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試合レポート

昇格争いのライバルとの初戦は逆転負け。運も含めた決定力の差に泣く

 

準備してきた相手対策も含め、スタイル体現に挑んだ一戦。一進一退の駆け引きの中で収穫も課題も手にしたが、勝点は逃す。明暗を分けたのは運も含めた決定力の差だった。

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今季初の流れからの得点は成豪弾

今季から四方田修平監督の下、ミシャ式で戦っている横浜FC。そのオールコートマンツーマンをいかに剥がしつつボールを運んでゴールを仕留めるかが、今節のチームに試されていた。
 
立ち上がりは相手のプレスをかわし、逆にこちらのプレスで相手の攻撃を邪魔してペースを握った。剥がそうとする大分に激しく来る横浜FCは、ファウルを取られる場面も増える。8分、下田北斗のFKに坂圭祐が合わせて枠の左。11分の左CKも坂が頭でそらしたがサイドネット。セットプレーでの決定機は立て続けに逃したが、13分、町田也真人のプレッシングにより相手がボールをこぼしたところから、渡邉新太が相手に寄せられながらもしっかりとマイボールにしてスルーパスを送ると、町田の右からのクロスにペナルティーエリア中央へと走り込んだのは小林成豪。頭で押し込み、ゴール右隅へと吸い込まれた。幸先のいい、今季初の流れからの得点。
 
18分には高木駿がサイドでフリーになっている増山朝陽を見逃さず展開。シュートはスベンド・ブローダーセンのファインセーブに阻まれたが、この日が負傷からの復帰戦だった守護神はさすがのビルドアップ力を披露し、21分にも最前線で駆け引きする呉屋大翔へとロングキック。惜しくも合わなかったが、相手のプレスを含めピッチの状況を見極めながらボールを運ぶことは出来ていた。

 

FKの流れから追いつかれる

だが、横浜FCも大分のプレスに対し、徐々に背後を狙うボールを増やす。22分にはその対応から与えたFKの流れで、同点に追いつかれた。手塚康平のキックにゴール前で岩武克弥が潰れ、掻き出そうとした高木駿に当たったボールがダイビングヘッドで伊藤翔に押し込まれる。
 
マンツーマンディフェンスに対し、ビルドアップに参加することで数的優位を作りたい高木駿は、相手を誘い込むアクションを繰り返す。それに対して手塚が中盤から猛然とプレスをかけ、高木のミスを誘う動きを見せるが、ヒヤリとはしつつもそれもこのスタイルにとっては“あるある”な場面。
 
33分には齋藤功佑のシュートが枠を外れ、35分には町田のクロスが合わず。38分には増山のドリブルからのクロスが跳ね返されと、攻め合いながら精度を欠く展開が続く。前半終了間際には横浜FCが立て続けにセットプレーのチャンスを得るが、それも実らず。アディショナルタイムには小出悠太のアーリークロスから渡邉新や増山が絡み最後は呉屋が狙ったが、やはり枠を捉えることは出来なかった。

 

互いに攻め合い決定機を逃し合う

大分はハーフタイムに呉屋を長沢駿へと交代。47分の小出のマイナスのクロスは合わず、48分の高木友也のクロスからの小川航基のヘディングも枠外と、後半もゴール前のシーンが多い展開。53分には渡邉新、増山、町田で右サイドを攻略し、クリアされたところを下田がミドルで狙うが枠の右。55分には左サイドを崩し小林成がクロスを供給したが相手に対応された。それで得た右CKには三竿雄斗が頭で合わせたが枠外。
 
横浜FCは増山対策のためか、左サイドのマークを修正していた。大分は60分、増山を井上健太、町田を中川寛斗に代えて、フレッシュなスピードと立ち回りで右サイドの攻略を図る。
 
62分にはイサカ・ゼインのグラウンダークロスから小川に合わせられるが、高木駿のファインセーブが炸裂。小川は64分にもシュートを放ったが、これはペレイラがブロックした。
 
67分、横浜FCは3枚替え。齋藤を山下諒也、高木友を亀川諒史、伊藤をフェリペ・ヴィゼウに代えてスピードと圧を増すと、ヴィゼウに当ててセカンドボールを拾う戦法へと切り替える。

 

まさかの“素足シュート”が逆転弾に

70分には自慢のスピードで右サイドを切り裂いた井上がペナルティーエリアへと進入。クロスはブローダーセンに弾き出され、こぼれ球を長沢が狙ったが枠上へ。74分には小林成をリーグデビューの宇津元伸弥へと交代して大分も勢いを維持。流れは大分へと大きく傾いていた。
 
だが、78分。イサカの縦パスから中村拓海がクロスを送り、ファーに流れたところを拾った山下がシュート。これが大きく弧を描いてゴールポストに当たってネットを揺らし、横浜FCの逆転弾となる。このときなんと、山下の振った右足は素足。ヴィゼウに当てた後のセカンドボールをめぐって小出と競り合った際にスパイクが脱げ、そのまま競り合いを続けながらペナルティーエリアに入って逆サイドへとパスを出していたのだった。なんとなくやわらかい弾道になったのは素足だったからか。山下は素足のままベンチへと走ってチームメイトと喜び合ったが、さすがに右足は痛そうだった。スパイクを履いてのシュートであれば枠を外れていたかもしれないと思うと、大分にとっては不運としか言いようがない。

 

長沢も宇津元もブローダーセンに阻まれ…

83分、大分は渡邉新を小林裕紀に代え、下田を一列上げ、守備時にダブルボランチになる形。85分には横浜FCが小川を渡邉千真に代え、ヴィゼウとの2トップにして守備の枚数を増やしたようだった。渡邉千のシュートは坂がブロック、ヴィゼウのシュートは枠外、中村のシュートが枠右と、ピンチをしのぎながら、押し返そうとする大分。ボールを動かしながら徐々に相手を押し込み、90分には下田のパスを受けた三竿が左足でクロスを送ると、長沢が難しい体勢でヘディングシュート。完全に1点のコースだったが、素早く横っ跳びしたブローダーセンが右手で掻き出すファインセーブ。ここもドイツの五輪代表GKでなければ決まっていたかもしれないと思うと、なんとも無念な場面だった。
 
90+3分、横浜FCは手塚を安永玲央に代えて時間を使う。90+4分の宇津元の突破からのシュートもブローダーセンに阻まれ、それで得た左CK時にパワープレーで高木駿も上がっていたのだが、その流れから被カウンターのピンチ。怪我明けの高木駿も必死で長い距離を戻る中、小林裕が1対1で相手と接触して抜かれ、あわや3失点目という場面も枠外シュートとオフサイドで命拾い。
 
直後に長いホイッスルが響き、横浜FCの3連勝が決まった。大分にとっては今季初黒星、昇格争いのライバルに勝点3を渡したことになる。相手と繰り広げた細かい駆け引きは見応えがあり、スタイル表現にも果敢にトライして、互いに決定機を多く逃した中、山下の素足シュートとブローダーセンの神セーブにやられるという“持ってなさ”も感じた一戦で、なんともモヤモヤしたものが残る結果だ。
 
だが、中2日ですぐに水戸戦。悔しい結果も含め経験値に還元しながら、切り替えて11連戦を乗り切っていく。