TORITENトリテン

試合レポート

失点を境に準備してきたものを上手く出せないスパイラルに陥り、1-4での敗戦

 

今季初の九州ダービーは屈辱的なスコアでの敗戦。微妙なジャッジによりビハインドになった後、相手に流れが傾くのを食い止められずに傷口を広げた。選手たちは細部の修正を誓う。

試合情報はこちら

 

相手に傾く流れを引き止められなかった結果

早々の8分にいい形で先制した2分後に、クロスから相手の外国籍選手2人のプレーで見事な同点弾を決められた。それでも踏ん張って次の1点を先に取れば、試合展開は違ったものになっていたはずだ。ただ、流れが相手へ傾いたとしても、ここまで大差のスコアにならないよう食い止める力を出せていればとも思う。
 
試合の分岐点になったのは1-1で迎えた前半終了間際、微妙なジャッジでのPK献上だった。エリア内でシュートの弾道上にいたペレイラは両腕を畳んでおり、ボールが当たったのは右肩か胸のあたりに見える。選手たちの猛抗議にも判定は覆らず、エジガル・ジュニオのキックに逆転を許した。
 
本当は前半に、もう少し狙いの形を出したいところだった。中川寛斗が絶妙な立ち位置を取ることで相手を引きつけて数的優位を作り、相手のマークもずらせていたのだが、背後へと抜け出そうと駆け引きする井上健太にまでボールを入れることが出来ない。ボールを受けた野嶽惇也も距離が遠く窮屈に感じていたと言い、いかにも狙ってきている相手のカウンターも視野に入れれば不用意にスイッチを入れられなかったのかもしれない。対峙した澤田崇の勢いも強度も高かった。

 

長沢弾で狙いどおり先制も守備の戻りに課題残す

8分の先制弾は左サイドの連係から生まれた。藤本一輝と下田北斗のパス交換から数的優位を作り最後はエリア内まで進入していた三竿雄斗の右足クロスから、相手CBの間に上手く入り込んだ長沢駿が頭で合わせた形。これは狙いどおりだった。
 
一方、テンポよく崩すことが出来ない右サイドでは狙いとしている井上のスピードが生きず。それなら逆にもっと違う立ち位置を取って相手を引き込めるだけ引き込み、長いボールで井上を走らせたりサイドチェンジしたりという選択肢もあっただろうか。井上は試合後に、逆に野嶽を走らせるとか逆サイドを使うとかいった次の一手も出せればよかったと悔やんだ。野嶽は井上との縦関係だけになってしまっていたと反省点を挙げたので、中川とも立ち位置をすり合わせていく必要がありそうだ。
 
同点にされた場面はまさにエアポケットのよう。4-4-2の形で長沢と中川が最前線からプレスをかけていたのだが、カイオ・セザールに収められ、ドリブルで運ばれながら右に展開されて奥井涼にクロスを入れられる。最終ラインが帰陣して前を向いたときにはエジガル・ジュニオの胸トラップを隣にいたクリスティアーノが左足ボレー。中盤も戻りきれておらず、一瞬の隙を突くスーパーゴールには高木駿も反応できなかった。
 
長いボールを2トップに当てて敵陣でボールを動かす長崎と、アンカー小林裕紀が最終ラインに落ちて相手を引き込みながら好機を窺う大分。大分が相手を押し込んだところでボールを奪われると、長崎は長いボールを前線へと蹴り出す。それに粘り強く対応しながら1-1のまま大分がポゼッションで相手を走らせ続けることが出来ていれば、この日は22.2℃という陽気の中、相手を疲労させることも出来ていたかもしれない。次の1点を大分が取れていればなおさらだが、そこまで濃厚な決定機も、なかなか作り出せず。

 

長崎のストロングポイントを増幅させる展開に

45分。ロングボールを都倉賢に当てたセカンドボールを拾って攻める長崎は、エジガル・ジュニオの折り返しからの加藤大のシュートが正面にいたペレイラを直撃。そのこぼれ球を高木が抑えて危機をしのいだと喜んでいたところへ、主審がペレイラのハンド判定。エジガル・ジュニオのPKで長崎が逆転したところで、前半が終了した。
 
