TORITENトリテン

試合レポート

守備面の修正を図りつつ攻撃的姿勢を貫いてリーグ戦2連勝。ネット初ゴールも

 

同じ4-4-2のフォーメーション、ボランチが下りてビルドアップする形も似ているマッチアップ。布陣をコンパクトに保ち、立ち位置で先手を取って主導権を握ったのは大分だった。

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互いにタフな状況でのマッチアップ

前節の琉球戦に4-1で勝利後、ルヴァンカップ第3節・C大阪戦では1-6と敗れたが、今節は好調の仙台にアウェイで3-1と快勝。リーグ戦2連勝で、順位は9位へとジャンプアップした。
 
仙台は今季初の水曜ナイトゲーム。日中は紫外線強めの陽射しがそそぎ気温も20度前後まで上がったが、日没後はすっと冷え込み、プレーヤーにとっては好都合な気候になった。
 
仙台は新型コロナウイルス感染症から原崎政人監督が3試合ぶりにテクニカルエリアに復帰。2CBには若狭大志と福森直也が並んで古巣を迎えた。ルヴァンカップがないため26日に行われたのはJ2第6節・町田戦。0-3で今季初黒星を喫した試合から中3日のホーム連戦で、先発4人を入れ替えた。
 
26日の試合がルヴァンカップだった大分はターンオーバーして臨んだが、11連戦の10戦目で移動の負荷もかかる。両軍ともタフな状況を背負ってのマッチアップとなった。

 

攻守に積極性全開。成豪の今季3点目で先制

立ち上がりにいきなり左CKの流れからネットを揺らされたが、オフサイド判定に助けられる。その後は締まったプレーが続き、大分がペースを握った。4分にはフォギーニョのパスを下田北斗がインターセプトして呉屋大翔がつなぎ、渡邉新太がシュートも枠の右。9分には小林成豪が長沢駿に送ったフィードが福森にクリアされたところを呉屋が拾い、個人技で若狭をかわして左足シュート。これはストイシッチに指先で触られてわずかに右に逸れた。好調の2トップをどんどん使っていこうと申し合わせていたチームは、積極的に攻め続ける。
 
11分、右サイドで縦に出した下田のフィードを長沢が呉屋に落とすと、呉屋は最終ラインでのポゼッション時からボールサイドにスライドする相手が手薄になっていた逆サイドの小林成へとパス。小林成はマークについた真瀬拓海を鋭い切り返しで剥がすと、迷いなく左足を振り抜き先制点を奪った。
 
守備では小林裕紀を中心に布陣をコンパクトに保ちつつ、大分と同様にボランチの1枚が落ちてビルドアップする相手に合わせ、こまめにスライドした。仙台の最終ラインはパスコースを塞ぐ大分のブロックの外側から揺さぶりをかけながら機を見てクサビを試みるが、大分も潰しどころを見極めており、仙台の好きにはさせない。19分にはロングフィードから皆川佑介が背後に走り、対応した高木駿が警告を受けたが、守護神はその後も臆せずポゼッションに参加し広範囲を守り続けた。
 
呉屋が果敢にゴールを脅かし、長沢が相手からボールを奪い、小林裕が富樫敬真の強烈なシュートをブロックし、小林成がスライディングタックルする。45分には左サイドの対応がわずかに後手に回ったところを遠藤康に巧みな個人技で突破されたが、エリア内でも厳しく寄せると遠藤のシュートは枠の左へ。攻守に見どころ満載の前半を終え、試合は1-0で折り返す。

 

好調の呉屋、自らもキレキレの2点目

後半開始直後に相手の左サイドからの攻撃に粘り強く対応した後、48分に追加点。下田が積極性全開でゴール前に入れたボールは長沢の前に入り込んだ石原崇兆にカットされたが、そのこぼれ球が呉屋に収まると、持ち替えて若狭の股を抜き2点目をゲットした。50分にも渡邉がシュートするがこれは枠外へ。53分には仙台のカウンターをペレイラが阻止。
 
