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試合レポート

待ち兼ねた1勝、ようやく。好調FW陣を生かす4-4-2で4得点での初白星

 

ルヴァンカップを含め公式戦8試合目にして遂げた今季初勝利。過密日程の中、戦術的修正も施しながらようやく掴み取った勝点3を、浮上への糸口としたい。

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今節の形は攻撃視点からの4-4-2

引き分けながら、まるで敗戦後かのような落胆ぶりだった前節の山口戦から中3日。試合の中で選手たちの意識が統一されていない場面を見て取り、下平隆宏監督は一体感が必要だと説いた。11連戦の8戦目で、出場を続けている選手たちの疲労も蓄積され、入れ替わり立ち替わり負傷者も出ている。
 
そこで指揮官たちが琉球戦に向けて準備したのが、攻撃的4-4-2システムだった。ルヴァンカップ第1節の鹿島戦でも4-4-2、続くリーグ山口戦でも4-2-3-1を採用したが、どちらかというと守備の安定や相手の攻撃起点のケアを発想の発端としたものという印象。今節は「特にいまCFが好調なので1トップだけにしておくのはもったいないと考えて」(下平監督)という攻撃視点からの4-4-2採用だ。ビルドアップの仕方にも改変を加え、2トップの相手に対して3バックでボールを動かす形を採った。それにともない、ボランチの1枚とともに3バックを形成する2CBの左には、三竿雄斗を配置。左WB的な位置を取る左SBに香川勇気を置いた。
 
右SBには移籍後初出場の伊東幸敏。右SBを本職とする選手のいなかった中、オーソドックスな仕事に期待されたが、プレシーズン、戦術にフィットする前に負傷して出遅れていた。
 
今節は前節から4人を入れ替えたその布陣で、攻撃時には小林裕紀が最終ラインに落ちてサイドを高くし、前線に枚数をかけられる形に。守備時には4-4-2のコンパクトなブロックで、クサビが入ったところに強く寄せて相手の攻撃を阻んだ。

 

19分成豪、23分伊佐。37分には清武にやられる

やはり前節から中3日で敵地への移動を伴う琉球は、6人を入れ替えてスタート。攻撃時には左SHの清武功暉が中に入りSBが上がってくる、少し変則的なやり方でポゼッションし、守備では激しくハイプレスをかけてくる。それを3バックの形でいなすにあたっては、昨季までやっていた形との共通点も多い。後方でボールを出し入れしながら相手を動かし、機を見てサイドから相手SBの背後のスペースを突いた。
 
互いに先制点が欲しい同士、立ち上がりから積極的にゴールを狙う。4分には香川の浮き球に抜け出した呉屋大翔が左足を振り、6分には清武が狙ったが、いずれも枠を捉えきれない。
 
琉球の出方を窺いながら立て続けにセットプレーを与えるが、それをしのいだあたりから、じわりと大分がペースを握った。プレスに寄せてくる相手の背後を使いながらボールを動かすと、19分、先制点が生まれる。小林成豪のフィードを伊佐耕平が落とし、拾った町田也真人が伊東に展開。伊藤が小林裕にそれを託すと、小林裕は丁寧な横パスを出し、最後は小林成がダイレクトの右足シュートでネットを揺らした。
 
23分には追加点。三竿が前線へ送ったボールに抜け出した香川がライン際で追いついてクロスを送ると、相手を引き連れてニアへ斜めに走り込んできた呉屋が潰れ役となり、伊佐がヘディングで仕留める。
 
だが、琉球もそのままでは終わらない。シュートはなかなか枠を捉えきれなかったが、清武がペレイラとのマッチアップでハンドを誘い、ペナルティーエリア左でFKを獲得。清武自らのキックは直接ゴールを目指し、密集がブラインドを作る形になってそのまま吸い込まれた。37分に1点を返した琉球は、そこから勢いを盛り返す。
 
45分には町田が負傷して渡邉新太に交代するアクシデントも発生しつつ、試合は2-1で折り返した。

 

