抜かりがなかった。上手くカウンター発動できない岩手は前節の群馬戦に続き、まもなくシステムを3-5-2へと変更。大分もそれにともなってポジショニングを駆け引きしていく。
岩手は左サイドからのクロスでチャンスを作ったが、高木駿を含め守備陣が対応した。大分ペースで進む中、絶対に欲しかった先制点を27分にゲット。左サイドのパス交換で相手を引きつけたところで下田がワンタッチのクサビをスペースに下りた長沢へと送り、長沢が野村へと託すと、野村は人数をかけて素早く阻みに来る相手守備陣を個人技でかわしてシュートする。長いリハビリからの復活を告げる見事なゴールに、野村自身もチームもサポーターも沸いた。
下田のビューティフルFK弾でリードを広げたが…
ビハインドになった岩手だが、期待したほどには前に出てこず、攻略は続く。距離感よく立ち位置を取りブロックの中でボールを動かす大分はFKも含め好機を多く築いたが、追加点には至らない。岩手が大きなサイドチェンジからチャンスを作りクロスを入れてきたのに対しては、ペレイラを中心にターゲットのブレンネルをしっかりとケアした。
大分ペースの展開を覆すべく、岩手はハーフタイムを境に3枚替え。加々美登生をビスマルクに、増田隼司を中村充孝に、鈴木魁人を色摩雄貴にチェンジして、1トップ2シャドーへと陣形を変える。右サイドで強度を醸し出すビスマルクは早速、香川勇気や渡邉に迫力の肉弾戦を仕掛けてきた。
激しさを増す攻防の中、岩手に流れを渡すまじとポゼッションを続ける大分は、54分に追加点を挙げる。先制点の場面と似た形で今度は三竿雄斗のクサビを長沢が落とし、野村が相手のファウルを誘って得たFKのチャンス。ゴール正面25mの絶好の位置から直接狙って振り抜かれたのは下田の左足だった。背後からの強風に押される中、見事に巻いた弾道は左ポストの内側を叩いてゴールの中へ。下田の直接FKでの得点は昨季J1最終節の柏戦以来。J2では初得点となった。
その後は選手交代で強度を高めた岩手のペースに
リードを広げたことで「少しチーム全体でほっとしてしまったのか…」と、下田はその後の展開を試合後に振り返る。スコアの動きにより、前半に比べて積極的な攻めでリスクを負うよりもポゼッションで相手に攻めさせない意識へと傾いたようでもあった。それ自体はセオリー的な判断だとも思うが、そこからの岩手のリバウンドメンタリティーと大分の連戦による疲労が、試合の流れを反転させていった。
62分、下平隆宏監督はまだコンディションが万全ではなかった野村を井上健太に交代する。63分にはセカンドボールを拾ったビスマルクのクロスに和田昌士が詰めて岩手の決定機。ペレイラと高木が対応してなんとかしのいだ。69分にはゴール正面でFKを与えたが、中村太亮の左足から放たれたシュートは枠上に逸れる。
疲労の色が濃くなる終盤、相手に1点を返される
疲労の色が濃くなった大分の左サイドを再三にわたり脅かしていたビスマルクのクロスから、71分、岩手のゴールが生まれる。フリーで斜めにニアサイドへと入っていった色摩が右足を伸ばしボレー。高木の対応をすり抜けて、ボールはゴールへと吸い込まれた。
左サイドの疲弊に気づき交代を準備していた下平監督は「もう少し早く交代していれば」と悔やむ。73分、渡邉をエドゥアルド・ネットに、呉屋を伊佐耕平に代え、ネットと小林のダブルボランチ。下田を左SHに移した。同時に秋田豊監督も、和田を奥山洋平にチェンジする。
78分には香川のクロスに長沢が潰れ、伊佐が合わせに行ったが枠を捉えることが出来ず。80分には奥山がペナルティーエリア左からシュートして枠の上。82分にはブレンネルのシュートに伊東幸敏が体を張る。85分には相手のミスを突いてボールを奪った井上がゴール前へとボールを送るが、飛び込んだ伊佐とわずかに合わず。
盤石ではなかった。だが勝点3の現実が重要
終盤の岩手の追撃の強度は非常に高く、大分は完全に劣勢に回った。86分、伊東が出した足に接触はしていないが中村太が倒れ、ファウル判定となってFKを与える。そのタイミングで弓削翼と交代して入った深川大輔が右足で放ったシュートはクロスバー。あわや同点のピンチだったが、わずかな精度不足に助けられた。深川は89分にも積極的にゴールを狙い、岩手の猛追に勢いをもたらした。
岩手は左CKのチャンスに野澤大志ブランドンも上がって2点目を狙う。その高い圧を感じながら、アディショナルタイムは4分。前線にパワーをかけてくる相手を前に、この時間帯をどう乗り切るかの判断は難しかった。大分の首脳陣は長沢に代えて坂圭祐を投入し、5バックに変更して守備を固める策を選んだ。
90+3分にはゴール前への浮き球に色摩が飛び込み、間一髪で高木が抑える。右サイドから攻める岩手に対して、ルヴァンカップにも出場し疲労している伊佐も懸命に戻って対応した。猛追される中、ひとつのミスで勝点2を失いかねないギリギリの攻防。中村太の右CKを坂が競り高木がキャッチしたところで試合終了の笛が鳴り、大分の逃げ切りが成功した。
得点機を逃して楽な展開に持ち込めなかったことで、連戦の疲労があらわになる苦しい終盤となった。だが、泥臭くても勝点3を積むことが、いまは何より重要だ。今季2度目の連勝を遂げたチームは、中3日でホームに戻って金沢を迎える。