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試合レポート

相手の強さを感じつつ3失点して3得点。苦肉の布陣で臨むも収穫は多々

 

戦力のやりくりに加えて連戦で満足に準備を施せない中、いつもの4-3-3ではなく4-4-2で強豪に挑んだ一戦。随所に相手のパワーとスピードを感じながら、タフに戦って3得点3失点。勝点1以上のいくつかの収穫を見いだせたようだ。

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3分にいきなり失点も14分の呉屋ゴールで同点に

11連戦の6戦目、しかも中2日での4連戦のラストという心臓破り。立て続けにリーグ戦に出場した選手たちを休ませたい一方、この試合で起用したかった選手たちの中にも負傷やコンディション不良でメンバーに入れられない者が出て、いつもの4-3-3のフォーメーションを組むことが出来なかった。リーグのアウェイ長崎戦から中2日ではゲーム形式の練習で確認することも出来ず、戦術の落とし込みはミーティングのみということもあって、下平隆宏監督は今節、最もベーシックな4-4-2の形を選択した。
 
やはりリーグ戦との連戦となった鹿島だが、コロナ陽性反応者が出るなどして、こちらもターンオーバーが難しい状況。三竿健斗が最終ラインを務めるなど同じく戦力のやりくりに苦心しているようだった。さらにこの試合がレネ・ヴァイラー監督の初陣。下平監督は「連戦なのでこれまでと大きく変えてはこないだろう」と読んだ上で、対鹿島の準備を施した。
 
今季は開幕から好調なJ1の強豪相手に、守勢に回ることが多くなると申し合わせてスタートした試合。早速3分に荒木遼太郎のクロスから染野唯月にあっさりとヘディングシュートを決められ、いきなりビハインドとなった。強度高く攻める鹿島は11分にも染野がシュートを放ったがこれはポスト。逆に14分、上夷克典からのフィードを宇津元伸弥がブエノと競り、そのこぼれ球をペナルティーエリア左で呉屋大翔が胸で落とすと左足一閃。大分が負けじとスコアを振り出しに戻した。

 

屋敷プロ初ゴールで逆転、西川のファインセーブも

20分には追加点も生まれる。上夷のクロスは相手にクリアされたが、伊佐耕平が渾身で頭で前に出すと、ゴール前混戦の中で呉屋が鋭い反転シュート。沖悠哉のセーブに掻き出されたところへ走り込んだ屋敷優成が流し込み、逆転に成功する。
 
その後は個々の強度で上回る鹿島が優勢に試合を進めるが、力強い攻撃もパスやクロスの精度を欠いてなかなか濃厚な決定機には至らない。26分には荒木のシュートが枠の右。32分にはアルトゥール・カイキがFKで直接狙ったが枠の左。39分にはエリア内で巧妙にタイミングを外した染野のシュートが枠のわずか右。大分は自陣に4-4のコンパクトなブロックを構え、苦しい時間帯も集中してセカンドボールを拾った。
 
2-1で折り返した後半、鹿島はアルトゥール・カイキをベンチに下げ、鈴木優磨を投入。ディフェンスラインとの駆け引きを増やし、背後を狙って押し下げにきた。50分には染野のクロスを鈴木がヘディングシュート。枠を捉えていたが、素早く反応した西川幸之介が横っ跳びでキャッチする。西川は57分にも、ディエゴ・ピトゥカのクロスからの鈴木のヘディングシュートを阻止。こぼれ球に詰めた仲間隼斗のシュートはサイドネットを揺らすにとどまった。

 

2度のPK献上で再びビハインドに

攻撃の時間を作れなくなったため、長沢駿と井上健太が途中出場の準備を進めていた60分。和泉龍司からのサイドチェンジをエリア内で受けた仲間のクロスが、阻みに入った香川勇気の腕に当たりハンド判定となる。ディエゴ・ピトゥカが落ち着いてPKを沈め、スコアは2-2に。
 