仙台は加藤千尋と遠藤の左右を入れ替えて縦の連係を改善したが、なかなかいい状態で攻撃を構築できない。58分には石原が勢いよく持ち上がって突破を試みたが、ペレイラに阻まれた。59分、原崎監督が梁勇基を鎌田大夢に代えて攻撃色を強める中、62分の真瀬と加藤の連係からの富樫のヘディングシュートは高木がキャッチ。高木は65分の遠藤のFKも落ち着いて抑え、大分のアグレッシブな守備は勢いを醸す仙台の追撃を退け続ける。
 
67分には下平隆宏監督が長沢を伊佐耕平に代えて前線の勢いを維持。69分、ペナルティーエリア左からの下田のFKは変化をつける形で、低く速いニアへの弾道に三竿雄斗が飛び込んだが、合わせきれず。
 
70分、仙台は皆川をベンチに下げてキム・テヒョンを入れ、システムを3-4-2-1に変更した。おそらくそれほど事前準備があったとは思えないが、この立ち位置の変化に大分がどう対応するかを見守っていた73分、仙台の右サイドの崩しから失点。バウンドするボールを加藤と真瀬が上手くつなぎ、真瀬が足を滑らせながらゴール前へと送ったボールが高木の頭上を越えてゴールへと吸い込まれた。

 

失点後の嫌な流れを吹き飛ばしたネットの豪快FK弾

1点を返して勢いづいた仙台が反撃の狼煙をあげたところで、すぐに下平監督が動く。76分、下田と小林成をエドゥアルド・ネットと宇津元伸弥に交代。
 
ネットは26日のルヴァンカップC大阪戦で63分から移籍後初出場を果たしたばかり。そのときはまだ戦術理解も十分ではなく、結果的に守備組織にほころびを作ってしまい、試合後には香川勇気と戦術確認している様子も見られた。それから中3日、フィットはどれだけ進んだのか。だが、この試合でのボランチの相方は19年に名古屋でコンビを組んでいた小林裕。おそらくコミュニケーションもスムーズだったのだろう。下平監督は「トレーニングでもネットにボールが入ると落ち着く」と評価しており、それに期待して流れを引き戻すべく投入したそうなのだが、ピッチに立った4分後、ネットは指揮官の意図を上回る存在感を見せつけることになる。
 
果敢な攻撃が相手のハンドを誘って得たFKの場面。セットしたボールのそばには三竿、伊佐、エドゥアルド・ネットが立った。三竿よりも前に立って入念に壁へと指示を出すのは伊佐。だが、まさかのネットが左足を振り抜き、その豪快な弾道はクロスバーの内側を叩いて3点目へと結実する。再び2点差として、相手に傾きかけた流れを引き戻した。

 

最後は5バックで枚数を合わせて逃げ切り成功

この時間になっても大分は守備の集中を切らさず、相手のパスコースを消しながらスライド。仙台が外回しから長いボールで状況打開を図ると後ろ向きの対応でもボールを収め、前を向いて攻撃へと切り替えた。
 
84分、仙台は石原とフォギーニョを内田裕斗と大曽根広汰に交代。遠藤と大曽根がシャドーに並ぶ形となる。内田が攻撃力を発揮してサイドを突破する回数が増えると、下平監督は渡邉に、守備時に一列下がって5バック状態でケアするよう指示したようだった。89分には呉屋と伊東を坂圭祐と松本怜に代えて明確な5バックシステムに変更し、相手に枚数を合わせて守備固め。アディショナルタイム5分も乗り切って3-1で勝利を掴んだ。
 
基本フォーメーションを4-4-2に変更して以後、連戦中とあって少しずつ守備戦術を整理してきた中で、今節も残念ながらクリーンシートで終えることは出来なかった。だが、確実に守備は安定しており、失い方や奪い方が整理されたことでトランジションの質も高まっているように見える。
 
中3日でアウェイ連戦の次節はやはり好調の東京V。今節の琉球戦では2点ビハインドから怒涛の5ゴールラッシュで大逆転勝利。だが、こちらも調子を上げてきたところだ。勢いを持続して味スタへと乗り込みたい。

副キャプテンから勝利のサービスカット