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試合レポート

緊迫の拮抗ゲームから静岡にゆかりの2人が得点。クラブ初のベスト4進出

 

戦力はターンオーバーしていたが非常に整理されていた磐田の前に前半は苦戦。だが、セットプレーからの長沢弾で先制して流れを引き寄せると、追撃してきた相手の背後を突いて藤本がトドメを刺した。クラブ初の天皇杯ベスト4進出だ。

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どちらも譲らない緊迫したミラーゲーム

熾烈な残留争い真っ最中のリーグ戦から中3日での天皇杯準々決勝。徳島から大分に戻り、また静岡へと移動してのアウェイ連戦となったが、片野坂知宏監督は、リーグ徳島戦から先発4人を入れ替えたのみで臨んだ。ただし、配置は変わっており、前節途中出場でエンリケ・トレヴィザンと2CBを組んだペレイラが3バックの中央。エンリケは左CBに入り、三竿雄斗が左WBを務めた。
 
磐田は鈴木政一監督が体調不良のため、急遽、服部年宏ヘッドコーチが指揮を執ることに。直近のリーグ愛媛戦から続けて先発したのはリーグ戦次節に出場できない1トップのルキアンだけで、10人を入れ替えた。
 
3-4-2-1同士のミラーゲームは、いずれもリスクは最小限に互いにコンパクトな布陣を保ち、トランジションの活発な緊迫した立ち上がりとなる。磐田はメリハリの効いた守備で、大分にボールを持たせるところは持たせながら、勝負のパスは入れさせない。ボールを奪うと素早く切り替えて勢いよく攻めたが、大分も球際での集中を切らさず決定的な場面は作らせずにいた。
 
36分には守備対応中の刀根亮輔の手にボールが当たりゴール正面でFKを与えるが、大森晃太郎のキックは壁が跳ね返す。こぼれ球をもう一度大森に打たれたが、これは枠の上に外れた。

 

修正した後半は大分の攻撃が活性化

0-0で折り返した後半頭から、片野坂監督は慣れない左CBでプレーしていたエンリケをベンチに下げ、藤本一輝を投入。三竿を最終ライン、藤本を左WBに配置した。これにより大分の攻撃が活性化する。47分には三竿のアーリークロスを中川創が処理した際にあわやオウンゴールという場面が訪れたが、守護神アレクセイ・コシェレフがそれを防いだ。
 
50分には藤本のシュートをコシェレフが弾き、その流れから最後は小林裕紀が狙ったが、これもコシェレフに対応される。逆に55分には大森のシュートを高木駿がキャッチ。60分、藤本のグラウンダークロスから野村直輝が反転シュートするがわずかに枠の右に逸れた。
 
62分、大分が3枚替え。下田北斗を羽田健人、刀根亮輔を井上健太、町田也真人を香川勇気。フォーメーションは3-4-2-1のまま、小出悠太が右CBに下がり、藤本が1トップ、長沢駿が左シャドーに入った。試合前には、ミラーゲームなのであるいはミスマッチを使うようにこちらが4バックに変更する可能性もあるかと思っていたが、あまりのトランジションの活発さにミスマッチを作るのはリスクが大きい展開となった。ただ、ハーフタイムに相手とどうズレるかという指示は、コーチ陣が指示したようだ。それによっても攻撃は活性化した。

 

CKからの長沢弾で流れを引き寄せる

先制点は65分、井上が仕掛けて得た右CKのチャンスから。野村のキックに対し、ニアで三竿が潰れながらそのすぐ後ろに走り込んで長沢が得意のヘディングシュートでネットを揺らす。長沢らしい見事なゴールだった。追う立場となった磐田は68分、大森に代えて大津祐樹を投入。
 
72分には井上のクロスを長沢が競り、そのこぼれ球から三竿が左足ボレーを放ったが相手がシュートブロック。野村の右CKにはペレイラが合わせたが枠の上に飛んだ。75分にはカウンター発動。野村の展開を長沢がダイレクトで逆サイドに振り、井上がグラウンダーシュートしたが惜しくも枠の左に外れた。
 
76分には野村を伊佐耕平にチェンジ。伊佐が頂点に入り藤本は右シャドーへと移った。磐田も同時に小川大貴を松本昌也、三木直土を吉長真優へと2枚替えして追撃の勢いを強める。78分、ルキアンのミドルシュートは高木が押さえた。
 
81分には井上が相手の股を抜いて藤本へとパスを送るがコシェレフに対応される。磐田は85分、87分と松本昌もクロスを送り前線にパワーをかけ続けた。89分の磐田の右CKにはコシェレフもパワープレーに参加するが、大分の守備は集中してそれも跳ね返す。

 

前がかりになった相手の背後で藤本がダメ押し点

アディショナルタイムは4分。磐田は足を痛めた森岡陸を加藤智陽に交代。最後まであきらめずに1点を追ったが、その前がかりになった背後を、大分は突いた。90+1分、長沢の自陣からのアウトサイドのスルーパスに藤本が抜け出す。上手く相手をかわしながらペナルティーエリア左に入り込み、右足で追加点を奪った。
 
大勢が決した中でも磐田はあきらめず、90+4分には吉長のシュートがクロスバー。ひやりとしたが、運にも助けられつつ無失点で長いホイッスルを迎えた。
 
ついにクラブ史上初の天皇杯ベスト4進出。その結果はもちろん、ペレイラの3バック中央起用や長沢のひさしぶりのゴール、藤本の起用法と、多くの収穫を得た一戦だった。
 
準決勝は12月12日、川崎Fとの対戦。そこを乗り越えたら、12月19日、国立競技場での決勝が見えてくる。まずはこの勢いを、残留争い中のリーグ戦へとつなげたい。