後半頭に、下平隆宏監督は井上と野嶽を増山朝陽と上夷克典にチェンジ。相手左サイドとの関係やスコアの動きを考慮し、より対人守備が強くフィードの得意な上夷をSBに置いて、増山の強引な突破力に期待を懸けた。
 
だが、リードした長崎は人数をかけて大分のボールホルダーを潰しにかかり、奪うと前線にアバウトなボールを蹴り出す。55分はまさにその形からで、マークについていたペレイラをなぎ倒して左サイドでボールを受けた都倉がエリア内まで運び、逆サイドを駆け上がってきたクリスティアーノへ。必死で長い距離を駆け戻ってきた守備陣も間に合わず、シュートは高木とポストの間をすり抜けてネットを揺らした。
 
追う立場になったことで、前がかりにならざるを得ない。それは前線に屈強なストライカー、両サイドに強烈なアタッカーを並べる長崎のチームスタイルを増幅させることになる。ロストすれば一発で大ピンチになるのだが、選手たちの焦りもあるのか、攻撃がやや大味になっていた。

 

ロジカルに手を打つもベースの部分で上回られ…

球際で競り負けたり、相手に走り負けたりという場面は、90分を通して目立った。11連戦の5戦目で、前の試合から中2日のアウェイ。1週間たっぷり休んでいる相手とのコンディションの差は否めないが、どんな状況でも一戦は一戦として目の前にある。
 
66分、長崎がエジガル・ジュニオを植中朝日に交代。同時に大分は中川と藤本を伊佐耕平と渡邉新太に代え、システムを4-4-2に変更した。直後の67分、今度は相手スローインを入ったばかりの植中に収められ、その落としを拾った澤田が食い下がる伊佐をドリブルで剥がしつつスペースへとやさしいパス。そこに走り込んできたのが奥井で、渡邉の寄せも間に合わず豪快なミドルシュートを沈められてしまった。
 
74分、長崎は都倉と澤田を奥田晃也と山崎亮平に交代。次々に登場する強度の高い相手攻撃陣に負けじと攻めるが、78分、増山の落としから上夷がゴール前に送り、長沢が落としたところへ走り込んだ伊佐のシュートは、飛び出してきた笠原昂史の好セーブに阻まれた。

 

点差が開いてもあきらめず攻め続けたチーム

80分には長沢を宇津元伸弥に交代。長沢だけでなく、カウンター対応に長い距離を戻らねばならない上夷も途中出場ながら体が重そうだった。伊佐、渡邉を前線に並べ宇津元が機動力を発揮して攻めるが、守備を固める相手に対応される。84分、長崎は二見宏志と加藤大を加藤聖と大竹洋平に交代。
 
6分に及ぶアディショナルタイムにはゴール前に長いボールを送り続けた。90+1分には上夷のアーリークロスにパワープレーで上がっていたペレイラが頭で合わせるが笠原に掻き出される。守備を固める相手に跳ね返され、長いボールとカウンターで攻め返されながら、追撃の時間も尽きた。
 
終わってみれば暑い陽射しの下、疲労しきったのは大分のほうだった。連戦による体力的な負担、疲労で頭も回らなくなればどうしてもパフォーマンスは落ちる。加えて微妙なジャッジによる試合の流れの転換が、精神的にも重かった。ゲームプランが壊れたことで、連戦の中で厳選した選手起用もちぐはぐな印象になった。あるいは、もしかしたらVARのあるJ1とないJ2との違いも、無意識のうちにも体感していたりするのかもしれない。
 
それでも、試合後の選手たちは自分たちに矢印を向けていた。そしていまチャレンジしているスタイルを継続する強い意志を口にした。その言葉たちは「闘う言葉」で読んでもらいたい。中2日での4連戦のラストはルヴァンカップ鹿島戦。選手もターンオーバーすると思われる。心身を休める選手と、カップ戦でアピールして台頭してくる選手。どちらも踏ん張りどころが続く。11連戦はその鹿島戦で折り返しだ。