下平監督は予定どおり63分、呉屋と屋敷を長沢と井上にチェンジした。早速65分、スピード満点でスルーパスに抜け出した井上のクロスを、ゴール前で長沢が触り、その後ろにこぼれたところで宇津元が決定機を迎えたが、弾道は惜しくも枠の左に逸れた。
 
70分には鹿島が仲間、染野、中村亮太朗を土居聖真、上田綺世、樋口雄太へと3枚替え。同時に大分も弓場将輝を小林裕紀に代えて、戦局は途中出場の選手による強度争いの様相を呈してきた。早速結果を出したのは鹿島。75分、樋口からの長い浮き球に抜け出した土居がエリア内でコントロールしたところへ、飛び出した西川が接触してファウルを取られる。鹿島はこの試合2本目のPKを、上田が決めて再びリードを奪った。

 

90+1分、香川のFKからの長沢弾は右足で

大分は83分、疲労した伊佐と宇津元に代えて小林成豪と町田也真人を投入。町田と長沢が縦関係となり4-2-3-1のフォーメーションを形成した。同時に鹿島はディエゴ・ピトゥカを安西幸輝へとチェンジ。町田の巧みなポジショニングと小林成の粘り強さが、流れをわずかずつ大分へと引き戻す。
 
ほとんどの時間帯を劣勢で過ごした試合終盤は、疲労も重なるのか、相手の激しいプレスにミスを誘われる場面も増えた。89分には羽田健人のトラップミスを見逃さなかった上田が迷いなく右足を振ったが、シュートはクロスバーで命拾いする。
 
アディショナルタイム4分と表示されて間もなく、香川のパスを受けようとした小林成へのブエノの対応に主審の笛が鳴り、左の敵陣深くでFKのチャンスが訪れた。丁寧にボールをセットした香川が狙ったのは、ファーサイドに構えていた長沢。チームNo.1の長身ストライカーはマークについていたブエノの死角からタイミングよく前に入り込むと、得意の頭ではなく右足を伸ばしてワンタッチでゴールネットを揺らした。90+1分、土壇場での同点弾。勢いづいた大分は香川の左足クロスがクリアされたこぼれ球に井上が詰めるなど、なおも好機を演出する。一方、焦りの見える鹿島の攻撃は大味になり、90+4分にはタックルでファウルを取られた町田を報復するように突き飛ばした鈴木にイエローカードも提示されつつ、荒木のFKを小林裕がクリアしたところでタイムアップ。

 

球際や守備の感触を4-3-3にもつなげたい

強豪を相手に、若手を交えた急造布陣で3-3での勝点1。それ自体も収穫だったが、それ以外にも得たものが多々あった。生え抜きルーキー屋敷のプロ初ゴール。今季公式戦2ゴール目の呉屋は屋敷の得点のきっかけも作った。19歳の西川の落ち着きや大卒ルーキー宇津元のアグレッシブさなど、若手が躍動して頑張ってきたところに、長沢、井上、町田、ダブル小林といった先輩たちが後押しする交代策。長沢はルヴァンカップ3ゴールで得点ランク首位へと躍り出た。
 
苦肉の策として採用した4-4-2だったが、宇津元は「攻撃に関しては4-3-3のほうが長所を出せる」と前置きした上で、「長いボールを入れてくる鹿島に対しては4-4でブロックを構える守備が有効だった」と振り返る。リーグ戦を含め失点が多かったことを踏まえ、下平監督も、攻撃志向を貫きながら守備のバランスや強度も重視することへの手応えを感じたようだ。いつもとは異なる4-4-2で、この試合ではボランチを務めた羽田が最終ラインに落ちてビルドアップする形も、実戦で試すことが出来た。外国籍選手の合流も踏まえ、この形は今後の有効なオプションとなりそうだ。
 
ルヴァンカップでの前向きな結果を、リーグ戦へとつなげていけるか。次は中3日でJ2第5節・山口戦。全員がコンディションを整え、初勝利を目指して準備を進める。

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