長沢のファーストタッチ美ゴール+呉屋からの新太で4点目

後半は琉球がアグレッシブに攻める立ち上がり。呉屋も体を張って守りながら、激しい攻防が続いた。どちらに傾くかわからない流れを大きく引き寄せることになったのは、57分に挙げた3点目だ。その直前、伊佐が接触プレーで負傷し、長沢駿に交代していたのだが、その長沢がピッチに入って最初のプレー、下田北斗の左CKに頭で合わせるビューティフルゴール。百戦錬磨の長沢もさすがにファーストタッチゴールは初めての経験だったそうだが、ピッチに入るときにCKのタイミングだったこともあり、これはと期するものがあったという。
 
3-1になったことで大分が余裕を持ってボールを動かす時間帯が増えた。琉球は64分、草野侑己と野田隆之介の2トップを阿部拓馬と上原慎也にチェンジして勢いを維持するが、大分の守備も集中して崩れない。66分には池田廉の浮き球に武沢一翔が抜け出しライン際から送ったクロスを阿部がシュートし、ペレイラがブロック。そのこぼれ球を池田が狙ったが、シュートコースに渡邉がスライディングすると弾道は枠外に逸れた。そこから与えた左CKの流れでも、呉屋が体を投げ出して危険の芽を摘む。
 
68分には大分の分厚い攻撃から下田の浮き球が流れたところを渡邉が気合ダッシュで残しに行きCKを回避するなど、疲労の溜まってくる時間帯にも、この日の大分は戦いの強度を落とさない。
 
それが実るように70分、伊東のロングカウンターにはじまった攻撃から4点目。香川からの横パスを渡邉がヒールで流し、呉屋の反転シュートはカルバハルに阻まれたが、そのこぼれ球を掻き出そうとした相手のクリアミスを逃さず渡邉が左足を振り、狭いところを枠内へと通した。

 

最後まで攻め続け、引くことなく相手を阻み続けた

琉球は71分、清武を中野克哉に、さらに77分には福村貴幸を金井貢史、上里一将を富所悠に交代して追撃を続けるが、セーフティーリードを奪いながら大分も攻め続け、相手の時間帯を作らせない。86分には阿部が負傷するアクシデント。8.6℃と冷え込んだ昭和電工ドーム大分の夜がアスリートの筋肉に負担をかけたのかもしれない。すでに交代枠5枚をすべて使い切っていたため、琉球は残り時間を10人で戦うことになる。
 
そのタイミングで大分は小林成を中川寛斗に、伊東を松本怜にチェンジ。松本は怪我からの復帰戦だ。87分には自陣中央でパスをカットされて中野にシュートを許し、ポストに弾かれるというラッキーな場面も。中野は90分にもゴール正面からシュートを放ったが、これは至近距離で小林裕がブロックした。攻め込まれる場面もあったが、高い位置でも相手のパスが入ったところには厳しく寄せ続ける。
 
琉球もあきらめず攻め、大分も最後まで攻め続けて試合は4-1で終了。リーグ戦では初の複数得点で、待望の今季初白星を、ホームで挙げることが出来た。順位はひとまず14位まで回復。

 

苦境の中で育ちはじめた柔軟性

指揮官は「自分よりも選手が頑張ってくれた」とプレーヤーを称え、一体感を出すためにと岡山一成コーチが行った特別トレーニングメニューのエピソードも明かしてくれた。スタッフも含めて全員で輪になり、グループでワンフレーズずつ歌った『大分よりの使者』が、過密日程の中でなかなか結果が出ず苦しんでいたチームに、元気と一体感をもたらしたのだった。
 
だが、まだ1勝。ここからはルヴァンカップも含めアウェイ戦が続く。大阪、仙台、東京と移動して11連戦を終えると、1週空けて次は9連戦。先は長く、厳しい戦いの連続だ。
 
それでも、チームは徐々に柔軟性を見せはじめた。4-3-3の攻撃的スタイルを目指してスタートしたところから、一度は守備にもウェイトを置くようにバランスを取ろうとしたが、そこで守備的に流れることなく、今節は対琉球の狙いを、攻撃志向をそのままに描き出し勝点3を得た。
 
町田の負傷は気がかりだが、渡邉と松本が戦線復帰し、伊東が初出場を果たしたことも前向きな材料。上昇気流を生み出すように、ここから勝点を積み上げていきたい。